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学年一の才女を拾ったら癒されました  作者: PPHiT
第三章

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第113話 久しぶりの実家へ

 夏休みが終わる頃、久しぶりに実家へと向かっている。ストーカー事件以来、実家――もとい、詩織以外の家族には会っていなかった。


 月に一度は食事をするという、一方的に決められた約束だったが、ちょうどよく喧嘩したこともあり、守っていない。詩織には申し訳ないけど、この間埋め合わせをしたから大丈夫だろう。


 詩織とは夏期講習の合間に、一日付き合ってリフレッシュしたのだ。どうしてもプールに行きたいと言うので一緒に行った。彼女は、日々勉強漬けで体を動かしたかったらしい。


 そのことで瀬那が嫉妬するかと思ったが、予想外にも嫉妬せず「詩織さんなら気にしませんよ」と、快く送り出してくれた。

 だが、プール後に詩織と一緒に撮った写真を見たら、なぜか睨まれた。……解せぬ。


 今日も本当は行きたくなかったのだが、珍しく義父(とう)さんから電話が来た。どうしても頼みたいことがあるらしい。

 嫌な予感がするが、さすがに無視はできなかったので仕方ない。


 数か月ぶりの実家。

 ぶっちゃけ、まったくと言っていいほど感慨がない。住んだ期間で言ったら、もう今の家の方がとっくに長いからだろうな。


 家に入り、リビングに行くと、義父さんと……詩織がいた。他に母さんと兄姉(けいし)はいない。これだけでもトラブルの可能性がだいぶ減る。


「おかえり、朔也くん。久しぶりだね」

「お久しぶりです、義父さん。詩織もこの間ぶり」

「うん。この間はありがとうね」


 俺を見るなり、義父さんは立ち上がって出迎えてくれた。わざわざ立ち上がらなくてもいいのにな。


「そういえば、プールに連れて行ってくれたんだったな。ありがとう、朔也くん。勉強も大事だけど、適度に運動も必要だから助かったよ」

「気にしないでください。義兄(あに)ですから……それで、今日は何かあったのですか?」


 まずは予定されている問題から訊きたい。

 それ次第では対策しなくちゃならないから。


「急かすね。……まあ、でも気になるよね。とりあえず座ってくれ」


 俺は二人と一緒に、リビングのソファに座った。

 それと同時に詩織がお茶を淹れて、カップを置いた。


「朔也くんは、詩織の希望する進学先を聞いているかい?」

「いえ……どこか決まったのか?」


 つい先日会ったのだが、その時には何も言っていなかったはずだ。俺は詩織に向かって問いかけた。


「ごめんね、この間は言い忘れていたの。実は黄隆学園を目指してみようかなって」

「うちの学校か。悪いところじゃないから、おすすめはできるよ」


 授業の進みが速いのはともかく、環境としては申し分ない。校舎も綺麗だし、設備もしっかりしている。

 さすがに、一部の教師がクソなことまでは言わないでおく。強引な勧誘をしてくるとはいえ、あんな酷いやり取りは俺に対してだけという可能性も高い。見た目が不良の俺に教師が反感を抱くのは、ある意味で当然の反応だからだ。

 ……まあ、そのやり方がクソだったとしてもな。


「それでな、まだだいぶ先の話だけど、受験日の前日に、君の家に泊まらせてほしいんだ。無理なことを言っているのはわかっているが」

「もちろん、いいですよ」


 俺が即答すると、義父さんは言いかけた言葉を喉に詰まらせた。


「そうか……やっぱり、嫌だ――えっ? 今なんて言ったんだ?」

「『もちろん、いいですよ』って。受験日にここから向かうのはリスクがありますから、歩きで行ける距離に義兄の家があるのなら、泊まるのは普通のことかと。電車の遅延なり痴漢なりの問題が解決しますし」

「た、確かにそうなんだけど、いいんだな……」

「?」


 義父さんが疑問に思っている理由がわからない。詩織とは兄妹仲が良いと思うのだが、そんなに意外だったのだろうか?


「ほら、言った通りでしょ、父さん。私は大丈夫って言ったんだけどね。父さんは晃司兄さんのことがあったから、驚いているんだと思うよ」

「あー、そういうことね。義父さんに言うのは微妙だけど、詩織と晃司兄さんとじゃ、信頼度が全然違うから……それに、一泊するのと、同居するのとではまったく違うじゃないですか」


 以前、晃司義兄さんが提案したのは、同居するという話だった。義兄弟とはいえ、ほとんど知らない男と住むのと、仲が良い義妹が試験前に一泊するのとでは比べるまでもない。

 それよりも……


「俺は構わないのですが、義父さんはいいのですか? 兄妹とはいえ義理ですよ?」

「そこは信用しているよ。それに、もし何かするつもりなら、ここに住んでいる時にしていただろう」

「まあ、そうですね」


 襲うつもりはもちろんないが、親からしたら何かと心配だろうに。これでも思春期の男だ。欲が出ると思うのが普通だ。

 まあ、そもそも家には瀬那が……


「あっ」

「どうかしたの?」


 瀬那がいることを失念していた。

 うーん、話してしまった方が早いだろうが、試験日の前日に言うにはインパクトがでかい。それなら――


「いや、別に気にしないでくれ。……条件があります」

「何かね。あぁ、もちろん滞在するのにかかった費用は俺が払うよ?」

「それはいらないです。それよりも、いつでもいいけど、前日よりも前に、俺の家に泊まりに来てほしい」

「それはいいけど、どうしてなの?」


 理由はいくつかあるが、一番は瀬那がいることの認知と慣れだな。俺とは一応、一緒に暮らしていたことがあるが、瀬那とは俺が知る限り、まだ一回会っただけだ。


「慣れのためだよ。俺の家とはいえ、前日に知らないところに泊まるだろ? 俺もそうだけど、いきなり環境が変わると少し落ち着かないはずだ。それだと試験日に全力が出せないかもしれない」

「あー、なるほど。確かにそうかも!」

「それに、何か足りないものとかあったら困るだろ。物によってはコンビニでは解決しないかもしれないし」


 近くで買える物ならいいが、そうもいかない物だってある。詩織だって女の子なんだから、何かと必要なものがあるはずだ。最悪、瀬那のものを借りてもいいが、遠慮するだろう。それで全力が出せないのは、可哀想だからな。


「……義兄(にい)さんって、やっぱり色々と気がつくよね。思慮深いというか、心配性かな」

「ほっとけ。性分なんだよ」

「くすっ、悪いことではないと思うよ」

「……仲良いな、君たち」


 そりゃ、他の兄弟に比べたら仲が良いだろうな。実の姉よりもね。


「義兄さん、それで申し訳ないけど、麻里もいいかな?」

「麻里ちゃん?」

「うん。麻里も黄隆学園を受験するんだ。私の学校から受けるのはあともう一人いるけど、あまり仲良くない男子」


 俺から見たら、詩織の友達の麻里ちゃんも詩織と同じくらいの学力だ。だから、詩織が大丈夫なら、麻里ちゃんも届くだろうな。


「俺は構わないけど、麻里ちゃんの親にもちゃんと許可取ってな。詩織の義兄って微妙な立場だし」

「任せて。この後、連絡しておくね」


 その後、三人で軽く食事を取って、俺は実家を出た。

 受験日前日の問題は片付いた。

 だが、俺の中では新たに「瀬那へどう説明するか」という、別方向の問題が発生していた。


 詩織とのプール回はいつか SS で書きます。……多分。

 また、予定通りなら二十時にもう一話、幕間ですが公開します。

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