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クリシュア救出⑦

 クリシュアが語るリーンは、私が良く知っているヒロインとほぼ同じだった。純真無垢で、明るくて、溌剌としていて……。


『あの者たちに会ってからリーンは変わった』そう言ってクリシュアが顔を歪めたのは、リーンが聖女と言われた日の事を語りだした時だった。

 教会を訪れたリーンは、教会の奥に間で水鏡に手をかざした。水が鏡が側についていたクリシュアの力に反応して光ると聖女が現れたと周囲が騒いだそうだ。

 空から直ぐに、リーンは教会の個室を与えられる。リーン自身はまさか自分が聖女に選ばれるなんてと非常に戸惑っていたようだが、それも数日して落ち着いたという。

 その後、十日間ほど聖女としての教育言う名の何かが行われた。


『私はついていけなかったのだ。精霊が入る事の出来ない部屋で、リーンはほぼ日が昇ってから沈むまで毎日をその部屋で過ごしていた』

『精霊が入れぬ部屋じゃと?』

『あぁ、そうだ。何度も何度もリーンに伝えた。あの部屋は精霊を近づけない。精霊の力をもってしても入れない恐ろしい部屋だと。だが、リーンは大丈夫だと言って……そして、私を見なくなった』


 咎めるように聞いたグレイシアにクリシュアは頷き、寂し気に肩を落とす。


 聞いた限りで判断するならその部屋でリーンの人格に何かした? もしくは、精霊との契約を切られたと考えるのが妥当だろうけど、精霊と契約主の絆はゲームの中でも相当に深かったはずで、あのポーションを使わない限り人為的には解除できないはすだ。

 教会はリーンに何をさせたかったのかな? と言うか、正直な話、ゲームとは動きが違いすぎてもうあたしの記憶と会わな過ぎる。


「精霊殿はなんと?」


 クルル様の声に思考の渦に飲まれていたあたしはそちらを見た。


 そりゃ、クルル様たちだって心配になるよね。ニマ君もオリジンも、グレイシアもノヴァも皆難しい顔をしているもの。

 けど、身を乗り出すほどじゃないと思う。聞き耳を立てているクルル様たちの姿が可愛らしくて、ついくすくすと笑ってしまった。

 そんなあたしにジト目を向けたイリュス様が「白様……」と少しドスの利いた声を出す。その声に仕方ないと笑いを止めて、クリシュアの言葉を伝えた。


「――ってな状態らしいですよ~?」

「そうか……精霊様のお力を持ってしても判らぬことがあるのだな」

「教会の動きが怪しいのは間違いないのでしょうが、それよりも、リーン様がこの国の王子であるアレク様に近づいているのが気になりますね」

「アレクも愚かではない……はず?」

「……だと、良いのですが」

 

 言葉を濁す二人の会話を聞きあたしは、まぁ、あの態度なら仕方ないよね~と同意した。

 確かにゲーム内のアレクはイケメンで優秀だった。けど、この世界のアレクは確実にゲームよりも格下げされている。

 その根拠は、初めて本物に会った時のアレと悪役王女の件である。どちらもアレクや国王、王妃の考えなしな発言のせいで精霊たちが怒ったのだ。

 考える頭がないというよりは学習しないバカだろうけど……。


「それよりも、お三かた?」

「「「?」」」


 突然かけられた声に出来るメイドであるメアリーの方を向く。

 いい笑顔――笑っていない微笑みを湛えたメリア―は、ちらりとスカートの隠しから懐中時計を出し開くと此方へ見せた。


「現在、深夜二時を回っておりますが、明日から、学園ではないのですか?」

「「「!!」」」


 三人同時に顔を見合わせる。


「白、今日はとりあえず休むぞ。話は明日、学園で!」

「そうですね。流石に、初めての学園に初日から遅刻する訳にもまいりませんから、やすみましょう」

「はい! おやすみなさい!」


 頷く出来るメイドさんたちに気付かぬまま、話もそこそこに切り上げ二人が部屋を出て行った。あたしも、メリア―に促されるまま寝巻に着替えると早々にベットヘと潜り込んだ。



*******



 ハクが完全に意識を手放したのを確認して、我は人型を取ると側に座り夜空を見上げるクリシュアを呼んだ。


『クリシュア。そなたに聞いておきたいことがあるのだ』

『なんだ?』

『お前と契約主の契約はどうなっているのだ?』

『……』


 我の問いかけにクリシュアの表情が曇る。

 たったそれだけの事で、クリシュアの現状が理解できた。


『ハクを主と呼んだな?』

『……っ! それはっ』

『よいのだ。わかっている。無理にハクと契約せよと我は言うつもりもないし、ハク自身もそなたと契約しようなんぞとは思ってもおらぬはずだ』


 瞳を揺らすクリシュアに、我は諭すように言葉を紡ぐとその肩をそっと叩いた。

 精霊が、主人の命令で自結界を使う場合。その契約は、当然ながら破棄される。

 二人を繋ぐ契約の力を使い結界魔法を発動するための養分とするからだが、その代償として精霊は自らの命を賭して張った結界を継続させる。

 

 これまで生き残った精霊がいないため、正直我らもクリシュアがどう動くべきかがわからない。一度、クリシュアを精霊界に還すべきなのだろうが……これからの事を思えば、そう易々と還すと言えぬ。さてどうしたものか?

 

 我が真剣に悩む中、契約主のハクだけが静かに寝息を立てていた。


次から学園編~。

タイトルは商人を追います……ぐふっ

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