商人を追って⑲
不安は和らいだけど生徒会室へと向かうクルル様たちにもしもの事があると嫌だから、と言う理由をつけてオリジンとグレイシアを同行させてもらうことにした。
ヒロインが居る場にゲーム内でのヒロインの精霊だったグレイシアを向かわせるのはとても悩んだ。けど、よくよく考えるとあたしと契約を交わす精霊の中で一番冷静沈着なのはグレイシアだから、きっとヒロインの状況を探ってくれると信じてお願いしておいた。
オリジンについては、ゲームの時に出ていない事がはっきりしている。だから、オリジンはきっとリーンの魅了にはかからないはず。
「クルル様、イリュス様。少しでもおかしいと思ったらすぐにリーンから離れて下さいね?」
「あぁ、わかっている」
「はい」
「絶対ですよ? 約束ですからね?」
「あぁ、大丈夫だ」
くすりと笑ったクルル様があたしの頭を梳くように撫でると「行って来る」と言い置き、救護室を後にした。
正直心の中の不安は消えない。けど、あたしにはクリシュアと店を探すというやるべきことがある。
「よし、じゃぁ~あたしたちもいこっか」
『うん~。いこー』
『おう』
『案内は任せてくれ』
救護室の先生にお礼を言いつつ校舎を抜けて馬車乗り場へと移動する。運動不足のあたしの足では、馬車乗り場までが中々遠い道のりだった。
漸く見えた馬車乗り場にはクルル様のつけてくれた護衛の人が二人、馬車と一緒にまっていた。
「あるお店を探したいので、とりあえず大通りまでお願いします~。あたしたちを降ろしたらここに戻ってもらっていいですよ」
ドキドキしながら、馬車で向かって貰いたい場所を告げる。
「畏まりました。殿下方には別の馬車を手配しておりますので、ご心配には及びません」
「そうなんですね」
正面に座る二人の女性騎士の片割れ――赤い髪の女性が答えてくれた。
無事、コミュニケーションが取れた事にほっとしたあたしは、窓へと視線を向ける。学園から移動を始めたばかりの馬車の窓からは、教会の鐘を吊るした尖塔が見えた。
そう言えば……とこれまですっかり忘れていた夢の内容を思い出したあたしは、クリシュアに視線を向ける。
――クリシュア、ちょっと聞いてもいい?
『どうか、したか?』
――えっとね。もしかしてなんだけど、リーンにはクリシュア以外にも精霊が居る?
『……あぁ』
――やっぱり、そうなんだね。
クルル様たちと出会った頃、よく見ていた夢。黒い鎖に囚われ、リーンに何度呼びかけても答えて貰えなかった。否、違う。存在自体を抹消された存在だった、と言うべきかな?
多分、その子の中にあたしは居たんだと思う。悲しくて、寂しくて、守りたいのに守れなくて、悔しくて、狂いそうなほどリーンが大切だった。
あの精霊は、きっと、あたしに助けを求めていたんじゃないかな? でも、今その子がどうなっているのかはあたしにはわからないし……でも、これ以上クリシュアに聞くことは、さっきの返事の仕方からしてできないよね……どうしよう。
『ラピス……が居た』
ラピス? ラピスと言えば、リーンが最後の方で契約した土の精霊ではなかっただろうか? 最後が初めの方に来てる? 意味が分からない。リーンの行動が全く読めないんだけどどういう事なんだろう?
『そう言えば、ラピスが言ってたよ~? 契約したい子がいるって、でもその子の力が判らないから様子見するって』
『あー、言ってたなー。まぁ、でも結局契約したんだろ? なら、あいつなりに認めたって事じゃねーの?』
『……ラピスとは、契約できていない』
『はっ?』
えぇ!! ちょっと待って、ラピスと契約してないの? でも、あたし夢でラピスの感情に引っ張られたよ? どう言う事?
なんだ、そうか~と納得しかけたところで、クリシュアが爆弾発言を投下した。あたしが夢でみたラピスと思われる精霊は、リーンを求めてた。なのに、契約していないとはどういうことなのだろう?
謎しか残らないリーンの行動とラピスの拘束にあたしは、無い頭を必死に動かす。両腕を組み悶々と考えはじめた。
「婚約者様、大通りに到着いたしましたがいかがされますか?」
かけられた言葉にハッと目の前に座る赤紙の女騎士さんを見れば、伺うような視線であたしを見ていた。
「あ、おります。すいません……降ります。帰りは、ニマ君たちに送ってもらうので先に戻っててくださって大丈夫です。じゃ!」
急ぎ立ち上がり、御者さんが開けてくれた扉を潜り抜ける。地に足を付け振り返ると、護衛の騎士さんたちに帰りの心配は要らないと告げた。
「よし、じゃぁ、クリシュアよろしくね!」
『あぁ、こちらだ』
困惑する護衛騎士さん達を残し、あたしはクリシュアの指さす方向へ意気揚々と歩き出す。クリシュアが言うには目的の店までは、三十分ぐらいで到着できるらしい。
不定期更新になり申し訳ありません。
のんびりとではありますが、書けるようになりましたらきちんと更新していきたいと思います。




