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学年一の才女を拾ったら癒されました  作者: PPHiT
第三章

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第110話 瀬那の安堵

 Side:南雲 瀬那


 私の口元を塞いでいたことを忘れていた朔也くんは、平謝りをしていました。特に怒っていたわけではなく、少し困っていただけなのですが、私のご機嫌を取る朔也くんが面白かったので、しばらくむくれた顔をしていました。


 ――焦っている朔也くん、カワイイデス。


 ……冗談です。さすがに桜井さんと別れる頃にはいつも通りに戻して、二人で自宅へと帰りました。


 家に着くと、まだ前川さんは戻ってきておらず、愛莉さんだけが家にいました。私はいつも通り、帰宅後のルーティンをこなしてからリビングへと向かいます。


「そういえば、浩紀と愛莉はどこで寝たらいいんだ?」

「あっ」


 使えそうな寝具は二組分しかありません。私が()()()()()()()お布団はセミダブルで、朔也くんのベッドはダブル。二人ずつ一緒に寝ることはできると思いますが……


「さすがに浩紀と一緒に寝るのは嫌だぞ?」

「そりゃそうよね」


 私は愛莉さんと一緒に寝るのは大丈夫ですが……朔也くんは嫌ですよね。

 「うーん」と私が考えていると、朔也くんはあっさりと結論を出しました。


「あいつはソファでいいだろ。幸い夏だから、ブランケットがあれば風邪はひかないだろうし」

「ざつー! まぁいいけど。でも、私とひろ、瀬那と朔で一緒に寝たらいいんじゃない? 付き合い始めたんだし、一緒に寝ても全然 OK!」

「「……」」

「えっ!? そんなに(うぶ)な感じなの!?」


 違います……違うんです。

 「そんなことないのですよ。今更でしかないのです♪」……なんて言えません!

 ただでさえ、同棲状態なのに……あれ? 逆に普通なことだったりしますか?

 とはいっても、ありのままを言うわけにはいきませんね。


「そ、そんなことないですよ。でも……えっと……まあ、気にしないでください」

「なにそれ? ……まあ、いいわ。それより、さっきから気になっていたことがあるんだけど……」


 ま、まさか添い寝のことに気づかれてしまいましたか!?


「何でしょうか?」

「瀬那の瞳の色って、そんなに輝いていたっけ?」

「……っ」


 しまった……私は反射的に両手で目を隠しました。

 いつも通りに帰宅後のルーティンをこなしていたので、コンタクトレンズも外していたのです。

 自宅では外すことが当たり前になっていて、うっかり失念していました。


 私は後ろにいた朔也くんを、縋るように見つめました。

 けれど、朔也くんはすぐに説明しようとはしません。ただ、いつもの落ち着いた声で言います。


「瀬那。話したくないなら、話さなくていい」

「……朔也くん」

「こいつらなら大丈夫だとは思う。けど、決めるのは瀬那だ」


 その言葉に、胸の奥が少しだけ温かくなりました。

 逃げてもいい。隠してもいい。

 ……それでも、朔也くんは私に選ばせてくれる。


「……私の瞳は、本当はこういう色なのです」


 私は恐る恐る手を下ろしました。

 すると、愛莉さんはじっと私の目を見つめます。


「……え、綺麗じゃん」

「……おかしくないのですか?」

「何が?」

「瞳の色のことです。日本人としては異常な色で……それに、今まで騙していたのですよ?」


 声が震えます。

 責められる覚悟はしていました。

 気味が悪いと言われる覚悟も……少しだけしていました。


 けれど、愛莉さんは不思議そうに首を傾げただけでした。


「『騙して』って言うほどじゃなくない? カラコンなんて、普通に女子高生でも使うし。『隠して』はいたけど、理由があったんなら仕方ないしね」

「でも……」

「それに、異常ってこともないよ。日本人なら珍しいかもだけど、私は綺麗だと思うよ」


 愛莉さんの言葉に、嘘はないように感じました。

 気を遣っているわけでも、ごまかしているわけでもなさそうです。


「……そのぐらいのこと、なのですか」

「それだけのことだよ。瀬那は何も変じゃない。ね、朔?」

「あぁ。俺も、綺麗な色だと思ってる」


 その瞬間、視界が滲みました。

 自分でも驚くほど自然に、涙が頬を伝っています。


「えっ、ちょっ、泣くほど!? 私、変なこと言った!?」


 慌てる愛莉さんの声が、涙で滲んだ世界に飛び込んできます。

 その慌て方があまりにも普通で、だからこそ、胸の奥がまた熱くなりました。


 ふと、朔也くんの方を見ると、何も言わずにいつもの顔でこちらを見ていました。

 それだけで、なぜか余計に涙が出てきます。


「違うのです……違うのです。ただ、嬉しくて……」


 本当に良かった。

 嫌われなくて。

 気味悪がられなくて。

 ――今までと同じように、愛莉さんが私を見てくれて。


「そう……瀬那にとっては、すごく大事(だいじ)なことなのね」


 そう言った愛莉さんは、私を優しく抱きしめてくれました。

 私はどうすればいいかわからなくて、ただそっと、愛莉さんの背中に手を回します。

 その温もりに触れた瞬間、胸の奥で張り詰めていたものが、少しずつほどけていく気がしました。愛莉さんの腕の中で、ようやく小さく息を吐きました。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
 うんうん、そうだね……でも、因習に囚われない、ある程度大人なら誰も忌避しないのですよ。
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