クラス分け
バナダス先生の話の内容をまとめると、生徒と授業中に契約した精霊が契約を解除した訳でもないのにいないと言う報告が生徒から沢山はいっているらしい。いなくなった時期は、全員バラバラで昼間授業中に突然精霊がいなくなったりもしてるって。
「ある一人の生徒が言うには、精霊が居なくなる前に精霊自身が『何かに呼ばれている』と言っていたそうです」
「呼ばれている?」
「えぇ、森の奥の泉の方を見ていたそうだから、そこに何かあるのではないかとこちらも調べてみたのですが……何も見つからなかったのです」
『ふむ……我らが呼ばれるか……』
難しい顔をしたまま黙り込むバナダス先生たち。オリジンもオリジンで顎に手を添えて考え込んでしまった。
隣に座るクルル様から視線を感じたあたしは、顔を上げる。
「ん?」
「何か、思い当たる事はないか?」
クルル様の期待する目に答えるようにあたしは考え始める。
森の奥の湖と言えばゲームで、ヒロインの聖女としてのイベントが起こる場所だったはず。けど、そこに精霊が関係するかと言えば……あぁ! クリシュア関連のイベントだ。確か湖に汚れた存在が居て、それをクリシュアとヒロインが協力することで撃退してクリシュアとの繋がりを強くするんだ。
でも、そこに他の精霊云々は無かったと思うんだけど……うーん。
クリシュアの方をチラリと見れば、バッチリと目が合った。綺麗な水を思わせる瞳があたしを見つめている。
何か言いたいことでもあるのかな? そう思いながら、クリシュアへと手を伸ばす。表面張力を感じさせる、さらりとした長い髪の感触についつい撫でる速度があがる。そんなあたしの行動にクリシュアが気持ちよさそうに目を細めた。
「は、はく??」
「白様……何をなさっているのですか?」
「はぇ? あ、えっと!」
クルル様とイリュス様の戸惑った声に、クリシュアを撫でていた手を離して何でもないよと取り繕う。そこへ、控えめに扉をノックする音が鳴った。
それに応じたバナダス先生が開けた扉から、二人の男性が入ってくる。制服を着ていないことから教師だろうと中りを付けたあたしは、目の前に立ったダークブルーの髪を持ち翡翠の瞳を持つ少しだけ幼い見た目の男性教師に釘付けになった。
フェリオス・ナーグレイ、22歳、辺境伯家の次男で、ヒロインの攻略対象の一人だ。
そうだった。学園には、アレク以外にも攻略対象がいるじゃん! 忘れてたー!! えーっと、フェリオスの場合は確か……。途中入学のヒロインに担任になったフェリオスが勉強を教えて親しくなって行ったはず。バットエンドになると、他国に攻め込まれこの国が滅亡する。って、そんなことよりもなんで先生が二人いるの?
首を傾げながら先生たちを見るあたしは、この後続いたバナダス先生の言葉に不安を抱える事になった。
「こちらがフェリオス・ナーグレイ先生です。担当は歴史でクルル様とイリュス様の担任です。そして、お隣のハーリー・ベルクルト先生は、白様の担任です」
「え?」
「どうぞ、よろしく」
「よろしくお願いしますね~」
「白、どうした?」
どうしたって、なんでそんなに普通に受け入れてるのクルル様? おかしいでしょ? なんで、クルル様たちとあたしの担任がいるの? 同じクラスじゃないとあたしのいる意味がないじゃん。どういうことなのか、意味が分からないよ!
「クルル様たちと一緒のクラスだよね?」
「いえ、違います」
「なんで?」
「なんでと言われても、白様はお二人より年下ですし。クラスどころか学年すら合いませんよ?」
慌てふためくあたしの隣で、クルル様もイリュス様も当然のように頷いている。バナダス先生も担任の二人も、そして、学園長までも何を言ってんだこの娘みたいな顔であたしを見ていた。
やばい、やばい。だって、クルル様たちとリーン、アレク、その他攻略対象が同じクラスであたし一人、学年すら違うとかないでしょ? もし、もしもよ……リーンとクルル様がくっついたらどうしたらいいの? あぁ、やだ。やっと好き同士になれたのに、今更フラれるなんてやだ!
「うぅ、やだぁ! クルル様たちと違うクラスはやーだー!」
「白……そうはいっても、決まりだから仕方ないだろ?」
「だって、リーンも同じクラスなんでしょー? やだぁ~!」
潤んだ瞳でクルル様を見つめる。八の字眉のクルル様は困り顔で、あたしの頭を撫であやしてくれた。けど、頭をガシガシ掻いた学園長から「そうは言われてもなぁ……うちには飛び級なんてものも無いしなー。諦めてくれ」と言われてしまい、あたしは絶望へと突き落とされた。
沈むあたしを心配してくれるクルル様と別れ、担任のハーリー先生について教室へ向かう。その道すがら、オリジンたちが精霊なりの感性で励ましてくれた。




