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クリシュア救出⑥

 合体が済んだスワープボックスは淡い水色に光っている。これで、本当に救えるのか不安だけどやるしかない! 


――白? 本当に大丈夫なのか? 私たちに出来る事はないか?


 クルル様の心配する声に、振り返って無理くり笑顔を作り頷く。

 クルル様の優しさが嬉しい! と言うか後でいっぱいイチャイチャしてもらおう! ぐへへ。

 やっぱり人は、楽しい事を想像するとやる気も上がると言うもので、気合十分なあたしは皆を見た。


――皆、本当にお願いね!

『そなたは守る』

『任せて~』

『フン。オレにできねーことはねーよ』

『お任せを!』


 精霊たちの返事に励まされるように、スワープボックスを持った手に力を込めるとクリシュアの水晶目掛け投げつけた。

 放物線をかきながらクルクル回ったスワープボックスが、クリシュアの顔の付近で水晶に当たる。それと同時に目を開けていられない程の光が室内を満たした。ピシ、パシッという音が上がる。その音に恐る恐る目を庇った両手を下ろせば、光は既に収まりクリシュアを包んでいた水晶に大きなヒビが幾つも入っていた。


『ハク、一気にクリシュアの結界が壊れるよう願いながら魔力を流せ!』


 オリジンの厳しい声音があたしを呼んだ。


――わかった!


 クリシュアを包む水晶に両手で触れて、お願い壊れて! と願いながら水晶が壊れるイメージを頭に思い描く。

 あたしのイメージがはっきりした途端、ピシっと上がった音がバリバリッという音に変わり、クリシュアを包んでいた水晶に大きな亀裂を作る。

 

 あれからどれぐらいの時間がたったのだろう。汗が額から滴り、鼻を伝って落ちポタポタと床に黒いシミを描く。

 クリシュアの抵抗があるのか中々割れない水晶に、もっと、もっとだ。そう自分に言い聞かせ、水晶が割れるイメージを強く思い描いた。

 ガラスの割れるパリンと言う音を上げ、クリシュアの周囲を包んでいた水晶が砕け散る。


『ハク!』

――白!


 貧血のようなめまいを覚え、立っているのもおぼつかないあたしはその場にどさりと座り込んだ。そんなあたしに慌てた様にオリジンとクルル様が駆け寄り支えてくれた。


 て、あたしよりもクリシュアは!

 霞む目を擦り、慌ててクリシュアの方を見ればクリシュアは、水晶に入っていた時と変わらずその場に浮いていた。ただし、閉じていた青い瞳は開いていてあたしの方を見ている。


『……』

「クリシュア、だよね? か、からだは大丈夫?」


 感情が見えない瞳のクリシュアにあたしは思わず聞いてしまう。

 ピクリと肩を揺らしたクリシュアが、徐に腕を伸ばしあたしの頬を撫でると静かに「……主よ」と呼びかけ涙をこぼした。

 クリシュアの涙の理由はわからないけれど、主と言う呼び名にリーンを思い浮かべたのだと瞬時に思ったあたしは彼の悲しみを包むように抱きしめる。


「ごめんね。リーンじゃなくてごめん。クリシュア」


 彼の求める主ではないあたしに出来るのはただ謝る事だけで、何度も何度もごめんと謝り続けた――。


 中ほどにあった月が、僅かに薄くなった頃合いで、クリシュアの涙が止まり、事情をオリジンたちが聞き出し終える。

 クリシュアがこの地に自結界を張った理由は、リーンの願いだったらしい。

 それとは別にもう一つ、理由があるようだがそれについては地下に行けばわかるとクリシュアは言う。


 そこで早速あたしたちは、クリシュアを伴って地下へと降りた。

 階段の終点には、黒づくめの厚い木造りの扉があり、まるで遺体安置所のようだと思った。その扉をクルル様とイリュス様に開けて貰い、中に入れば人が十人はは入れそうな鳥かごが十数個置かれていた。

 

「ナニコレ?」

『あの時と一緒だね~。でも、あの時と違ってここの精霊たちは元気だ~』

『そうだな。あの、人間の屋敷と同じだ。そうか、そなたが守っていたのはこの者たちか』

――やはりここが、あの者たちの根城か! 許せん!

――早速、手掛かりを探しましょう!


 オリジンとニマ君にの声に頷いたクリシュアが、魔法で鍵を作り出すと鳥かごを開ける。解放された精霊たちが自由に飛び回り、動き回る中ノヴァとグレイシアが離宮へとつながる扉を魔法で造り誘導した。


 クリシュアがここで何を守っていたのかは、オリジンやニマ君の発言でわかった。彼は自分の命を削り、捕えられた同族を守っていたのだ。

 リーンの願いが何だったのかはわからない。けど、クリシュアの優しさにあたしの心は人知れず満たされた。

 

 室内にいくつか置かれた机や棚を漁るクルル様たちは、何かを見つけたようで幾つかの書類を鞄にいれている。何があったのかは後で教えてくれるだろうし、精霊たちも全て解放できた。


『主様、そろそろ頃合いじゃ』

『ここに居るやつらは全部移動させたぜ』

――クルル様、そろそろ戻りましょう。

――あぁ。そうだな。


 グレイシアとノヴァの声にクルル様たちも終わったと頷き合う。

 そうして、私たちもクリシュアを連れて移動の扉を抜けるとその場を後にした。

 神殿に入る前までのリーンは、あたしの知ってるリーンと同じだったようだ。

また、来週よろしくお願いします!

(今年中に、完結するといいなー(妄想?))

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