凱旋
これでもヤマトの本来の勢力圏の数十分の1しか回復していないのだが、スメラギの帝にとっては久々の朗報であった。
地方の二大巨頭を「誰も死なせずに」味方に引き入れ、都へ戻ってきたカンジたち。
「いや〜、ツヌガ様様ですね! 出雲も吉備も、すっかりあまんとのファンになっちゃいました!」
ヒメが満面の笑みで、買収用のキャンディを頬張りながらカンジを迎える。
「俺は棒を振っただけさ。それよりシオジ、あの団子、現地で大好評だったぞ」
カンジに水を向けられ、シオジは薄くなり始めた頭をガリガリと掻いた。
「本国のリサのやつに感謝するんだな。あいつ、手紙の最後に『新商品開発のために、瑞穂の国の、その、エンゲージリング?とかいう黄金の指輪のスケッチを送ってください、モチベーションが上がります』とか書いてやがった」
「えっ!?」
ヒメが過剰に反応し、目を輝かせてシオジの胸元に詰め寄る。
「リサちゃん、黄金の指輪に興味があるんですか!? 素敵、やっぱり女の子ですものね! ロマンスですよね!」
「おい、近い近い。……お前なぁ、指輪だのロマンスだの言う前に、自分の足元を見たらどうなんだ」
シオジが呆れたようにジト目を向ける。
ヒメは「? 私の足元ですか? 泥はついていませんよ?」と首を傾げている。
後ろでその様子を見ていたオトマツが、サクラの肩を叩いた。
「なぁ、サクラ殿。あの(笑)への執着、ヒメ様はいつになったら『食欲』や『物欲』以外の感情だって気づくと思う?」
「さあねえ……。でも、あの頑固な地方のボスたちを胃袋と筋肉で落としちゃうような二人のことだし、恋愛に関しても、お互いの懐に飛び込むまで、相当な『避けるの無理』な攻防戦が続くと思うわよ」
遠くで、戻ってきたばかりのカンジが、また「ツヌガ様、次の稽古をお願いします!」とやまんとの若者たちに囲まれている。
瑞穂の国の変革は、こうして、賑やかで、甘くて、少し焦れったい風を伴いながら、確実に進んでいくのだった。
室町時代の荘園を全て武士に侵食された貴族たちの状況に似ていますね。




