第99話 寝返ったスパイ
バタバタと毎日が慌ただしく過ぎる中、ギルバートと食後にお茶を飲んでいると、リュカ様に連れられてネズミの獣人と思しき男と猫耳の女性の2人が面会に来た。
「君達は?」
ギルバートに声をかけられると、2人ともガバッと頭を下げる。
「この2人が殿下にお話があるようなので、お連れしました。」
リュカ様がどこか面白そうに見守っている。
「私に何か用かな?」
2人は見た感じ、聖ウルズリリア皇国からの難民のようだ。
「…………。」
2人ともブルブル震えてしまって言葉にならない。
「2人とも、そう怯えなくても、今すぐ殺したりはしないよ。……それとも……何かしたのかな?」
「いっいえ!!とんでもございません!!」
先に声を出したのは女の方だった。
「お、俺もです!!」
遅れて男も言う。
「それで、用というのはどんな用事かな?」
女の方は、さらに一瞬迷った後、意を決したように話し始める。
「我々は、ウルズリリアのスパイで参りました。……しかし……あの国には、脅されているだけで思い入れはありません!殿下のお人柄を見込んでお願いがございます。我々を保護していただけませんか?そうしましたら、知っている事はすべてお話致します。」
リュカ様が2人を見ながら。
「2人とも、アッシュベリー公爵領の避難民の町があまりにも美しく整っている上に、毎日美味しいご飯が出る事にびっくりして、こちらに寝返る事にしたらしいよ?」
「……あの、リュカ様?実は裏切ったと見せかけて裏切っていない、二重スパイの可能性は大丈夫なのでしょうか?」
裏切ったな!!
いや、表返ったのさ!!とか言う展開はドラマあるあるだよね。
「いい着眼点だね、コーデリア嬢。でもさ、そこはギッチリカロン様に契約結んでいただいているから、心配ないよ。裏も取れているし。」
リュカ様…
有能だ。
「それで、脅されたと言う点についてはどうなった?」
ギルバートがリュカ様を見て質問する。
「殿下…その点については、こちらの男…フランツは病気の妹を。こちらの女、リフォロに関しては夫と子供が牢に閉じ込められておりましたので、それぞれ保護済みです。」
「そうか。なら良い…それで、すでに家族は保護したわけだけど、君達を保護するに値する情報はあるのかな?」
今度はギルバートに家族を取られている状態だから、2人はこんなに怯えているのかな。
ギルバートの事だから、大した情報ではなくても保護すると思うけど…
何かわかるなら、それはそれで嬉しい。
「はい、まずは私から…私は報告の為に何度か皇宮に出向いた事がございます。そこで耳にした情報ですが、皇帝は対竜対策の為に、かつて初代飛龍王を殺したとされる、呪われた魔剣を入手済みです。さらに、人に神格を持たせこの世ならざる力を行使できる……と聞いております。」
「後半は確認できませんでしたが、前半は裏が取れております。」
素早くリュカ様が捕捉する。
「竜殺し…か。」
ギルバートが、何か考えている。
竜殺しってカロン達にやっぱり効くのかな?
後で聞いてみないと。
「では…次は俺から…俺は少し前まで、アマルディア帝国に、スパイに入っていました。そこで掴んだ情報ですが…なんでも、当代帝王は悪魔王の召喚に成功したのだとか…竜は悪魔の魔力に弱いと言う話ですから、帝王は勝利を確信して今から国は戦勝ムードという話です。」
流石に2カ国とも対策もしないで、乗り込んで来たりはしないわよね。
うーん。
まずいか、どうか2人に聞いてみなくちゃ。
場合によっては本を増やして何か対策を練らないといけないかもしれない。
対魔の本とか…
ソロモンの鍵でこっちも、悪魔を従えるとか…
「なるほど、2人の情報は助かった。保護するから、他にも思い出したらすぐに知らせて欲しい。」
ギルバートが告げると、2人の顔色がパッと明るくなる。
「あ、そうだ!リュカ様…彼の妹さんはポーションで治りましたか?」
「……それが、預かっていた最上級ポーションでも、少し回復した程度なんだ。」
やっぱりそうか。
彼が、治ったにしては顔が晴れやかではないから、気になっていたのだ。
誰にでもあげる事はできないけど…
「これをリュカ様からあげていただけますか?」
「ん?これは……?」
「エリクサーです。」
は?……と言う顔でリュカ様が固まる。
いつも優雅なリュカ様を固まらせる事に、成功してしまった。
「エリクサーです。」
もう一度言う。
「大丈夫、聞こえたよ。……まさか、その伝説の品を彼の妹さんに?!……ああ、もちろん命に軽い重いはないけれど……彼女は完全ではないけど良くはなっているから、これは、殿下の為にとっておくべきでは?これから戦いなのだし…」
「いえ、そんなに貴重ではないので。」
リュカ様は唖然としている。
「この通り…まだ在庫がたくさんありますし、その気になればまだまだ作れますので。」
「まだまだ…エリクサーがまだまだ…」
ずらりと並んだ瓶を見てぼんやりしている。
「…………。はあ、ある程度なんでも知っている気になっていたけど、コーデリア嬢にはいつも驚かされるね。」
苦笑すると、懐に瓶をしまう。
「そう言う事だから、今から妹さんのところに行こうか。」
リュカ様に、促されるとこちらは一刻も早く行きたいとばかりに、何度もお辞儀をしながらフランツは出て行った。
誤字脱字報告いつもありがとうございます!
昨日感想返信中に、気がついたら一つ感想がなくなっていたような…
誤作動か操作ミスかわかりませんが、思い当たる方いらっしゃれば申し訳ありません。




