入り混じる感情⑤
クリスティアちゃんの事が気になって、ベットにはいっても眠れずにいるあたしを気遣ったメアリーさんが例の痛み止めを持ってくる。
それを断固拒否して、布団にくるまった。
けれど……やっぱりどうしても気になる。
あの時のクリスティアちゃんは、本当に寂しそうな目をしていたし……やってしまったと言う表情をしていた。
確かに怪我をさせられて、痛かったし彼女と会うのは怖いと言う思いもあるけど……でも、本当に相手を傷つける人はあんな風に痛ましいと言う表情をしない。
それは、学校で嫌ってぐらい味わった事しね。
うーん。やっぱり偽善者って言われるかもしれないけど、仲良く出来るなら仲良くしたい。
オリジンは凄く怒ってたけど……ん~。日本のお菓子的な何かを与えておけば多分なんとかなるはず!
後は、クルル様だけど……。クルル様はどう思ったのかな? 怒ってるって言うよりあの時の眼は悲しそうだった。
妹って言ってたし、多分それなりの情はあるはずなんだよ!
「だめ! やっぱりこのままじゃだめだ!」
ガバっと上半身を起こしベットから降りようとした矢先、自分の足に未だ力が入らないことを忘れていたあたしは、そのままつんのめるようにしてドザっと言う大きな音を立てて顔から落ちた。
「いっ――!」
涙目になりながら必死に叫び声を抑え顔をあげた。
ここでばれては元も子もない。どうにかしてばれないようにクリスティアちゃんに会わなきゃ!
その一心で、虫のように床を這う。
ふぅー。漸く扉についた! ここを開ければ、廊下に出て……クリスティアちゃんの部屋ってどこだっけ? ん? あたし、そう言えば知らないかも! まぁでも、手当たり次第に行けばその内分かるよね。
なんて感じで、生まれたての小鹿よろしくプルプルする足で扉の持ち手を支えに立ち上がった。
「ふぅー。ふぅー」
荒い呼吸を整えるため深呼吸を何回か繰り返し、いざ! そう気合を入れて鍵を開けて静かに扉を押す。
空いた扉から、廊下に行こうと足をゆっくり一歩出した――
「何をしている!」
「――っ! ひっ」
突然の声に、ビクッと全身が震え足が上手く動かず後ろへひっくり返えってしまう。
そんなあたしへツカツカと歩み寄る人影。そのまま抱き起こし、寝室へと運びこんだ。
淡く光るランプが灯り、ベットに寝かしつけられたあたしはその相手がオリジンである事を知った。
び、びびびびびっ、びびったぁ! マジで、お化けかと思ったじゃんばかぁ! つか、オリジン激オコ?
「で、ハク、何をしていたのだ?」
「……ちょ、ちょっと散歩に?」
「こんな夜更けにか?」
「目が覚めちゃったんだもん!」
「寝ていなかったではないか!」
「そ、それは、その……」
「どうせ、クリスティアの元へ行こうとしたのだろう?」
「くっ!」
むぅ! オリジンには全部筒抜けだからなぁ……正直に言った所で、ダメって言うだろうし、う~ん。これは困った。
長いサイドの髪を掻き上げたオリジンが、一つ息を大きく吐き出す。
そして、徐にあたしの瞳を覗き込む。
見た目はこんなにイケメンなのに……本当に勿体ない。これもスチル的な奴なの? あぁ、眼福。
「やはり……クリスティアに会いに行こうとしたのだな?」
「も、も、黙秘権を行使します!」
「もくひけん? 何なのだそれは? そんな事よりも、クリスティアに会う事は許さない。またそなたが傷つけられるようなことになったらどうするのだ!」
「それはないよ。だってクリスティアちゃん凄く後悔してたもん。それに、あたしがクリスティアちゃんと話がしたいの。勿論オリジンがあたしの心配をしてくれてるのは分かるよ? でもね、あの子は多分だけど……オリジンと出会う前のあたしと一緒なんだと思う」
「そなたとは似ても似つかぬではないか!」
「確かに見た目とか性格は違うけどね……」
そう言って、あたしはあのトラウマの原因をオリジンに話した。それを聞いたオリジンはただ一言「人とはなんと愚かな!」と言っていた。
「――だから、あの子とちゃんと話したいの! あたしだって、あんな痛い思いするのは嫌だからさ。怪我しないようにオリジンが守ってよ。契約精霊でしょ?」
その後しばらく、ベットの上に座って考え込むような仕草をしていたオリジンが、ハッと顔を上げた。
その顔はどこか誇らしげで……。
「ふむ。良かろう! この生命を司るオリジンがハクを守ってやろう!」
「ふふっ、偉そう」
「何を言うか、我は偉いのだ」
「あぁ、うん。そうだね」
軽く会話を交わしオリジンはあたしに「動くな」と言うとあたしの額へ唇を落とした。
ビックリして瞼をこれでもかと見開いたあたしはそのまま固まる。
けれど、額に添えられた唇の感覚は一切なく、暖かい何かが流れ込んでくるような? ポカポカした陽だまりの中にいるような感覚に、そのまま意識を手放した。
「そなたを守る魔法だ……これで……はない」
何? なんていったの……オリジン。
意識が途絶える間際、オリジンの声が聞こえた気がした――。




