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学年一の才女を拾ったら癒されました  作者: PPHiT
第三章

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第112話 お泊まり会:はじめての夜更かしゲーム編

 Side:南雲 瀬那


 お風呂から出て、朔也くんたちに上がったことを伝えました。


「じゃあ、俺たちも一緒に入るか?」

「やだよ、アホ。いいから先に入れ」

「振られちった。じゃあ、お先ー!」


 朔也くんと前川さんが二人で湯船に浸かる……マッサージクリームの使い方を教え合う……それは……どうなのでしょうか?


「……瀬那、変な想像していないか?」

「していませんよ」

「本当か? 怒らないから言ってみな」

「本当ですっ」


 朔也くんに考えを読まれたかと驚きましたが、何とか切り抜けたはずです。

 愛莉さんと私の部屋に入り、一緒にスキンケアの続きです。

 すでに導入美容液や化粧水、ボディミルクなどは塗っていますが、各部位に対してのケアがまだなのです。


「はい、愛莉さんもこちらを使ってやりますよ」


 私は愛用しているクリームとワセリンを彼女に渡します。

 これをするかしないかで、乾燥の季節は結構違うのですよ。冷房が多いこの季節も例外ではありません。


「ありがとー。せなちー、これいつにも増して厳しいねー」

「『せなちー』と言わないでくださいっ……愛莉さんがこのあだ名を作ったせいで、朔也くんが時折使ってからかってくるのですよ!」

「ごめん、ごめんって。非難と見せかけて、惚気られた!」

「惚気てません」


 朔也くんはなぜかこのあだ名を気に入ったらしく、忘れた頃に出してきます。

 困ったことに、彼が呼ぶ「せなちー」はなんだか愛着が湧きそうで……嫌いではないのかもしれません


 スキンケアを念入りに終え、今度は寝る準備です。

 物はあまり置いていませんが、少しだけ寄せて場所を用意します。


 クローゼットから折りたたまれたマットレスを出し、新しいシーツを掛けます。ポンポンとマットレスを叩き、状態を確認。定期的に干していたとはいえ、久しぶりに使うものですが、大丈夫そうですね。


「……」

「この位置で寝ようと思いますが、よろしいですか? ブランケットは二人分用意したので、それぞれ使いましょうか」

「うん、大丈夫ー。ありがとー」


 ポフンッ。


 愛莉さんはブランケットを受け取ると、なぜかマットレスに倒れ込みました。

 十秒近くの間、全く動きません。……まさか、もしかして寝たのでしょうか?


 私が気にしていると、愛莉さんはすくっと起き上がり、私の方を見ました。

 その目は面白いおもちゃを見つけたように、爛々としています。


「どうかしましたか?」

「……ねぇ、瀬那。この布団って、あまり使っていないでしょ。奥にしまってあったし」

「……えっ」


 確かに最近は使っていませんが、なぜか確信したような言い方です。

 ここでバレたらまずいと、さすがに私でもわかります。


「ど、どうしてそう思ったのですか?」


 背中に冷たい汗が伝うのを感じながら、嫌な予感しかしない問いを返しました。


「……それに、シーツを新しく替えたとはいえ、マットレスから瀬那の匂いが全然しないよね。普段からここで寝ていたら、いくら干していても生活の匂いが移っているはず。簡単な推理ですよ、瀬那くん?」

「……あっ」

「さーて。じゃあ、瀬那はいつもどこで、誰と寝ているのさ?」


 名探偵のような鋭い視線に射抜かれ、私は条件反射でサッと目を逸らしてしまいました。これでは完全に認めているようなものです。

 何か……何か言い訳を思いつかないと!


「え、ええっと、普段はリビングのソファで……」

「それはさすがに無理があるよ……。背中痛くなるし」

「ですよねー」


 終わりました。

 苦し紛れの嘘がたった一秒で論破された瞬間、私の中で静かに小さな白旗が揚がりました。

 

