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学年一の才女を拾ったら癒されました  作者: PPHiT
第二章

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SS 倉木 愛莉:隠された水着

 ― 夏休み始まる少し前 ―


 今日は友達の瀬那と一緒にショッピングモールへ来てるよ。瀬那がバイトしてるお店が入ってる『ルナポート』だ。

 どうやら水着を新しく買いたいらしく、「愛莉さんの意見が聞きたいです」って誘われちゃったんだよね。


「これは子供過ぎますか……? こっちだと大胆過ぎでしょうか?」


 で、今の瀬那は水着売り場のど真ん中でウンウン唸ってる。

 私を誘う時は「友達とプールに行く予定ができたので」ってすまし顔で言ってたけどさ……その必死な悩み方は、どう考えてもただの女友達と遊びに行くテンションとは違うじゃん。

 こんなに悩んで可愛い姿を見せてるって知ったら、『誰かさん』も絶対本望だよね。


「これは……どうでしょうか……」


 瀬那の手には、明らかに年相応じゃない変に大胆な水着や、逆にフリフリで幼すぎる水着が握られている。うん、これは完全に迷走してるね、間違いないよ。


「ちょいちょい瀬那さん、落ち着いて。そんなの瀬那が着てたら、朔が刺激強すぎて倒れちゃうよ?」

「やっぱり、そうですよね……っ、いえ! べ、別に朔也くんに見せるためじゃ無いですよ!?」

「はいはい、わかってるって」


 本人はこれで隠せてると思ってるみたいだけど……学年一の頭脳を持ってる才女のくせに、こういうところは本当にポンコツというか、可愛いよね。


「か、仮にですよ? 同級生の男の子に見せるなら、どれが良いでしょうか……?」

「ふーん、あくまで『仮に』ね?」

「……ニヤニヤしないでくださいっ」


 瀬那が朔を好きなのはとっくにバレバレだ。ストーカー事件のことを二人から聞いた日、瀬那の様子がおかしかったから、がっつり問い詰めて聞き出しちゃったしね。

 だから今更私に隠す必要なんてないじゃんって思うんだけど、瀬那的にはまだ恥じらいがあって認めたくないのかなって。


「ごめんごめん。うーん、瀬那は小柄だけど、出るとこちゃんと出てるしスタイル良いからなー。この辺とか? こっちの形も良いかも」

「び、ビキニですか……!」


 私が選んだのはホルターネックのビキニと、三角ビキニの二つ。色と柄はいくつかあるので、とりあえず形から提案してみる。


「さっきも言ったけど、スタイルいいからさー。三角ビキニは外せないよね! で、瀬那が多分たじろぐだろうから、ホルターネックね。これはこれで良いんだけど……」

「良いんだけど?」

「身長が……それよりも年齢かな?」


 私は瀬那にビキニを合わせて、首を傾げた。

 ホルターネックはどちらかと言うと、身長が高い方が似合う印象がある。それに大人の女性。ごめんだけど、瀬那にはどちらもちょっと足りない。


「……私が密かに気にしていることを、ズバッと」

「あれ、そうだったの? ごめんごめん! うーん、となるとやっぱり三角ビキニ一択かな」

「さすがに……布の面積が少なくて、結構きわどくないですか?」

「うーん、でも朔は絶対そっちの方が喜ぶと思うよ?」


 私がある意味、一番の核心を突く言葉を放つと、瀬那の動きがピタッと止まった。

 多分今、優秀な頭の中で、朔の反応とか色々シミュレーションしてフル回転してるんだろうなー。頭がいい分、斜め上の余計なことまで考えてそうで、面白そうだからちょっと頭の中をのぞいてみたいよね。

 ……ってか、さっき「朔也くんに見せるためじゃない」って必死に否定してたのに、名前出された瞬間にフリーズするあたり、やっぱりアイツに見せるためじゃん。


 その後、まる五分ほど本気でウンウンと悩んだ末、瀬那はそのきわどい三角ビキニと、フリルが付いたオフショルダーのビキニを試着した。

 見せてもらったけれど、どちらも似合っていて良き!……ただね。……三角ビキニの方は少し刺激が強すぎるわ、こりゃ。本人は自覚していないだろうけど、瀬那ってば相当なポテンシャルを持っているわよ。


 ◇


 無事に水着を買い終えた私たちは、近くのカフェへと足を運んだ。

 せっかくだから瀬那のバイト先に行くのもありかなって思ったけれど、「さすがに気まずいですよ……」と全力で遠慮されてしまった。


 瀬那は冷房が気になるのかホットのカフェラテを、私は季節限定の甘いフラッペを頼む。

 運良く空いていた奥の席を見つけて腰を下ろすなり、私は一番気になっていた本題を切り出した。もちろん、話題は瀬那と朔の恋バナだ!


