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編入③

意外と若くハッスルイケメンな学園長は、ヨハネス・セーグリフと自己紹介してくれた。ニカっと笑うと白い歯がキラーンと煌めいて、細くはない腕を差し出して握手をしてくれた。

 その横からついでとばかりに秘書の人もご丁寧に「メーリナ・ハダナスです」と挨拶をしてくれる。


 自己紹介されればこちらも返すべきと言う訳で、座ったままクルル様、イリュス様、あたしの順で自己紹介すればセーグリフ学園長はあたしへ視線を向け眉間に皺を作る。


 あたしの名前に何か問題がありましたかね? と言うか、なんでそんな険しい顔してるの? 気になるんですけどっ!?


「……セーグリフ学園長。私の婚約者に何か?」


 睨み合う――ただ目を祖させなかっただけ――あたしと学園長の様子に怪訝な顔をしたクルル様が、あたしたちを交互に見ながら声をあげる。

 それにハッと視線を逸らした学園長は「いや、彼女の、その、周囲がっ」とボソボソした声で言うと頭を掻いた。


『ふむ。我らが見えているにょだろう』

『ほほ、めずらしき人の子じゃ』


 楽しそうにオリジンとグレイシアが言う。


「あぁ、なるほど! 学園長はオリジンたちが見えるだ~」


 つい、当然のように答えたあたしの言葉に学園長はギョッとして、クルル様とイリュス様は「なるほど」と頷いた。秘書のハダナスさんは、不思議そうに首を傾げると学園長の方を見る。

 ガシガシと頭を掻いた学園長が、両手を上げて苦笑いを浮かべると「まぁ、見えるってほどじゃないけどな」と軽い口調で答えた。

 

「見えないんですか?」

「あー、なんつーか、うっすら靄みたいに見えて気配を感じるだけだ」

「なるほど~! 折角だから皆ご挨拶したら?」


 靄が見えると言う学園長の言葉に、あたしは良い事を思いついたとばかりにオリジンたちへ姿を見せて挨拶する事を進めてみた。ちょっとした悪戯なつもりだったんだけど……何を思ったのか、目の前で学園長たちが居住まいを正す。


 え? そんな焦る事じゃないと思うんだけど……ど、どうしたのさ、学園長?


 ピシっと固まった学園長たちのまえにオリジンたちが姿を見せる。なんでわかるかって言うと、クルル様とイリュス様が胸に手を置いて頭を下げたから……。この世界の人たちって精霊を神聖化しすぎてる気がする。


『我が名は、オリジン。生命を司る木の精だ』


 大人になったオリジンが、胸を張って偉そうに挨拶している。


『俺の名は、ノヴァ。見てわかる通り炎の精だ』


 ライオンの姿のままかと思いきや、ノヴァも人型になれるらしい。十五歳ぐらいの見た目は、オリジンよりも幼く見える。赤い髪は短く刈り上げ金色の瞳に、浅黒い肌のイケメンだった。


『わらわは、グレイシア。氷を司りし精であるぞ』


 グレイシアも人型になれるのだろうけど、彼女は鳥の姿間のままご挨拶。片方の翼を器用に嘴へもっていくと扇の代わりのように口をかくした。


『僕はアーニマだよ~。風の精霊なんだ~。よろしくね~』


 あぁ、癒しのニマ君は尻尾をもふっとさせながらお行儀よくお座り状態。毛がふわふわとしているのがありありと分かるその姿に、つい手を伸ばしてしまうのは諦めて欲しい。


『私は……クリシュア。水を司る精です』

 

  クリシュア……いたんだ。ぶっちゃけ居ないと思っていたから、声が聞こえてあたしの方がビックリ。クリシュアは、あたしの精霊じゃないし、ここで挨拶していいのか? と言う疑問を持ちつつ四人を見れば、精霊さんたちは頷いていた。

 どうやらいいらしい。まぁ、本人と同じ精霊たちが良ければそれでいいという考えだからいいんだけど。


「こ、これはご丁寧にありがとうございます。まさか、精霊様方にお会い出来るとは思いませんでした。わたくし、この学園の学園長を拝命しております、ヨハネス・セーグリフと申します」

「学園長補佐兼会計を担当しております、メーリナ・ハダナスと申します」


 王様に拝謁するときのように片膝をついて頭を垂れる二人が、それぞれ自己紹介をする。あたしたちに自己紹介した時よりも言葉遣いが、すごく丁寧なのは気のせいって事にしておこうと思う。

 挨拶を終えてオリジンが『楽にせよ』と言うと二人が立ち上がりソファーに座り直す。それに合わせてオリジンたちも元の――省エネ姿に戻り、クッキーを貪り始めた。


「そう言えば……」と何かを思い出したかのように学園長補佐のハダナスさんが、少し困った顔で口火を切る。


「最近、学園内にも精霊を攫う不届き者が出没しているそうです。これから通う事になるアマチさんは気を付けた方がいいですよ」

「精霊を攫う不届き者ですか?」

「生徒が精霊と契約しているのか?」


 気を付けると言われてもどうやって気負つければいいのかわかんない。けど、誰かがそう言う目に合っていると言う事はあたしも、何かしら気を付けた方がいいのかもしれない。

 なんて考えを頭の中だけでしていたら、イリュス様とクルル様が同時に声をあげた。その声に、ハナダス先生は頷き話をしてくれた。


「えぇ、数日前にも契約精霊が突然姿を消して現れなくなった生徒がいまして……あ、あぁ、まずこの学園の授業で、適性のある生徒には精霊が契約をしてくれるんですが……」


 そう言えば、この学園では精霊と契約する儀式――授業が行われるんだった。そこでリーンは、ノヴァとかグレイシアとかと契約するんだけど……アレ? これまずくない? 先に契約した場合、リーンの契約精霊は何になるんだろう? そもそも、クリシュアが契約しているだけでもクリアできたっけか?


 頭の中でグダグダと考えを巡らせる。そんなあたしを、クリシュアが見つめていたことに気付かないまま――。

また来週。本当に今年中に終わるのか謎……。

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