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学年一の才女を拾ったら癒されました  作者: PPHiT
第二章

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SS 南雲 瀬那:引っ越し事情

 ― 第102話から数日後 ―


「そういや、瀬那って引っ越しはもう考えていないよな?」


 休日の朝食。ゆったりとしたこの時間を破ったのは、朔也くんの一言です。

 今日も自画自賛ながら、美味しく作れた厚焼き玉子の一切れを頬張るタイミングでかけられた言葉に、驚いて落としてしまいました。


「……大丈夫か?」

「な、なんですか!? 急に……ま、まさか! 私、追い出されるのですか!?『朔也くん()のもの』になったので満足して…… 釣った魚には興味ないタイプですか!?」


 他の人には『同居』と伝えていますが、金銭面では食費の折半しかしていない身としては、実質『居候』状態の私。その厄介をかけている身としては、『追い出される』なんて……少し言い過ぎてしまいましたね……


「違う違う、そうじゃないって。もう数ヶ月うちにいるけど、過ごしづらくないのかなってな。もしそう思っているなら、引っ越しも考えているだろうなって思ってな」

「……そう言うことですか、安心しました。正直に言いますと、逆に過ごしやすくて、困ってしまうぐらいですね」


 自室をお借りしていていることに加え、広くて綺麗なキッチン、それにリビングとダイニングも使って良いとあります。居候の身として考えたら贅沢な空間です。それに、何て言ったって、大好きな人と一緒に居られる居場所……あと、添い寝。過ごしづらいなんて思ったことなどありません。


「過ごしやすいんなら良いけど、そんなに良いのか?」

「はい!とても!……以前住んでたアパートは、こう言ってはいけませんが、リフォームされていたとは言え、少しぼろぼろでしたから……」


 内装は一見綺麗でしたが、細かく見るとガタがきている箇所がチラホラ。天井のシミや、風呂場の隙間など、家賃が安かったのも頷けます。


「そういえば、なんであんな古いアパートだったんだ? 気分を害したら申し訳ないんだが、曽祖父の遺産もあったんだろう? いやらしい話、それなりの額だと思うし、もっと別の場所に拠点を構えることだってできたはずだろ」

「私も女の子なので、もう少しセキュリティが高いところにしようとは思いましたよ。……でも、二十三区ではないですが、この辺りって思っていたよりお家賃が高くて……。あまり学校から離れても通いづらくなるので止めたのです」


 それに、朔也くんに再会できるかもって、淡い期待を考えていたのもあります。初めて会ったルナポートの近くも考えましたが、人通りが多すぎましたし、商業施設も多くて、住む場所って言うよりは遊びに行く場所ってイメージでした。


「それに、探す時期が遅かったので、良い物件があまりなくて……」

「あぁ、なるほど。合格してから探していたのなら、あまりないかもな」


 合格発表があったのが二月上旬です。ちょうど、新社会人の引っ越しシーズンと重なってしまい、良い物件はほとんどありませんでした。……そういえば、引っ越し代も高かったですね。


「その通りです。後は……あまり遺産に手を出したく無かったってのもあります。後見人の叔母様に迷……許可取らないとおろせませんし、将来のために残しておきたいと考えたのです。だから、できる限り自分で稼いだお金で暮らそうと考えていましたね」


 引っ越ししてからすぐにバイトを探したのは良い思い出です。入学前なので話を聞いてくれないお店の方が多かったですね。もちろん仕方ないのですが。


「なるほどな。そうなると、新しいところを探すのも難しいわな」

「そうですね。保証人問題もありますし、難しいですね」


 未だに、叔母様に火事で家が無くなったことがまだ言えていません。……火事当日から、これまでどう過ごしていたかの説明も思いつかないです。時間が経てば経つほど、問題になるのですけどね。もういっそ、成人までこのまま……


「それに、実はまだ叔母様に火事のことを言えていません。……もし同居しているなんて知られたら、絶対に連れ戻されてしまいます……」

「えっ!?……そ、そうだな。まぁ、焦って言う必要もないだろ。うん」

「そうですよね……って、なにか焦っていませんか?」

「気にすんな」


 気のせいではなく、明らかに焦っているというか、誤魔化しています。朔也くんにしては珍しいわかり易さですが……教えてくれなさそうです。

 仕方ないので、疑いの目だけを向けておきます。


「なんだよ? そんな可愛い表情をしても、本当に何もないからな?」

「かわっ……もぅ、とりあえず誤魔化されておきます!」


 こういう時に言うのは卑怯だと思います。

 仕方ないので、食事を再開すると――


「まあ、引っ越しなんて考えていなくてよかったよ。せっかく『俺のもの』になったばかりなんだから、今更、目の届かない場所に手放すつもりなんてないしな」

「……っ」


 私はまた卵焼きを落とすのでした。



 ― 南雲瀬那:引っ越し事情 完 ―



補足すると、第一章の段階で瀬那の叔母(朱門)は朔也と瀬那が同居しているのを知っています。

朔也もそのことは知っていますが、瀬那に話せていない状態です。

※ 第48話 ストーカー事件の事実確認②


それなので、伏線でもなんでもないです。

随分前の話なので、念のため補足しました。

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