精霊救出作戦 ⑪
目覚めたらまたもやベットの上で、心配そうに覗き込む顔が四つもあった。その顔にへらっと笑ったあたしは、身体を起こした。
「白、体調がすぐれないときは早めに言ってくれ」
『クルルの言う通りにゃにょだ』
『もう、突然身体が透明になっていくからびっくりしたよぅ~!』
え? ニマ君……今なんて言った? あたしの身体が透けた……え? あたし幽体離脱したの? おばあちゃんに呼ばれちゃったかな……なんていうのは冗談で、身体は丈夫なはずなんだけど。
オリジンやニマ君が言うには、突然あたしの気配が薄くなったらしい。それであたしを見たら、身体が透けてたそうだ。そこで慌てたクルル様があたしを抱きしめたら、元に戻ったみたい。
話を聞き終えたあたしは、なんとなく怖くて両手で自分の身体を抱きしめた。
「白?」
いつにも増して優しい声音のクルル様に名を呼ばれ、縋るように見上げる。
僅かに微笑みを浮かべたクルル様がベットの端に座ると肩を抱くようにしてポンポンしてくれた。
「大丈夫だ。私たちがついている。白は何も心配しなくていい」
「そうですとも、白様は今まで通り笑っていて下さい」
『ハクは笑顔が可愛いからね~♪』
『当然だっ!』
クルル様のありがとう。イリュス様はどこか皮肉に聞こえる気がするけど、気にしないありがとう。ニマ君可愛いって、あたしこの世界に来て初めて言われたかも……。そして、オリジンが何故当然のように威張りくさっているのか……?
『それで、貴族はどうなりそうなのだ?』
あれ、もう話し戻しちゃうの? あたしの心配もう終わりなんだね……うん、知ってた。
切り替えるように、カザス夫人の実家の話に戻したオリジンに心の中でブー垂れる。ぶー垂れた所で誰も何も言ってはくれないんだけどね。
「それなのですが、ベルドオーセ公爵に取引を持ち掛けた相手、がアリュスート国の商人であるようなのです」
『ふむ』
「我が国内であれば捕えることは容易なのですが――」
『――いにゃいにょか』
「はい。国内の詰め所や要所に問い合わせを致しましたが、現状何処にもそれらしき商人は居ないようです」
難しい顔で報告するのはイリュス様で、それを聞いていたオリジンもまた可愛い顔なのに少し笑え…………難しい顔をしていた。
『この国で関わった者たちは、どうするにょだ?』
「それについてはしかるべく措置を取るとお約束いたします」
「父上――陛下にも相談の上、きっちりと処罰させていただきますのでご安心下さい」
カザス夫人とその家族が今後どうなるのか? その事を気にしていたあたしの代わりに、オリジンが聞いてくれる。その答えはハッキリとはしないものの、処罰は確実のようだ。
『ねぇねぇ、はくぅ~』
「ん? どうしたの?」
『あのね~、撫でて~♪』
顔をスリスリ膝に寄せるニマ君が甘えたように、撫でることを要求して来る。そんな彼にクスっと笑って頭を撫でてあげる。そんなニマ君を見ながら日本の警察犬の事を思い出した。良くドラマとか特番でやってるアレを――。
そう言えば、犬って鼻が良いから商人の匂い辿ったり出来ないのかな? まぁ、ニマ君元は精霊だけど……。
『ん~? 出来るよ~♪ ハクは探して欲しいの~?』
あたしの思考を読んだニマ君が、出来ると言う返事をする。それに「え? マジで!」と驚いた。あぁ、そう言えば契約した精霊には思考が筒抜けになるんだった。オリジンの時で懲りていたはずなのに、同じことを繰り返してしまった……タハハ。
『にゃるほどにゃ! ニマに協力してもらうにょだにゃ!』
「何かいい案が?」
小さな拳を掌に軽く打ち付けたオリジンが、いい案だと言わんばかりにウンウン頷く。イリュス様とクルル様が同時に顔をあげ、どこか期待した眼差しをオリジンに向けた。
それからはあっという間だった。実際あたしが驚いていたのもあるけれど、話を詰め始めて一時間もしない内にその内容がどんどん決まっていった。
まずは、ニマ君自身がベルドオーセ公爵家の匂いを覚える。で、彼の眷属的な精霊達を国内全てに飛ばし近いにおいの人を探す。
実はニマ君結構な上位の精霊だったらしい。まぁ、オリジン呼び捨てにしてたし……そうかな? とは思ってたけど。
それっぽい人物がいたらオリジンとニマ君、クルル様達で魔法を使いその場所に向かい捕まえる。ってな事になった訳だけど……。
国内のしかも王宮内で魔法を発動するには、お義父様の許可がいるそうだ。それについては早速イリュス様が退室していった。「これで父上の方は大丈夫だろう」とクルル様は言う。
「クルル様、オリジン。もしさ、商人がこの国じゃなくてアリュスート国の方に居たらどうするの?」
不意に浮かんだ考えをそのまま口に出してみる。
すると既にオリジンの中では答えが出ていたのかあっさりと『行くだけにゃのだ』と返ってきた。一方で、クルル様は顎に手を当て何事か考えているようだった。
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