実態調査、ポーション屋④
クルル様たちには何も言わず、近くに止めてあった馬車を回して貰った。馬車に乗り込んで、すぐに二人にはお店に神官らしき人が入った事を伝えようと思ったけど、この二人を止めるための言い訳が必要な事を思い出して慌てて言い訳を考えた。
馬車のカーテンを閉じて、薄暗くなった室内で二人に店に来客があった事を伝える。話を聞き終えるや否や降りようとするイリュス様の腕を掴んで待ったをかけつつ、あたしなりに考えた言い訳をした。
「ちょっと聞いて下さい。今ここで、神殿関係者がこの店に居るって言うのは突き止めちゃだめです!」
「何故だ?」
「何故ですか?」
「いいですか? 良く思い出して下さい。精霊を捕まえてた人達を誑かした犯人が使ってた馬車は、あの神殿に止まってた。更には、聖女って言う単語も飛び出している。それを踏まえて考えれば、確実に神殿も関係あるんじゃないですかね?」
「……確かに白の言う事も一理ある」
「ぐっ、た、たしかに正論ですね」
「だから今、ここで行動を起こして、その人たちが逃げるなり証拠隠滅したりしたら、事件の捜査が進まなくなりますよね?」
「……っ、正論です。正論ですが、何故でしょうか、白様に言われると素直にうなずけないのは……」
と言った感じに、無理矢理こじつけた言い訳を並べ立てたあたしにイリュス様がいやそうな顔で言葉に詰まり頭を抱える。そんなイリュス様の肩を叩き励ましたらしいクルル様もあたしの言い訳に真剣な表情で頷いてくれた。
そんな二人を尻目にあたしは、馬車につけられたカーテンからこっそり店の入り口を覗き見る。
なんかこれって探偵みたいだよね~。ふふっ。あ! そうだ。リーンかどうかわかるんじゃないかな?
ふいに浮かんだ妙案に、いい事を思いついたとばかりにニマ君へ声をかける。
ダメで元々だしいいよね~。
ニマ君に聞きたいことがあったんだけど今平気?
『なぁにぃ~?』
ニマ君さ、店の中の会話って聞こえてる?
『うん。きこえるよ~』
なら、あたしとクルル様たちにもその会話聞かせてくれないかな?
『いいよ~。オリジーン。つないで~』
ニマ君の呼びかけに、小さいな鼻提灯を上げていたオリジンがパチっと目を開けた。そうして、数秒後――店内のやり取りが脳内に響き始める。驚いたように顔を上げたクルル様とイリュス様にニッコリ笑って頷く。たったそれだけの仕草で二人は頭に響く会話が何か分かったようだ。
――これを。
――あら~~~、貴方毎週買いに来てくれるわよねぇ~~~。あたしに惚れたのかしらぁ~~~?
――…………え、えぇ。それでこれを売っていただけますか?
――フェーリクル十本、ラブリーが三本、ピュラティーが十五本ね~~~。全部で七十万ギンよ~~~。
――ではこれで。
――毎度ありぃ~~~。
扉に取り付けられた鐘の音がカランと鳴りパタンと閉まった。慌てて扉の方へ視線を向けたあたしが見たのは、ローブの隙間から僅かに見えた茶色の髪。
――あの客……いや、あたしには関係ないわね~~~。
男性ボイスで何かを考え言いかけたカトレアさんが、振り切るようにそう言うと聞こえていた店内の音が途切れた。
盗み聞きしていたために静まり返る車内で、クルル様も立ち上がりあたしの上から、イリュス様もあたしと同様に座った状態でカーテンの隙間から、ローブの人を見ていたようだ。
「間違いなく神殿の者のようですね」
「あぁ、そうだな。だが、何故神殿の者がこのような場所に来る?」
「精霊捕まえるためじゃないですか~?」
「と言うと?」
「基本精霊って、人に見えないじゃないですか。オリジンたちもあたし以外に見えなくなること多いし。それを捕まえるためには、見える必要がありますよね? それを補うポーションは、さっきクルル様も飲んだでしょう?」
「そうだな」
「ただ、神殿の人間がとうしてこのポーション屋を知ってるかって言う謎は残りますけどね……」
「それこそ、聖女が教えたのでは?」
「うーん……。このポーション屋って、場所は知っていたとしても契約精霊が居ないと見えないし、扉すら開けれないんですよね~」
イリュス様とクルル様と話しながら背中を向けて歩いていくローブの人を繁々と見つめる。会話の隙間で、オリジンたちにローブの人の側に精霊が居ないか問い合わせてみたけど、答えは居ないだった。
ローブの背中に記された百合と十字は間違いなく聖女の印ってことは、やっぱりリーン関係で間違いはないんだろうけど……。契約精霊のいない神殿の神官が一人で買いに来れている理由がわからない。あたしが何かを見落としてる? やっぱり初めから一度思い出し直してみる方がいいかも。行き当たりばったりで記憶が戻る感じだから繋がらないのかもしれないし。
カチッと噛み合わない状況にフル回転で記憶を思い出してみるも、やっぱりプレイヤーとしてゲームをしていた中で神殿の神官がポーションを買ってきてくれた記憶など一切ない。
なら、どうして? と再び記憶を呼び起こそうとしたところで「とりあえず、ここで考えても始まらないだろう」と言うクルル様の指示で、馬車はあの廃れた教会へと走りだした。
次から商人おいますー(二度目ですが、今回は本当に追います!
また来週よろしくお願いします。




