SS サクヤ:バニーガールは突然に
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◆ 作者より注意事項です ◆
この話は完全に本編とは関係ありません。
SS のための世界観や設定だと割り切ってお読みください。
また、この SS 内では登場人物は全員成人済みです。
衣装やシチュエーションの都合上、ややセンシティブに感じられる表現があります。
不快に思われる方は、無理をせず読み飛ばしていただけると助かります。
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勇者カズト一行は、今日も今日とてダンジョンへと歩を進めている。
そのパーティーで魔導具師を務めているのが俺、サクヤだ。
本当はこんな危険な場所になど行きたくないのだが、パートナーである魔導士のセナになんだかんだと言いくるめられ、結局こうして行動を共にしているというわけだ。
今日は、いつも行っているダンジョンの横穴を盗賊ヒロキが見つけたことで、テンションを爆上げした、レンジャーのアイリと共に、その先をみんなで進むことになった。
なんだかんだ先に進むと、なんだかんだボスらしきモンスターがいて、気づいたらカズトが倒していた。
危なげない戦闘に、「イケメンってすげーな」という印象しか残らなかった。
そして、一人ずつ選択式の宝箱を持って、セナと暮らしている自宅に帰ってきたわけだが……目の前にはマントにくるまっているセナが座っている。
ご丁寧にフードまで被って。
「ただいま。急に一人でテレポートして帰ったけど、どうしたんだ?」
「……」
「絶対に何かあったよな?」
「……はい。……見ても笑いませんか?」
笑うようなことなのだろうか。
甚だ疑問だが、セナが冗談を言うようなタイミングではない。
「まあ、セナが大変な時に笑わないけど……マジで何があったんだ?」
「……これです」
そう言って立ち上がったセナは、フードを取ってマントを広げた。
そこには――ウサギの姿をしたセナがいた。
脳が理解を拒否した。いや、目の前にいるのはセナだ。セナなのだが、情報量が多すぎる。
セナが着ていたのは、黒を基調にしたバニーガール風の衣装だった。
艶を抑えた上品な光沢をまとい、彼女の落ち着いた雰囲気を引き立てている。頭上にはすらりと伸びた黒いウサギ耳が揺れ、少し動くたびに小さく弾んだ。
タイツの上には膝上まで届くロングブーツ。
細いヒールが床を静かに鳴らすたび、普段のセナとは違う大人びた印象が強くなる。
シャツの袖口だけを切り取ったような白いカフスと、襟元のアクセントが全体をきりりと引き締めており、派手さよりも洗練された雰囲気があった。
ただ、どう見てもセナ本人の趣味ではない。
胸元の開いた衣装に戸惑っているのか、彼女はマントの端をぎゅっと握りしめ、こちらから視線を逸らしていた。
いつもの彼女なら、絶対にしない――というより、絶対にさせたくない格好だ。
「えっと……どうしたんだ? 急に遊び人にでも転職したのか?」
「ち、違います! 今日のダンジョンで宝箱を開いたら……」
「あー、あの意味不明な宝箱ね」
今日のボスを倒した後の宝箱イベントは、特殊だった。
一人ずつ部屋に入るのもそうだが、宝箱の前にはこう書かれていた。
『自分以外の人を思い浮かべてこの宝箱を開けよ。さすればその人が欲しがっているものが手に入る』
自分が欲しがっているものならわかる。
だが、自分以外ってどういうことだって話だ。
つまり、開けた人間の『誰かへの気持ち』が、そのまま形になるということだったらしい。
そして、誰かを思い描いて開けたら、バニースーツが入っていたと。
「よく着たな、それ」
