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クリシュア救出③

 バーオバを探すため手紙一つ置いて離宮を抜け出したあたしたちは、アリューの街中をそぞろ歩く。


『主様。探している占い師はどのようなところにいるかお分かりなのですか?』

「うん。大体は~」

『へ~。そのバーさん? の見た目はどういう感じなんだ?』

「赤紫のローブ着た小さい感じの人だよ~」


 ゲームで見たバーオバを思い出しながら、グレイシアとノヴァに答えたあたしは路地裏へと入り込む。バーオバの好む場所は、路地裏の暗がりだったり廃屋だったりで、危険だとは思うけど進むしかない。


 そう言えば、バーオバと最初に出会うのは学園側の森だったような? まずはそっちに行ってみるべきだったかなぁ?


『はくぅ~。この先変な匂いする~』


 ニマ君の鼻がいつも以上にヒクヒクと動いている。ニマ君の言う変な匂いがアルコールの匂いだとわかって、引き返すべきか悩んだあたしは、走り抜けるように急いで路地を通り抜けた。


「ここじゃないっぽいね。学園の方探してみよう」


 歩くのが遅いあたしに気を使ってくれたニマ君が、身体を二回りほど大きくすると『はくぅ、僕に乗って~』と言ってくれる。

 すごくありがたいけど……体重が気になる今日この頃なあたしは、ニマ君に乗る事を躊躇ってしまう。そんなあたしにニマ君は『早く~』と急かす。


 最近、お菓子とかお菓子とかご飯とかクルル様が甘やかすから食べ過ぎてるんだよね。体重増えてると思うし、重いとか言われたらどうしよう。ていうか、何故欲しい所に肉はつかないでお腹ばっかりにつくかなぁ~? 誰かいい方法知らないかなぁ~? ってそうじゃなくて、歩くの遅いし今日中にバーオバ探し出せるか微妙だし……ここは乗せて貰うべき?

 と、せめぎ合うあたしの心の葛藤を表に出さないようにしながら、しばし悩んだ――。


「うっ、お、重かったらごめんね」と謝りながらニマ君にまたがると彼は、あたしの体重を気にすることなくふわりと浮かびあがると走りはじめた。

 あたしたちの右をグレイシアが、左をノヴァが守るように追走する。


『どこに向かう~?』

「まずは、学園の森に行こうと思うから、あっちの方――西に向かってくれる?」

『わかった~』


 上空まで浮かび上がったニマ君に乗って、王都を見ると西側にある城壁側に広大な森があり、その中央に学園がポツンと立っていた。

 その森の広さに本当に探し出せるのか一瞬不安が頭をよぎる。それでも、時間は今日しかないと覚悟を決めて、あたしは森へ向かった。


 降り立った場所は、学園の更に西に当たる森の奥側。


 ゲームの時は、ここから少し北に向かったところにかなり大きな樹があってそこにバーオバが机といすを置いて占い屋を開いていたけど……。よく考えたら、こんなところにお客が来るのか疑問だよね~。って、あたしもそのお客さんか!


『む。主様、あれを!』


 グレシアの声に顔を上げる。少しだけ開けた場所に大きな機があり、その木の根元にポツンと座る赤紫のローブ。


「いたぁぁぁぁ!」

『うおっ、目立ちすぎだろ』

『あの人がそうなのぉ~?』


 思わず叫び指をさしたあたしは、バーオバを目指して走り寄る。

 後ろからノヴァとニマ君の声が追いかけて来たけど、今はそれどころじゃない。


「お~。こんなところまで客が来るとはのぅ。ふぉふぉふぉふぉ。今日は何が知りたいんじゃ?」


 目の前に立ったあたしを見上げたバーオバが、ゲームと同じ声で、同じセリフを口にする。机に両手をついたあたしは、逸る心を抑えて内容を纏めると相談を始めた。


「なるほどの~。そのクリシュアと言う精霊が、自結界で死にそうになっていると。ふむ……そうさのう」


 両腕を組み思案するバーオバにあたしは、とにかく何でもいいから解決できる案をくれと祈る。すると、バーオバは何かを思い出したように「そうじゃ! アレが使えるかのう」と言って自分のローブをまさぐった。


 バーオバが取り出したのはあたしの掌にすっぽりと収まってしまうような大きさの正十二面体の形をした銀色に輝く箱だった。


「お嬢さんの役に立つかどうかはわからんがの。これならその精霊を救えるかもしれんの」

「使い方、教えて」

「ふぉふぉふぉ。使い方は簡単じゃ。その精霊の力が宿った物をこの箱に入れて精霊を縛っている魔法陣に放り投げるだけじゃ」

「精霊の力が宿った物??」

「そうじゃのう。例えば、精霊自身の身に着けていたもの、髪、毛、などじゃな」


 うむむむ! クリシュアの持ち物なんて持ってるわけないじゃん! だって、あたしの精霊じゃないし! って、待って? アレ? あたし持ってるよね? 昨日教会で拾ったよね?

 

 バーオバの説明に一喜一憂しながら、あたしはある物を取り出した。それは、この世界に持ってきた唯一のものであり大切な思い出の品だ。


 この占い師? バーオバは、占いの対価としてめずらしい物を好む。対価を渡すのは一度きりで、そのたった一度である程度の好感度を稼げないとその後現れてくれなくなってしまうので、対価は慎重に選ばなければならなかった。

 まぁ、ゲーム時代は三択だった訳だけど……。


「バーオバ! ありがとう。えっと、代金なんだけど、これでいいかな?」

「ほう、めずらしい物を……これは、何と言う品物だろうねぇ~」

「スマホってやつだよ。あたしの世界では結構皆普通に持ってるもので、この世界では多分これ一個しかない」

「ひょひょひょ。わしにそんな貴重なものを差し出すか! 面白い、実に面白い娘じゃ」


 スマホを手に取り、眺めたバーオバは奇妙な笑い声をあげると愉快そうに微笑んだ。そして「また、何時でも来るがいい」と言い残し消えた。

また横っ飛びすいません!

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