クリシュア救出①
ひとりで来ようと思っていた教会に、オリジンたちと一緒に来たあたし。まぁ、パジャマなんですけどね。確実にこの時間に見られたら幽霊に間違われるか徘徊者ってところな訳です。
ま、そんなことは置いておいて、さっさと中に入ってしまおう。
「ちょっと中見てくるから、ここにいて?」
気楽にそう言ったあたしに、四人が四人とも難色を示すと言うか羽交い絞め? されました。
「ちょ、何? なにすんのさ!」
『ハク、何を気軽に行こうとしているのだ!』
『ちょっと、流石に僕でもそれはお勧めしないよぅ~』
『主様。もう少し落ち着いて行かれるが宜しかろうて』
『ばっっかお前、何普通に行こうとしてんだ! あぶねーだろーが!』
「え、だってさー。流石にこの時間に人はいないでしょ? だから、大丈夫かな~って」
エヘヘと頬を掻きながら思ったことを言えば、四人ともジトっとした目であたしを見る。けど、実際問題こんな夜中にこんな教会に来たがる方がおかしいでしょ? 流石に人は住んでないと思うし……住んでたらその時は謝ればいいだけだもん。多分……。
「まぁ、とりあえずこのままここに居ても不審者と間違われるだけだから、とにかく中に行こう。人の気配ぐらいはオリジンたちもわかるんでしょ?」
首を傾げてあざとさを出しつつオリジンの腕を引っ張れば、オリジンは『はぁ……こういう者だったな』と諦めた表情をしながら、歩き始めた。
ゾロゾロと五人で屋根の壊れた教会に入る。中は見る限り礼拝堂らしき場所と教壇がある位で、他にめぼしい物はない。それでも、何かないかと瞳を凝らして周囲を探れば、左側の天井に据え付けられたステンドグラスのようなものの間に煌めく何かを見つけた。
「ねぇ、オリジン。ちょっと抱っこしてあそこまで連れてって」
『ふむ。わかったのだ』
大人オリジンがあたしを抱えてふわりと浮かびあがる。そのまま指をさして煌めいた物があった場所へと誘った。青色、水色、白、群青色の四色で造られたステンドグラスには、見目麗しい青髪の男の人がかかている。
どっかで見た記憶あるような……ないような? まぁ、いいか。今はまず気になる物の回収優先だよね~。
記憶の底にある何かに一瞬だけ気を取られるも、そんなこと直ぐに忘れて光った物の方を優先させる。
ステンドグラスの間から拾い上げたそれは、青い半透明の宝石が雫の形をしたフック型のピアスだった。
このピアスの形は、観たことあるんだけど……どこでだっけ? 思い出せ……。消去法で、絶対違うと言えるのは、まずヒロイン。ヒロインの場合、好きな相手のピアスを着けるからこれは絶対にない。そして、アレクも色的にありえない。クルル様は、ついさっき見たから違うでしょ。イリュス様も違う。となると、青……青……。
『おーい。ハク、何があったんだ?』と聞くノヴァの声に、思考の渦に飲まれていたあたしはハッと顔を上げる。そして、このピアスが「……クリシュアのだ」と思い至った。
その時――「まったく、聖女様にも困ったもんだ」と男性の野太い声が誰かと会話する声が、奥の扉から聞こえた。突然の事に驚き、あたしは声のした右端の扉へ勢いよく顔を向けた。
『主様。声を出さぬよう』
グレイシアの女性らしく優しい声があたしに囁く。口元を抑えて頷いたあたしを抱き上げたままだったオリジンが、再び浮かび上がる。他の皆も自力でうけるらしくふわふわと上空へとあがった。
そして、数秒後今まさにあたしが居た場所を、腰に剣を差した熊みたいな男の人たちが数名通り過ぎる。そんな男たちを警戒するように精霊たちの視線が追っていた。
男たちが教会の外へ姿を消して、数分後。
静かに地面に足を付けたあたしたちは、頷き合って男たちが出てきた場所へ歩く。片側が壊れた軋む木戸を音を立てないよう気を付けながら開ければ、そこには三畳ほどの小さな小部屋と地下に続く階段が設置されていた。
『グレイシア。そなたが観えなかったのもここか?』
『そうじゃ』
『ん~。やっぱオレにも観えねーなぁ』
『僕も無理みたい~』
オリジンの問いにグレイシアは端的に答える。そこへ、顔を顰めていたノヴァとニマ君がやはり自分たちにも無理だと言う。
うーん。元々観えないあたしからすれば、別になんもなさそうなんだけど? どうしよう。このまま進んでいいのかな?
ま、一歩だけなら問題ないでしょ。なんて事を思いながらあたしは一歩を踏み出した。その途端、床から何重にも書かれた魔法陣が蛍光色にも似た水色の光をあげて、鼓動を打つように発光を繰り返す。
そして、徐々に発光する光が眩くなると魔法陣の中央部分から、小さな魔法陣と一緒に透明なクリスタルのようなものがゆっくりと持ち上がる。
前後左右三百六十度を魔法陣で囲まれたクリスタルには、歪な赤黒い楔が幾重にも打ち込まれていた。
『なっ! あれは、水のではないか!』
『何という……』
『じょーだんじゃねーぞ!? この国の奴らは精霊を何だと思っていやがる!』
『ひどい。こんなのってないよぅ』
驚き怒りを露わにする精霊たちが 出てきたクリスタルの中に閉じ込められた仲間を見て叫んだ。




