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商人を追って⑰

 クリシュアの事を考えていたあたしは、クルル様からの突然のハグに驚いた。クリシュアとリーンの事、学園で向けられた値踏みする視線の事、ゲームとは違う神官たちの事とかいろんなことが、頭に浮かんでは消えて行く。

 

 過去のトラウマと言うべき出来事を思い出して、ぎゅっとクルル様に縋りつく。そんなあたしの頭をクルル様の掌がゆっくりと撫でる。


 学校と言う場所で、訳も分からないまま酷い目にあっていた。だけど、今は違う。同じ学校だけど、ここには弱音を吐かせてくれるクルル様がいて。あたしの感情の機敏を悟ってくれるオリジンたちが居る。


 トクン、トクンと規則正しく聞こえるクルル様の心音が、あたし自身の恐怖や不安をゆっくりと流してくれているように思う。


 うん、もう大丈夫。きっと、何とかなる。クルル様もイリュス様いるし、オリジンたちもいる。だから、あたしは大丈夫! 少しぐらいトラウマに似てたからって、挫けたり、逃げたりしない!


 珍しく前向きになれたあたしは、撫で続けてくれているクルル様にお礼を言う。


「クルル様。ありがとう」

「……もう、いいのか?」

「うん。大丈夫」


「そうか」と言いながら、ゆっくり体を離したクルル様を見上げニッコリと笑った。


「クルル様、少しよろしいですか? 白様も目覚められたようで安心しました」


 扉の方からやってきたイリュス様が少しだけ硬めの表情で、あたしたちを呼んだ。


「何かあったか?」

「ありがとうございます。イリュス様」

「いえ、私は付き添ってきただけですから……。えぇ、教員の方に少しばかり話を聞いてきました」


 イリュス様の言葉に、クルル様とあたしは聞く姿勢をとる。ベットに腰掛けたままのクルル様は、あたしの肉をいつも通りに掴むとイリュス様に頷いた。


 必ず掴むのは、アレか、痩せろって言うクルル様の気持ちのあらわれなの? あたし、そんなに太って…………いや、太ったかも。元々運動嫌いなせいもあって、こっちに来てから全くと言っていいほど歩いていないし。毎日出される美味しい食事とお菓子をバカバカと食べてた気がしないでもない! あぁ、ヤバイ。これ確実に太ってる。ぬおぉぉぉ、誰か今すぐあたしの肉を削ぎ落して持って行って~~~!


 真剣な二人の横で、あたしは自分が太ったという事実に焦りを覚えた。肉を掴むクルル様は、何を思ったのかクスクスと笑い、今まさに話を始めようとしたイリュス様はあたしをチラリと見て苦笑いしている。


 な、何がそんなに面白いの? クルル様! イリュス様のその笑いは、諦めろって言う宣告ですか?!


「先ほど、教員に聞いたのですが――」

 

 咳払いをしたイリュス様が表情を改め得た情報を教えてくれた。その内容をあたしなりに纏める。


 イリュス様に協力してくれた教師が言うには、精霊が居なくなった生徒たちには共通点があるそうだ。それは、契約した精霊が居なくなる前に生徒たち全員が、王都のとある店に行ったという。店の名前は、リ・シクルディーと言う雑貨屋だとか。


「雑貨屋か……。生徒たちは何故その店に行ったんだ?」

「それが、皆、理由は一致していないようです。店は普通の雑貨屋だそうですから、文具なども扱っているらしくたまたま赴いたものも居れば、友人に紹介されていったものもいるのだとか。後は、アレク殿下が良く使っているそうですよ」

「見事にまちまちな理由だな」

「えぇ、そうなのです」


 クルル様とイリュス様の会話を聞きながら店の名前に心当たりがないか考えてみたけれど、何も引っかかるものがなかった。

 だって、アレクの御用達店とかゲームまでは出てこなかったんだもん。仕方ないよね。

 なんて考えているとイリュス様から、期待の籠った瞳で見つめられた。


「そこで白様……、その店について何かご存じありませんか?」

「ふぇ?」

「白、店の名前に心当たりはないか?」


 ちょ、イリュス様。そんな期待のこもった眼で見られても、あたし知らないよ~。って、クルル様まで、そんな目であたしを見ないでぇ! わかんないものはわかんない。


「え、えーっと。ごめんね、あたしの推しはアレクじゃなくてクルル様だったから、わかんない」


 期待の籠った眼を向ける二人から視線を逸らしつつあたしは事実を告げる。

 元々、あたしにある知識なんてゲームで出て来た固有名称を持つ店だけなんだよね。それも二つしか判らないんだけど……。バーオバとポーション屋ぐらいで、後は名もないお店の店先で攻略対象とイチャコラする絵を眺める程度だ。

 しかもあたしにとって記憶に残すほど重要なのは、クルル様と言う推しとの会話でありスチルだけなのだ。だから、もしアレクルートで言った店に名前があったとしても確実に覚えていない。


 二人の眼を見るのが怖いため俯いたあたしに、クルル様もイリュス様も「気にするな。白が悪い訳ではない」とか「白様が全てを知っている訳ではないとわかっていますから、そう落ち込まないで下さい」と、ものすごく気遣ってくれた。

 そんなあたし達へクリシュアが「その店なら、リーンと何度か行ったことがある」と声をあげた。

明日も更新予定!

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