入り混じる感情①
あの謎の会話がされてから二週間。
あの日から少しだけ変わった事があるとすれば、可愛くないオリジンが毎日おでこをくっつけるようになった事。
クルル様達とは、数日に一度の頻度で顔を合わせる。けど、あたしに事情の説明なんかしてくれない。
そこで、腹を立てたあたしは何かお願いされても嫌だと一度は言おうと決意した。
惚れた弱みで、最終的にはさせられるだろうけど……事情の説明ぐらいしてくれていいじゃん!! って思った。
それと日替わりで、義理母含め夫人達にも顔を合わせるようになった。
夫人達の性格は本当に、根性が曲がっていると言うかなんと言うか……。
会う度に皮肉を言う人も居れば、厭味を言う人もお茶をしながらダメ出しする人もいる。
王妃様に限って言えば……着せ替え人形張りにドレスを毎回色々着せられるんだけど……。
そんな感じで毎日を過ごしていたあたしはついにこの日を迎えた。
そうドリルさんことリーンさんが、話題にしていた例の王妃様主催のお茶会の日だ。
早朝から、お風呂エステなんかを済ませる。
この日の為に作られた薄桃の色の豪華なドレスを着せられ、髪にはリボン? を一緒に編み込み結われた。
アクセサリーは重い! と思うほど大ぶりな物をつけられ、クルル様の瞳の色? らしいけど……。
準備が出来た頃合いを見計らいお迎えのメイドさんが姿を現す。
さぁ、いざ出陣だ。
なんて気合いが入る訳もなく、後ろ髪引かれる思いで部屋を後にする。
ぶっちゃけ、ここまで要してくれたメアリーたちには感謝している。でも、あたしは行きたくない!!
望んで人前に出るような……そんな性格じゃないよぅ。
何度も後ろを振り返るあたしに、メアリーは苦笑いしながら
「白様……笑顔ですよ。何を言われても笑って居て下さいね?」
そう優しく言ってくれる。
はぁ、胃が痛い。もう、帰りたい。
肩に乗る可愛いオリジンに癒されながら、なんとかお迎えのメイドさんについていく。
王妃様専用の庭園で行われる今日のお茶会は、国の与えた爵位で伯爵以上の女性が参加する。そう、お義母様が言っていた……。
お茶会自体初めてなのに……そのお茶会のハードルが高い! 無理、そう何度も言ったのに、誰にもあたしの思いは伝わらなかった。
『ハク??』
な、なに? お、おりじん……。
『緊張し過ぎにゃにょだ。おちつくにょだ!』
む、むむむむむ! 無理!
『大丈夫にゃにょだ! 心の声は聞こえるようにしてある。心配はいらにゃいにょだ』
ちょ! それ余計な事! 聞きたくないそんなのぉぉぉぉ!
上機嫌なオリジンはどうやら、人の心の声をあたしに聞かせてくれるらしい。
マジで要らない。どうせ、蔑みの声しか聞こえないんだから……いらんわあああああああ。
そんなあたしの心の叫びを余所に、案内役のメイドさんは進む。
せめて、メアリーが居てくれれば……。
はぁ~。もうやだ。
あたしの気持ちを理解してくれる人がいない。そう思い諦めた所で、廊下を抜け建物の外に出る。
するとそこには、煌びやかな沢山の人・人・人。
人の間に、テーブルがあり立食パーティーさながらな様子だった。
マジで帰りたいです。誰か……今すぐ、あたしを気絶させて……。
丈夫な身体が恨めしい。
気絶するどころか、あたしのお腹は元気に鳴った。
参加者の会話でその音は、無事かき消されたものの周囲の人達には聞こえたようでこちらをチラチラ見ている。
沢山の人の間を抜けて、お義母さまの元へ向かう。
目立つよう一段上に作られたテーブル席に目指すその人は居た。
落ち着いた紫色生地に、白のレースをあしらったドレスを着たその人は、あたしの姿を見つけると微笑みを深くする。
その笑みが何故か今は恐ろしい。
「王妃様。白様をお連れいたしました」
「ありがとう、ユリア」
「では、失礼いたします。
他にご用がありましたら、側に居りますのでお申し付けください」
「えぇ」
お義母様の元まで案内してくれたメイドさんが下がり、あたしもまた軽く会釈する。
「こんにちわ。ほ、ほんじつはおひがらもよく……」
「ふふっ。さぁ白ちゃん、こっちに座って!」
どこぞの、結婚式の挨拶よろしく言葉選びを誤ったあたしに対し、お義母さまは、自分の隣の椅子に座れと言う。いや、横に クリスティアちゃんもいるし……。
マジで嫌だよ? そこ、凄い目立つよね? 目立ちまくりだよね? やだ、帰りたい!
なんて事を言えるはずもなく……ソロソロと椅子へ向かい座った。
周囲が怖くて見れない! と言うか、もうさっきからずーっと周囲の声が聞こえますよ!
「何者なのあの子?」「見ない顔ね」「ちょっと、王妃様とあんなみすぼらしい子が……」「貧相な身体付き」などなど、皆さま色々と思っていらっしゃるようだ。
今ココで、土砂降りにならないかなぁ~。
そう思って見上げた空は、雲ひとつない快晴!
あぁ、太陽が……太陽が恨めしい!
あたしが席につくと、いつの間に差し出された紅茶のカップを手に取ろうとしたその時――。
立ち上がったお義母様が、挨拶を始める。
「皆さま。本日はお茶会に起こし頂きありがとう。
今日は、皆さまにわたくしの新しい娘をご紹介したいと思いましたの」
そう言ってあたしの方をみるお義母様。
するとお義母様の心のお声が、さぁ~立ってはくちゃん! 自慢させて! そう言っていた……。
どこか遠くの緑を見るかのように顔をあげ立ち上がったあたしの腰にお義母様が手を回す。
「この子が、わたくしの愛する息子であり、現王太子ことクルル・リシュカーナ・ファン・ヒスタリカの婚約者になりました。
ハク・アマチですわ。
皆様にご紹介出来る日を楽しみにしていましたの!」
声高にあたしを紹介したお義母さまは、本当に嬉しそうに微笑んでいた。
足を運んでいただきありがとうございます!




