お妃修行、敢行中⑨
クルル様の思考を読み間違えつつ、立ち上がったあたしは彼の手を取り引き攣った笑いを浮かべる。
「彼女が、私の婚約者であり精霊に愛された娘でもある。
ハク・アマチです。
先ほど、彼女が許可も得ず先にお茶を始めたことに関しては、彼女を守護する精霊様のご意思であると申し開きしておきます」
「オハツニオメニカカリマス、タダイマ、ゴショウカイニアズカリマシタ。ハク・アマチデス」
『ハク。この人族たちには気をつけた方がよいにょだ』
ん~。どういうこと?
可愛い見た目の癖に、ピリピリした感じでオリジンが突然そんな事を言い出した。
癖はありそうだなとは思うけど、別に悪い人達には見えないよ?
『こやつらの腹にょにゃかを聞いてみると良いにょだ』
そう言ってオリジンは頭の上乗っている葉っぱを一枚取ると、聞き取れない言葉を紡いだ。
葉っぱから生まれた淡い光が、あたしの足元から包み込むようにクルクルと螺旋状に回り額の所へスポッと入り込む。
ちょ! 何か入った! なんか!!
なんて思っていたあたしにカザス夫人がにこやかにほほ笑みを浮かべ座るように促した。
「さぁ、白さんお座りになって、皆楽しみにしていたのですよ」
(どんな変人かと思っていたら、案外普通なのね~)
は? 何今の声!!
『腹の中の声にゃにょだ。
本心を包み隠し、虚言を重ねるこ奴らの本性を見るといいにょだ!』
ご立腹気味のオリジンが、魔法の効果? のようなものを教えてくれる。なるほど……ってあたし変人じゃないし!
「ソ、ソレハ、ドウモ……アリガトウゴザイマス?」
「ふふふっ。そう緊張なさらないで大丈夫よ。白ちゃん」
「はぁ……ありがとうございます」
「そうだぞ。母上達は皆美しく優しいから大丈夫だ」
(まぁ、まぁ、わたくしが後10歳若ければ……)
若ければ何?! 何をするの! クルル様ピンチじゃん!
ていうか、オリジンのこの魔法ヤバいじゃん!
何がヤバいって、心の中の声駄々漏れなのがヤバい!
通常の会話にプラスして、私の頭の中にその人の心の中の声が聞こえる。その内容が、表情とは全く合っていない上に……ほぼほぼ、貶す言葉と言う状況だった。
「さぁ、皆さん召し上がれ」
「いただきまーす!」
まずは、紅茶を飲みクッキーを二枚とる。一枚はオリジンの分で、もう一枚はあたしの分。
クッキーをオリジンに渡して、もう一枚を一口に頬張ろうとしたところで、ミリアナさんがあたしをチラリと見て毒づいた。
(まぁ、あんなに大きく口を開けてはしたない!)
うわー、超食べにくい! めんどくさいよ……。
でも、王妃様とクルル様の声は聞こえないんだよね~。なんでだろ?
『それは、二人が腹黒ではないからにゃにょだ』
なるほどね~。オリジンは魔法得意なの?
『得意にゃにょだ』
ふ~ん。肩に乗るオリジンと話しつつ紅茶を一口飲んだ。
「白ちゃん、これも美味しいのよ~」
そう言って、未来の義母が微笑みを浮かべながらあたしのお皿にスフレのようなものを乗せてくれた。
「ありがとうございます。王妃様」
「あら、王妃様だなんて嫌だわ~。お母様って呼んで!
わたくし、息子より娘が欲しかったのよね。オホホホ」
「母上……」
「だって、男の子はつまらないんですもの」
「へ~。例えばどんな所が?」
興味津々で質問をするあたしの肉をガシっとクルル様が握る。左上にあるクルル様の顔を見上げれば、瞼を降ろし首を微かにフリフリ振った。
そんなあたしたちのやり取りを知ってか知らずか、王妃様は溜息と共に語り始めた……。
小さい頃の話から、今に至るまでの全てを――。
そして次第に、可愛いはずの息子の話が、愚痴と言う名のお小言になり。
全員が、王妃様にお労しいと相槌を打ちながら、心の中で毒づいていた。
その全てを無言で聞いていたあたしは、その間中クルル様の顔色を伺い。オリジンのクッキーを補充し続けていた。
「母上、それ以上は止めて下さい!」
恥ずかしそうに顔面を紅潮させたクルル様が、立ち上がり懇願する。
そこで初めて、王妃様はトリップから戻ったようで
「あら、ごめんなさいね。クルル」
(だって、本当に娘が欲しかったんですもの……あぁ、白ちゃん可愛いわ~。
色々なドレスを着せてあげたいわ)
こんなに白々しい、ごめんなさいがあるとは知らなかった。あたしは、そんな親子の会話を聞きつつ、本当に娘欲しかったんだなぁ~。なんて考えた。
足をお運びいただきありがとうございます。
******お知らせ******
明日より、更新時間等が変更になります。
金・土 19:00~22:00の間で投稿させて頂こうと思っています。
時間は、多分22:00固定にするかと思います。
それからもう1点、文字数を2000文字程度に、抑えようと思っています。
よろしくお願いします。




