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編入①

 メアリーの声でだらだらと起き上がったあたしは、朦朧とした意識の中まだ眠いと訴えた。だが、メアリーの「今日から学園でございましょう?」と言う一言に、パチッと瞼が開く。


「…………そうだった! 今日から学園じゃん!」


 思い出したように嬉々とした声をあげたあたしは慌ててベットから這い出る。あたしの行動に釣られたように、オリジン、ニマ君、グレイシア、ノヴァがモゾモゾと動き出す。クリシュアはどこに? と思いながら室内を見回せば、クリシュアはソファーで横になっていた。


「良く寝てるね。良かった……」

『クリシュアもこちらでねればいーのによー』

「まぁ、まぁ、落ち着いてノヴァ。クリシュアはリーンの契約精霊なんだからこうなるのは当然でしょ?」

『……まぁ、白がいいならいいけどよー』

『主様、メイドが待って居る様じゃぞ?』

「あ、ありがとう。行ってくるね!」


 ソファーで丸くなり眠るクリシュアは、穏やかな寝息を立てている。それを起こさないよう小声で愚痴るノヴァ君と話した。


 肩に乗っているグレイシアの言葉に振り向けば、洗面所の入口でメアリーが待っているのが見える。その姿に慌ててそちらへ行き顔を洗い、歯を磨く。その他朝の行動を諸々を済ませ、朝食をとった。


 メアリーに連れられ着替えをする。まあたらしい制服に腕を通せば、懐かしい気持ちになった。と言ってもあたしが制服を着ていたのは、三年前なんだけどね。


 クリーム色の地布に赤いラインの入ったプリーツスカートは、この世界らしく脹脛までの長さ。それに合わせるのはグレーのシャツに、同じくクリーム色のベスト。ワンポイントと言うべきなのか、ボタンが金色なのがすごく気になるけど……。

 そのベスト上には、グレーとも黒ともつかない色合いのジャケットを羽織る。足元は、少しだけヒールのついたブーツだ。


 リーンならすごい似合うんだけど、あたしだと微妙だよね~。クルル様とイリュス様もきっと似合うんだろうなぁ~。


「まぁ、白様、良くお似合いですわ」

「うへへ、そうかな? 似合うかな? 変じゃない?」

「とてもお似合いですわ!」


 褒めてくれる出来るメイドさんたちに、上機嫌なあたしは何度も何度も同じ質問を繰り返した。久しぶりの学校でテンションが上がっていたからだろう。


 そうして時間ギリギリまで過ごし、ドレッサールームから出れば同じ色合いの制服を着たクルル様とイリュス様が。


「ハク、おはよう」

「く、くるるさま、しゅ、しゅてき!」


 爽やかに微笑み朝の挨拶をしてくれるクルル様の姿に、あたしは見惚れ、変な言葉遣いをしてしまう。


「ありがとう。ハクも実に良く似合っている。他の男が放っておかないかもしれないな」


 朝から甘い! 甘いよクルル様。でも、そこが良い。


「クルル様……朝から、婚約者殿を口説くのはどうかと……」

「く、口説いてはいないが……ハクの性格を考えるとつい心配になってしまってな」

「はぁ、そうですか?」


 イケメンが二人で会話を交わす姿に、あたしは気配を消し傍観者とかす。

 クリーム色の制服が、二人のイケメン度合いを引き立てていて、同じ制服を着ているはずなのに……全然違った雰囲気を醸し出していた。


 花に例えるなら、クルル様は朝露に濡れた姿で凛として立つアヤメで。イリュス様は、日の下で咲き誇るガーベラだ。


「クルル様もイリュス様も本当に素敵だよ~。すごく似合ってるよ~!」


 まあたらしい制服に身を包み、軽く前髪をかきあげる姿が本当にカッコ美しい!

 それに、イリュス様と二人で並んでいるその姿がまた……たまらん。あぁ、よだれ出そう。


 口の端の拭いながら二人を上から下まで嘗め回すように見ていたあたしに、クルル様たちが僅かに身を引いた。

 ちょ、そんな引かなくても……いいじゃん。我慢したもん、よだれ出してないもん。

 

 悲し気に目を伏せクルル様を見上げる。するとクルル様は「うっ、べ、別に……その……」と、しどろもどろになりながら両手を盛大に振った。


 その焦り方が、余計にあたしを傷つけてるよー。クルル様のばかぁぁぁ。あ、イリュス様があたしの心を読んで視線逸らした! て言うか確実に、クルル様に全ての責任を擦り付けてるよね? 流石、腹黒メガネ。どっかで聞いたようなフレーズだけど、まぁいいか。


 心の底から二人に悪態をついていたあたしは、真後ろからあがった声にビクっと肩を揺らした。


「どうかなさったのですか? お時間がありませんよ?」


 何時も聞いているメアリーさんの声だけどびびったぁ!


 ドキドキと早鐘を打つ心臓を抑え、ほっと息を吐く。

 チラっと視界の端でハッとした顔を見せたクルル様とイリュス様が、眉を下げてはぁ~っと安心したかのように小さく息を吐き出した。


 二人が顔を見合わせ頷き合う。

「では、いこうか」と言ったクルル様は当然のようにあたしに手を差し出してくれる。その手を取り、腕に添え部屋を抜けると馬車に乗り込んだ。

今週、金、土でまた更新しますー。

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