クリシュア救出⑤
クルル様の部屋がある三階に登ったところで、イリュス様と出くわしたあたしたちは、そのままクルル様の部屋へと押し入った(誇張)。
あたしの方からクルル様の私室を尋ねるのは初めてのことで、あたしの姿を見たクルル様は一瞬きょどった。
そんなクルル様も可愛いな~、って思いながら勧められるままにソファーへ座る。
あたしの隣に座ってクルル様が、いつも以上に優しい顔であたしを見るからカーっと顔が熱くなった。
「それで、どうした? 白から私に会いにきてくれるとは、何かあったのか?」
「うん。あのね~クルル様とイリュス様にちょっと付き合って欲しい所があるの!」
あたしのお願いにクルル様とイリュス様は見つめる眼だけで、先を促す。二人に付き合って欲しいとお願いするのだから、ある程度は本当の事を話す。ただ最後だけ、二人には嘘をついた。これはあくまでも二人を守るためだから仕方ないと思って欲しい。
「――と言う訳で、クリシュアを助けたいと思ってるの」
「ふむ……。オリジン様たちも納得している事なんだな?」
「マジックアイテムを使うと言う事ですが、危険なことはないのですね?」
「うん。精霊たちは皆同意してくれてるよー。抜けだしたらまた、怒るでしょ? だから、今回は一緒に来て欲しいって思ったのー」
「わかった。あの教会の地下の事も気になるし向かおう」
「そうですね」
なんとか二人を騙しきったあたしは、クルル様たちとお茶をして昼前にはほくほく顔で部屋に戻る。
明日からヒロインのいる学園に行く事になるし、昼寝して夜動けるようにしよう~。今日のお昼はなんだろな~?
漏れ出る鼻歌に乗せて、おひるご飯の事を考えながらお義母様とクリスティアちゃんへの日記を書いた。相変わらずお義母様の日記は数ページにわたりビッシリと埋められていて、その内容は多岐にわたる。
例えば、最近流行のドレスだとか宝飾品だとか、舞踏会があるから帰ってこいだとか。受け入れられてるってことだから嬉しくはあるけど、長い!
そして、クリスティアちゃんは数行程度しか書いてくれない。今日は庭の薔薇が綺麗だったとか、家庭教師の勉強が厳しすぎるとか。彼女なりに日常の事を書いてくれている。
クリスティアちゃんは、元々筆不精らしく何を書けばいいかわからないと毎回日記の最後の行に書かれているから、何でもいいんだよ~と書いておく。
そうこうしている内にお昼になり、料理長自慢のローストビーフサンドが振る舞われた。オリジンたち用には、フルーツサンド。どっちも美味しかったのは言うまでもない!
*******
昼寝と称して寝たのはいいけど、ある意味で寝すぎたあたしはクルル様とイリュス様、オリジンたちと一緒に教会へ来ている。今回は、寝巻じゃないよ!
『では、ゆくのだ』
――見た目何でもない教会のようですがやはり、異様な感じですね。
――あぁ、ピリピリとした何かを感じはするが、私たちでは到底それが何かは解らないな。
『主様。あの男たちは既にいないようじゃ』
――うん。わかったー。じゃぁ皆、相談した通りにお願いね~。
クリシュアが自結界を張り、囚われていた部屋に入り昨日と同じようにクリシュアを捕えている水晶を呼び出す。と言っても、オリジンたちと一緒に近づいたら勝手に生えて来る訳だけど。
水晶が生えてきて、すぐに部屋の片隅でニマ君、ノヴァ、グレイシアがクルル様とイリュス様を囲むように守る陣形に着く。
あたしの横には大人オリジンが付き添っている。
『ハク、落ち着いてやるのだ。我がついている』
――うん。ありがとう。オリジン
オリジンの優しい言葉が意外だな~と思いながら、量頬を叩いて気合いを入れる。「よし!」と、一声発して、ポケットからスワープボックスと拾った雫型のピアス取り出しす。
が、ここで問題が起こる。スワープボックスには入れる場所がみあたらず、どうやって入れたらいいのか?
――ちょ、これ入れ方分かんないんだけど???
『ふむ。スワープボックスにピアスを近づけて、魔力を流すのだ』
――魔力を流す?? あたし魔法使ったことあるけど、無いよ?
魔力を流すと簡単に言うオリジンに、困惑するしかない。良く思い出してみてもあたしが、この世界へ来て魔力を自分の意思で使った記憶が無い。唯一、魔法を使ったとカウント出来るのはあのこっぱずかしいヒロインの魔法だけで……その他には一切ない。
魔力の使い方がわからないあたしに、オリジンは一言『願えばいいのだ』と言うと大丈夫と言わんばかりに頷いた。
え? それだけ? それが助言?! もっとこうさー。ほら、優しく魔力を身体に流して教えるとか無い訳? ねぇ、オリジン!!
『早くやるのだ』
――あぁ、はいはい。わかったってば……。
クリシュアのピアスの端っこを右手に、スワープボックスを左手に持ったあたしは両手を合わせ祈るように願った――どうか、クリシュアを救えますようにと。
なんて真面目に願ってみたけど、両手には何の変化もないように感じてチラっと隣のオリジンを見る。
『問題ないのだ。既に済んでいる』
何がっ! と突っ込みそうになりながら、包んだ両手を広げてみればスワープボックスしか持っていなかった。




