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海の民 第一章  作者: 来栖 傳
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帝と会う その2

この頃のみかどは大国主命かと思いましたが、どうも違うようですね。やまとにはニギギ系の王朝が有ったようで、卑弥呼系と大国主命系と吉備津彦系と並立していたように感じます。考古学の新しい発見では、奈良の整備が意外と早いことと、やはり縄文の文化の伝播が広かったようで、「海の民」のバックボーンが濃くなっています。

帝の間は、思ったよりも質素だった。

玉座らしきものはあるが、誰も座っていない。

代わりに、白い衣を纏った人物が、静かに立っていた。

「ようこそ、海の民の勇者たちよ」

その声は、若くも老いてもいない、不思議な響きを持っていた。

ヒメは一歩前に出る。

「帝にお目通り叶い、光栄です。まずは、あまんとの返還をお願いしたく」

その言葉に、周囲がざわめく。

シオジが小声で、「いきなり核心か」と呟く。


「その前に」

みかどと思われる人物は片手を挙げ、数秒沈黙を選ぶ。


「なぜじゃ」

続いて発せられた問いには誰も答えられない。

何が何故なんだ?

此度の侵攻の理由か?


みかどは一言をこぼしたことで、その押さえてた感情も溢れ出したようで、拳を握り締め額の血管が浮き出していた。

「なぜ、我らを見捨てて、おぬしら共だけで逃げた?」

それは、かの地獄の日々を示している。

確かに、口伝によると「あまんと」は灰に包まれた集落を捨て、てんごてんごに海に逃れたと有る。


「それは…過去のことで…我らではいかんともし難いことで」

シオジが頭を床に擦り付けながら、みかどに答える。


「やまんとの命は、我らの命は顧みなかったのか?」

食い気味にみかどの言葉が返ってきた。

みかどは予想外の激昂をみせた。

「なぜじゃ?逃げたのなら、また誰かを救いに戻ってくることもできたろう?それを、それをこの長い年月、何が海の民じゃ、逃れの王家じゃ、もとより我が同胞はらから、我が地に住む民ではなかったのか?」

ついには立ち上がると、ヒメたちの前を左右に歩きながらも続ける。

「我らやまんとは、海の民も受け入れて同居を許してきたではないか?それを、それを、災いの時には、感謝を返すでもなく手のひらを反すように、ずいぶんと我らを舐めてくれたものよ。あの時以来、我らの味わった辛苦を知っているのか?子を育てることさえ叶わぬ、貧しい生活、呪われた土地は、何度すき返そうとも芋のひとかけらを育てるしかできぬ、日々を。おぬしらは、おぬしらは、その間、交易だの冒険だの、気ままに生きてきて 、ここにきて故郷に帰ると、どの口が、どの口がそれを申すのかと思ってきたが、やはりやまんとと主らとは相容れぬ」


すめろぎとして、国内の多くの王権を統べるべく、彼らは代々神威を代弁してきたが、個人としての恨みは捨て去ることが出来ない、代々、伝承されてきたものだけに、恨みは消しようが無い。


ヒメは、みかどの怒りを真正面から受け止めていた。

その小さな身体に、場の空気が重くのしかかる。


だが、彼女は一歩も退かない。

「帝よ」

その声は、静かで、しかし確かに届く強さを持っていた。

「我らが逃げたこと、否定はしません。

あの時、海は我らを受け入れ、山は炎に包まれていたそうです。

誰を救えたか、誰を見捨てたか——それは、今さら語ることではありません」


みかどは、目を細める。

「ならば、何を語りに来た?」

ヒメは、袖の中から一枚の布を取り出す。

それは、焦げ跡の残る古い旗。

海の民とやまんとの紋が、並んで刺繍されていた。

「これは、あまんとの最後の祭祀が、炎の中で祖先に託したもの。

“いつか戻り、誓いを果たせ”と。

我らは、逃げた者ではなく、戻ってきた者です」

みかどの目が揺れる。

その旗は、確かに王家の古紋を含んでいた。

それは、海の民がかつて“同胞”と呼ばれた証。

ジダンが低く呟く。

「ヒメよ…それを持っていたのか」

サクラは、涙をこぼしながら言う。

「それでも、赦されないかもしれない。

でも、語らなければ、何も始まらない」

みかどは、静かに座に戻った。

その背に、長い年月の重みが見えた。

「語れ。海の民よ。

この国に、何をもたらすつもりか」




さて海の国は何を瑞穂の国にもたらすことが出来るのでしょうか?ヒメの転生者チートが炸裂すr・・・あれ、転生関係は言及していませんよね。

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