「で、朔とはどうなのさ? 少しは距離が縮んだの?」

「……っ、急にそんな話題をふらないでください」


 恥ずかしいのか、瀬那の視線がキョロキョロと泳ぎ、両手のひらで熱を持った頬を隠す。うん、その小動物みたいな仕草も可愛いね。


「今更でしょ。せっかく手の補助っていう、絶好の言い訳があったんだから。当然、距離を縮めるようなこともしたんでしょ」

「……」

「ちょっと、なんでそこで目を逸らすのよ……まさか、もしかして押し倒したの!?」

「ちょ、ちょっと愛莉さんっ、声が大きいです! それに、そんなはしたないことしていませんよ!」


 顔を真っ赤にして抗議してくるけれど、女子高校生の会話なんてこんなもんでしょ。そんなに恥ずかしがらなくてもいいのにね。


「もぅ……愛莉さんが思っているようなことはしていませんよ。……ただ、アプローチはしているつもりです。でも……」

「でも?」

「あまり、朔也くんの反応が良くないというか……一枚、壁があるように感じるのです。薄いのですが、しっかりとある感じがします」


 なんとなくだけど、その『壁』ってやつはわかる気がする。第一印象は悪いように見られがちだけど、ちゃんと話してみるとあいつに悪いところはほとんどない。口が悪くて少し卑屈なところ以外は、普通に面倒見の良いやつだ。だから私とも普通に友達付き合いができてるし、なんだかんだ、人を見る目があるひろがあそこまで懐いてるのが何よりの証拠だ。


 ……だけど、誰に対してもどこか一定のラインから踏み込ませないような、見えない距離を置いている印象は拭えないんだよね。女の子に対してだけなら『ただの奥手』で終わるけど、同性のひろもそれを感じてるらしいから、たぶん根本的な性格の問題なんだろうな。


「不安な時に手を握ったりしたら、ちゃんと優しく握り返してくれますし」

「うん?(……普通に手繋いでるの?)」

「ご飯を一緒に作る時は、私が『味見してください』って、スプーンを直接口元に運んだら、普通にパクって食べてくれますし」

「う、うん?(……新婚さんかな?)」


 待って……待って! 何か……おかしくない?


「ご飯を一緒に食べる時は、『それ、一口もらえませんか?』って言うと、彼のお箸でそのまま食べさせてくれますし」

「うーん……うん!」


 え、これでまだ付き合ってないってどういうこと!? どう考えても二人の距離感が完全にバグってるとしか思えないんだけど。


「でも……これ以上は踏み込んでこないというか。やっぱりどこか、壁を感じるのですよね……」

「……ねえ瀬那。その壁、一体どこの次元にあるわけ?」


 そこまでベタベタのイチャイチャをしておいて壁を感じるなんて……瀬那の距離感がおかしいのか、それとも朔が壊れているのか、私にはもうわからないよ。

 でもまぁ、本人が真剣に悩んでいるなら気にかけてあげないとね。


 ◇◇◇◇◇


 ― 数週間後 ―


 今、私は遊びに来た朔の家で、二人が海に行った時の写真を見せてもらっている。二人ともすごく楽しそうになかなか上手く撮れてて、見てるこっちも楽しい!

 ただ……時折しれっと混ざっている、夕食とかホテルの部屋の写真を見る限り……絶対にお泊まりで行ってるじゃん、こいつら! この時はまだ付き合ってもいなかったはずだよね!?

 同居の件といい、お泊まり旅行といい……ホント、この二人の順番のバグりようはどうなってるのさ。


「あ、そういえばさ。写真にはフリルの方しか映ってないけど、一緒に買った『露出が多い方』の水着は着なかったの?」

「えっ!? ちょっ、あ、愛莉さん! そ、それは言わないでくださいっ!」

「露出が多い……水着……?」


 瀬那の慌てっぷりと、驚きを隠せない朔の純粋な反応を見る限り……なるほど、恥ずかしくてこいつには見せてないな、こりゃ。

 ふふ……朔、いずれ見れる日を楽しみにしてなさいよね! あの瀬那のきわどい三角ビキニ姿、同性の私から見てもすっごく破壊力あったんだから!



 ― 倉木 愛莉:隠された水着 完 ―


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