「ち、違いますよ! 宝箱を開けたらパァーと光って、気がついたらこの格好だったのです!」
「マジか」
反射的に視線を逸らす。
いや、見るなと言われたわけではない。だが、見ていい格好でもない気がした。
「それでですね……これが脱げないのです」
セナは恥ずかしそうに身を縮こまらせた。
脱げないということは、呪いか何かで固定されているのだろうか。
「……それにしても、サクヤくんがバニースーツをご所望だったとは思いませんでした」
「……つまり、俺を思い描いて開けたのか?」
「当たり前です! 自分以外なのですから、あなた以外いないでしょう?」
俺の問いかけに、セナがむっとしたように顔を上げる。
そうか、当たり前なのか。
俺も同じだから、少し嬉しい。
「そりゃそうだけどさ……俺、別にバニースーツが欲しいわけじゃないぞ?」
「えっ?」
セナは完全にフリーズした。
長いまつ毛がぱちぱちと瞬き、思考回路がショートしかけているのが見て取れる。
「欲しく……ない……? では、なぜこれが……?」
「さあな。お前、本当に俺のことを思い浮かべて開けたのか?」
「当たり前です! サクヤくん以外に誰がいると言うのですか!」
セナはむっとしたように頬を膨らませた。
しかし、すぐに「はっ」と何かに気づいたように顔を強張らせる。
「……まさか、サクヤくんではなく、私の深層心理が原因、ですか……?」
「は?」
「私がウサギ好きだから、宝箱が気を利かせて、私をウサギにしてサクヤくんにプレゼントしようと……っ!? な、なんて破廉恥な宝箱ですか! これでは私が、サクヤくんに自分を貰ってほしがっているみたいじゃないですかっ!」
「……っ、ははっ! お前、一人で勝手に妄想して、勝手に限界迎えるなよ」
両手で顔を覆って真っ赤になっているバニーガール。
その様子があまりに面白くて、俺は思わず笑ってしまった
恥ずかしさで俯いた拍子に、頭の上のウサギ耳が少しだけずれる。
それを慌てて直す仕草は、悔しいぐらいにかわいかった。
せっかくのバニーガールだ。この姿ですることと言えば……なんだ?
うーん、例えば――
「どうせなら踊ってみるか?」
「急に何を言っているのですか……。そもそも、ダンスなんて知りませんよ……えっ?」
不意に、パァっとセナが光り出した。
と思ったら、どこからともなく現れたスポットライトが、セナの姿をくっきりと照らし出す。
そして、誰が流したのかもわからない謎の BGM が、部屋中に響き渡り始めた。
ダンジョン産の宝箱、悪ノリが過ぎる。
『~♪』
「か、体が勝手にー!」
「おいおい、マジで踊り始めたな。それにしてもこの曲はなんだ?」
どこかで耳にしたような、やたらとバズりそうなアップテンポの音楽。
そのリズムに合わせて、セナはキレのあるステップを刻み始めた。
『~♪』
「なんなんですか! コレは!?」
「おお! すごい、すごい! ダンス上手だな!」
魔導士にしては運動神経が良いセナは、初見のはずの特殊な振り付けも苦にすることなく踊りこなしている。
それこそ、この道で生計を立てられるぐらいのクオリティだ。
『~♪』
時折、バニーガールらしいポーズが組み込まれるため、見ているこちらの心臓が無駄に跳ねる。
ただでさえ普段と違う衣装なのに、ここまで堂々と踊られると反応に困る。
いや、本人は堂々としているわけではない。
顔を真っ赤にしたまま、体だけが勝手に動いているのだから、むしろ気の毒だった。
「はぁ……はぁ……」
数分間、ノンストップで踊らされていたセナは、曲が終わると同時に魔法から解放され、その場にぺたりと座り込んだ。
さすがに準備運動もなしに全力で踊るのは大変だったらしく、肩で息をしている。
「お疲れ様。良いものが見れたよ。ほれ、飲み物」
「はぁ……あ、ありがとうございます……」
