第98話 動乱の気配
それからしばらくは、店への嫌がらせも止み平和な日々が戻って来た。
団子はモチモチとした食感と美味しさは好きな種族が多いだろうから、お店を出してみてはどうか…とリュカ様に言われ絶賛店舗探し中だ。
今日はリュカ様からちょっと集まって欲しいと言われたため、屋敷の広間に集まっている。
みんなのテーブルには紅茶をセシルが置いてまわってくれている。
さらに、飽きやすいイオにはお酒とチーズ。
カロンには、3段ティーセットと山盛りのお菓子もおまけする。
メルヴィンも欲しそうにしているので、セシルに合図してローストビーフのサンドイッチを出してもらう。
最初の方のリュカ様からの報告書には、ギルバートが実は偽物…だとか私がポーション作成の功績を横取りした…とか言う噂が流れている、と書かれているが、今のところ直々に話に来るような恥知らずはいない。
リュカ様の書類にはさらに、噂の大元は王妃と父公爵をよく思わない貴族連中…
代表としてはイヴォンスキー侯爵がいる。
初日に絡んできた派手な令嬢の実家だ。
侯爵はお父様が前々から好き勝手にやっているのが気に入らず、どこかからポーションの功績を横取りしたと言う噂を聞きつけて、けしからんと息巻いているらしい。
信用のおける情報筋から手に入れた情報だと言って回っているらしいが、お父様と喧嘩して無事で済むと思っているのかしら?
今のところこの噂話がマイナスになる事は無いし、自分から火消しに当たるのも、なんだか違う気がするので放置している。
イオなど…
「面倒だな。元の姿に戻ってブレスでも吐いてやれば、そのような不敬な輩は大人しくなるのではないか?」
などと言っているが…
ブレスなんて浴びせたらそれこそ、死んでしまうから、たしかに確実に大人しくなるけど、王子のイメージが下がりまくるからやめてほしい。
そんな小さな事で出来事よりも、大事な事が書かれていた。
「みんな最後まで読めたかな。」
リュカ様が話し始める。
「ええ、大丈夫です。」
他のみんなも頷く。
「読んだ通り、2カ国がいよいよ攻めて来そうなんだ。」
「あと、時間はどのくらいあるかな。」
「殿下…そうですね。大体3ヶ月以内には動きがあるでしょう。」
「だいぶ近いな。」
「前々から用意されていましたからね。」
「王宮は流石に気がついたか?」
「ええ…後手ではありますが、流石に気がついたようです。今急ピッチで軍備を増強していますし、来週にはアカデミーにも軍事開発を優先して行うよう通達が来るようですよ。」
「私のところにポーションを譲れって依頼がここのところ激しいのは、それだったのね。」
譲れなんて義理がないので放置しているけど。
殺そうとした相手におねだりなんて、厚顔すぎて言葉にならない。
「そうだね。コーデリア嬢…それについては父上がだいぶ強気に突っぱねていたようだけどね。」
流石お父様。
ブレない男だわ。
「先にどちらが来そうだ?」
「ギルバート殿下…そうですね。聖ウルズリリア皇国は、最近活発に活動をしていますし…掴めた範囲の情報では、こちらの貴族の爵位を金で買い、スパイがだいぶ潜り込んでいるようです。ですが、性格を考えると、アマルディア帝国は先に我慢の限界を迎え、突撃してくると考えられますね。」
「なるほど…」
「どちらの国に対しても、竜のお2人がいれば戦地に急行できると考えていますが、いかがでしょうか?」
イオとカロンに話を振る。
「まあ、一刻もかからんなぁ。」
イオが気軽に言う。
「面倒だけど、いざとなれば、コーデリアが呼べば竜も増やせるしね。」
カロンがスコーンを半分にパカっと割りながら返事をする。
綺麗に割れたようで、大層満足気だ。
みんなも特に何も心配していないようだが、戦いなどした事が、ない私は不安ばかりだ。
「リアは、安全な場所にいて欲しいな。」
ギルバートが不安を察したかのように言う。
「ううん、離れた場所なんて余計に怖いもの…カロンもいるし、私、絶対について行くわよ?」
「そう?怖いのは悪い事じゃないからね。できれば待っていてね。」
こうして、だんだんと緊張の日々が始まるのだった…




