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海の民 第一章  作者: 来栖 傳
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出雲と吉備

カンジ(ツヌガアルシト)による地方巡行——「出雲の大国主命」と「岡山の吉備津彦」の腕力説得編が始まります。

「——というわけで、ツヌガ様。出雲と吉備が、あまんとの介入にへそを曲げております」

瑞穂の国の都に設けられた仮本陣で、タジカヲは相変わらずいたずらっ子のような笑みを浮かべながら、巨大な地図を指差した。

「へそを曲げる、か。あの大人たちは、まだ小競り合いを続けたいらしいな」

カンジは、すっかり定着してしまった「ツヌガ」の名で呼ばれても眉一つ動かさず、愛用の素振り用の太い木棒を肩に担ぎ直した。

「武力でねじ伏せるのは悪手ですが、あの二つの地域は瑞穂の中でも独自の強い勢力を持っています。言葉だけで従わせるのは、うちの賢者(笑)の胃痛を増やすだけでしょうね」

サクラが、本国から届いたリサの手紙(相変わらず噛み噛みの文字で『しゅがー・きゃんでぃ』の製法が書かれている)を畳みながら同意する。

「よし、ならば俺がちょっと『お伺い』を立ててくる。護衛は最小限でいい。……シオジ、お前は美味い飯の準備をしておけ」

「へいへい。出張料理人の手配は任せておきな。……おいカンジ、絶対に誰も殺すんじゃねえぞ」

「分かっているさ。俺たちの旗印は“命大事に”だからな」

こうして、角のような前立ての兜を被った「ツヌガアルシト」の、筋肉と棒切れによる地方巡行が始まった。

神話での国譲りは出雲が舞台でしたね。今回は、違った展開を見せるようですね

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