俺が手渡したコップを受け取ると、セナは両手でそれを持ち、こくこくと水を飲んだ。その仕草が、姿も相まって愛くるしい。
「しかし、あんな完璧に踊れるなら、魔導士を辞めて王都の酒場でバニーガールとして雇ってもらえばいいんじゃないか? 結構稼げると思うぞ」
「なっ……! 私と冒険するのは嫌だ……と?」
「いや、そんなこと一言も言ってないだろ。ただの冗談だって」
俺の言葉に、セナは涙目でむっと睨みつけてくる。
「そう睨むなって。……バニーガールがすることって、あとは……なんか専用のお辞儀があったような……」
「待ってください! サクヤくんが言うと、多分、強制的に――」
「……そうだ。バニー・ディップってやつ」
「あぁ……」
口に出した瞬間、俺は理解した。あ、これ言っちゃいけないやつだ、と。
またしてもパァーと光り出し、セナが立ち上がった。
「やっぱり……」
「ごめん」
説明しよう。
これは知識として知っていただけでだが、バニーガールが客にドリンクを運ぶ際に行うという、伝統的なお辞儀――通称『バニー・ディップ』と言う。
胸元が大きく開いた衣装の構造上、普通にお辞儀をすると胸が零れてしまうため、絶対に上体を前に傾けないよう編み出された独特な屈伸運動だ。
そう、セナはその動作さえも、呪いの強制力によって完璧にトレースさせられていた。
彼女はすっと背筋を伸ばしたまま、片足を斜め後ろに引く。
そこから、まるで背中を垂直な壁に沿わせているかのように、膝の力だけでゆっくりと腰を落としていった。
上体はまっすぐ。
手元だけを斜めに傾けて、恭しくお辞儀をする。
小柄な彼女の身長には不釣り合いなほどの豊かな曲線が、深く沈み込んだ衝撃でこぼれそうに揺れ、白いカフスで引き締められた手首が優雅な曲線を艶やかに描いた。
傍から見れば、熟練の給仕人も顔負けのエレガントな仕草だ。
だが、上体を保ったまま膝の屈伸だけで深く沈み込むのは、見た目以上に過酷らしい。
「は、激しいダンスより、今のポーズの方が何倍も太ももにキますっ……!」
ぷるぷると脚を震わせ、涙目でむっと睨んでくるバニー姿のパートナーを見て、俺は理性を引き締めつつも、心の中で宝箱の嫌がらせ精神に深く感謝していた。それと同時に、俺は思わず口元を押さえた。
笑うな。今笑ったら、人として終わる。
「魔導士のセナが戦士並みの体幹だったから、完璧にこなせたみたいだな」
「他人事だと思って……」
先ほどよりも強く睨まれてしまった。
これ以上は彼女が可哀そうだから、もう下手なことは言えない。
そもそも――
「まあ、お前の可愛いポンコツっぷりが見られたから、バニースーツ自体は悪くないんだけどな。……というか、実はこれにはオチがあるんだよ」
「どういうことですか?」
「俺がセナを思って開けたらこれがあったんだよ」
俺はそっと懐に手を入れ、あるものを取り出した。
『万能解呪薬』
「サクヤクン……ワカッテヤッテイマシタネ?」
「……ごめんって」
「ごめんで済むなら、解呪薬はいりません」
「いや、それはうまいこと言ったつもりか?」
「本気で怒っています」
「……ですよね」
万能解呪薬を差し出しながら、俺はひとつだけ学んだ。知識は、使っていい場面を選べ、と。
このあと、夜通し説教をされたのは、仕方ない結果だった。
― サクヤ:バニーガールは突然に 完 ―
こちらは、コメントをいただいたので書かせていただきました。
どう頑張ってもセンシティブなものにしかならなくて、この路線にしてしまいました……大丈夫ですか?
※ コメントをくださった方のお名前は、念のため伏せさせていただきます。
※2026.06.26 誤字を修正しました。内容に変更はありません。
P.S. BGM に去年バズっていた歌の歌詞を書いていたのですが、さすがに危ない気がしたのでやめました。