 私は仕方なく、いつもどこで、どうやって寝ているのか、愛莉さんに話しました。

 途中で「きゃー♡」とテンションの高い声を出されたせいで、リビングにいた朔也くんから「どうした!? 大丈夫か?」と声をかけられました。

 彼に『大丈夫です。大丈夫ではありませんが、大丈夫です』――そんな返事をしそうになるくらい、心臓が嫌な方向に跳ねました。


 ◇


 就寝前に、みんなでリビングに集まって雑談会です。

 ソファの前のローテーブルを囲むように座り、お菓子を広げています。


 ちなみに、前川さんの寝る場所ですが、家から寝袋を持ってきたらしく、朔也くんの部屋で寝るそうです。

 寝袋ってあんなにコンパクトにできるのですね。初めて知りました。


「さて、盛り上がってきたし、これやろうぜ!」

「なんだよ、これ」


 テーブルの中央にカードを並べた愛莉さんが、やけに得意げな顔をしていました。


「今日はこれ! 数字を言わずに、自分の数字を表現して小さい順に並べるゲーム!」

「説明が雑だな」

「大丈夫、大丈夫。やればわかるって」


 愛莉さんはそう言って、私たちに一枚ずつカードを配りました。

 カードに書かれていた数字は、もちろん他人には見せません。私はそっと自分の手元を確認します。


 ――十二。


 かなり低いですね。

 テーマによっては、どう表現するか迷ってしまいそうです。


「じゃあ最初のテーマは……『夏休みの課題が終わっていない時の焦り具合』!」

「お前ら向けのテーマだな」

「朔、刺すじゃん」

「事実だろ」


 前川さんが胸を押さえて大げさに倒れ込みます。隣で愛莉さんも「うぐっ」と言いながら同じように倒れました。

 私はそれを見て、思わず小さく笑ってしまいました。こうして賑やかなやり取りを見ていると、自然と心が和みます。


「じゃあ、私からいくね。私の焦り具合は……『まだ一週間あるから余裕っしょって言って、三日後に泣きそうになる』くらい!」

「リアルすぎる」

「愛莉、それ今のお前では?」

「うるさいなー」


 愛莉さんは頬を膨らませながら、自分のカードをテーブルの真ん中より少し高めと思われる位置に置きました。


「じゃあ俺。俺は……『提出日の朝、学校の机で高速筆記してる』くらいかな」

「それ、もう焦り具合じゃなくて末期症状だろ」

「でも間に合う可能性はあるから!」

「その発想がもうダメだぞ」


 前川さんは愛莉さんよりさらに上にカードを置きました。

 ……確かに、前川さんなら本当にやりそうだから少し心配になってしまいます。


「瀬那は?」

「私ですか? 私は……そうですね。『終わってはいるのですが、念のために誤字がないか三回確認したくなる』くらいでしょうか」

「優等生の焦りだ」

「南雲さん、それ焦ってるって言うの?」

「私としては結構焦っていますよ?」


 私は正直にそう言って、自分のカードを愛莉さんたちよりずっと低い位置へ置きました。

 私の『十二』という数字なら、これくらいで合っているはずです。残るは朔也くんです。


「朔は?」

「俺か……」


 朔也くんは少し考え込んでいました。

 きっと、彼の目線の先にある数字は前川さんのカード。つまり『提出日の朝』と近くて、順番を迷っているのでしょう。

 しばらくして、彼は口を開きました。


「『もう無理だと悟って、先生に提出期限の交渉を始める』くらい」


 ……読み違えました。


「それ、焦り方が高校生じゃないんだけど」

「朔也くんらしいですね」

「どこがだよ」

「切り替えが早いところです」


 私がにこりと笑って言うと、朔也くんは少しだけ言葉に詰まったような顔をしました。


「……まあ、諦めが悪いだけだよ」


 彼は少し照れ隠しをするようにそう言って、前川さんの上にカードを置きました。

 全員で順番を確認し、せーのでカードをめくります。


 私、十二。

 愛莉さん、五十九。

 前川さん、七十四。

 朔也くん、八十七。


「おお、成功!」

「やったー!」

「地味に気持ちいいな、これ」

「はい。皆さんの感覚がわかって面白いです」


 たった四枚のカードなのに、全員で同じ答えに辿り着けたことが、少しだけ嬉しく感じ、場に出たカードを集めました。

 しかし、その様子を見ていた愛莉さんが、にやっと悪戯っぽい笑みを浮かべたのです。


「じゃあ次のテーマは、『朔に甘やかされた時の瀬那の嬉しさ』で」

「それ、数字を出すまでもなく、全部満点じゃない?」

「前川さん!?」

「いや、百で足りるか?」

「朔也くんまで!?」


 自分の顔が、耳まで一気に熱くなるのがわかりました。私はたまらず両手で顔を隠してしまいます。

 そんな私の反応を見て、愛莉さんと前川さんがお腹を抱えて笑い出しました。


 お泊まり会もそうですが、友達とこのようなゲームをするのは初めてで、とても楽しくて、気分が高揚してしまうのは仕方ないことです。

 眠気でぼんやりしながらも、私はこの夜のことを、ずっと覚えていたいと思いました。


 その結果、夜遅くまでゲームを続けてしまい、次の日は少し寝坊してしまいました。

 ……ただ、愛莉さんと前川さんが、勉強どころではなかったのは言うまでもありませんね。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


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