商人を追って①
商人の痕跡をクルル様達が追い始めて十日が過ぎた。相変わらず朝か夕方には顔を出してくれるけど、二人とも相当疲れが溜まっているようで顔面偏差値が著しく下がっている。
「お疲れ様です、二人とも、大丈夫ですか?」
少しあざとく首を傾げたあたしに、疲れた笑顔で「あぁ、大丈夫だ」と答えてくれる枢様。目の下の隈が凄いんですけど、本当に大丈夫なのだろうか……不安だ。
『それで、どうにゃにょだ?』
小人オリジンの問いかけに、イリュス様が無言のまま首を横に振る。
『そうか……』
「既に国外へ出ている可能性が高いと思われます」
『どうするの~?』
「それなんですが……父上と相談してからになりますが、留学を前倒しにしようかと思っています」
えぇ! 留学を前倒し……!?
予定外のクルル様の発言にあたしはその場で固まった。
確かにゲーム内で、クルル様の留学は精霊関連を調べると言う名目だったけど……今回の事で時期が早まったと考えるべきなのかな?
固まるあたしに気付かず、クルル様とイリュス様、オリジンとニマ君が話を続ける。
イリュス様達の調べで、商人はどうやら既に国境を越えアリュスート国へ帰国しているらしく、強制的に連れ出された精霊達もアリュスート国へいるのではないかと言う事だった。
誰かが見たわけじゃないみたいだし、本当の所はわからないけど。ただ、アリュスート国にある星協会が関わってるのは間違いない。ゲーム知識だし、敢えて断言はしないけど……。
不思議な顔をしてあたしを見るオリジンとニマ君に、にっこりと笑って見せる。すると二人同時に、右に傾げていた首を左に傾げなおすと言う新技を披露した。
名にアレヤバイ、マジでかわいい!
可愛さにつられてニマ君をわしゃわしゃと撫で、オリジンのほっぺをツンツン優しく突いた。どこか嬉しそうに目を細めた二人を更に撫でようとしたところで、クルル様達が引き攣った顔でストップをかける。
「続きを話してもいいか?」
「白様、少しだけ落ち着きましょう?」
あ、話し合いの途中だった。つい可愛くてデレデレになってしまった……。クルル様もイリュス様もそんな生暖かい視線、向けなくても……いいと思います。
なんとなく気まずさを感じ「……すみません」と一言謝った。
「ぶっ、べ、別には、白様が謝る必要なありませんよ」
「くっくく、そうだな。白、楽しかったか?」
笑いたければ笑えばいいのになんでそんな遠慮するのさ! クルル様に至っては、子ども扱い。
あたしはもう十分大人ですぅ~! と言う意味合いを込め、ぷぅっとほっぺを膨らませニマ君のモフモフに顔を埋めた。
『わーい。ハクもっと撫で撫でしてぇ~』
状況は見ていただろうに嬉しそうな声音のニマ君は、尻尾をこれでもかと振り喜びを露わにする。
やっぱりニマ君は素直で可愛い! それに比べて……。
チラッとクルル様たちの方へ視線を向ければ、クルル様とばっちり視線が合った。ふっと表情を崩すクルル様の顔が、今まで以上にイケメン過ぎて見惚れてしまう。
見つめ合う事数秒――。目元を隠すかのように手を当てたクルル様の耳がほんのり赤くなって視線を逸らされた。
「クルル様、照れました?」
最大限の笑顔を顔に乗せ、敢えてクルル様の膝に両手を乗せ顔を見上げるようにしながらさっきの仕返しをする。
するとクルル様は、顔を真っ赤に染めながら顔を背けた。
そんなあたし達の甘い時間ををぶった切るようにイリュス様が「はぁ、話を続けてもよろしいですか?」とあきれた表情で話しの続きを話し始めた。
イリュス様の話の内容は、一応あたしにも知っておいて欲しい事らしい。と言っても、結局はお義父様の許可がないと意味がないっぽいけど……。
「えっと、要はオリジン達の協力が必要だから、仕方なくあたしも一緒に留学するって事ですか~?」
「仕方なくと言う訳ではないのですが、まぁ、ついで……ん"っ、失礼しました」
本音駄々洩れだよイリュス様……。最近黒い部分がやたら目立つよ?
「元々、私の留学には白も同行させるよう手はずを整えていたのだ」
「クルル様の仰る通りです。ですから、白様もその様にお願いしますね?」
うわー。クルル様に便乗したよこの腹黒メン!
『僕も一緒にいけるの~?』
『まぁ、我らが協力すればスグに解決するはずにゃにょだ』
「アリュスート国ねぇ……」
ウキウキなニマ君とふんぞり返る小人オリジンの言葉を右から左へ流しつつ、あたしはゲーム内の内容を思い出す。
時期的にやっぱり早い気がする。ヒロインが聖女の選定を受けるのに合わせて、クルル様は留学するはずだった。けど、イレギュラーなあたしがいる事でゲームのストーリーが早く進んでいるような……? うーん、やっぱり考えてもわからない!
「白、どうかしたか? アリュスート国へ行く事が嫌なら、私だけでも構わないんだぞ?」
頭を撫で撫でしながらクルル様が不安そうな表情をする。それに対し考えごとをしていたあたしは、慌てて「大丈夫。絶対一緒に行く」と伝えたのだった。
更新が遅くなり申し訳ありません。




