お妃修行、敢行中⑩
漸く終わったお茶会に色々な意味で疲れた。
クルル様は、この後執務があるようで部屋の前まで送ってくれるとすぐに何処かへ行ってしまった。
疲れた体を引きづりソファーまで移動する。そして、そのままソファーへダイブした。
はしたないと言われようが気にしないと言わんばかりに、ソファーに寝そべり今日会ったばかりのあの人達の事を考える。
王妃様に対して、毒吐きまくりだったなぁ。
王妃様がクルル様を生んだから王妃になれたんだとか、自分の方が絶対王妃にふさわしいとか……。そりゃ、うっぷん貯まるわ。
あの身体の弱そうだった人ぐらいだよ、本気で王妃様の事素敵だって思ってたのは……。他の人は全員、ガチで自分のが王妃にふさわしいとか思ってるんだもん。
知らず知らずのうちに溜息を吐きだしたあたしを気遣ったメアリーさんが、紅茶を置いてくれた。
「白様、どうでしたか?」
「ん~。何が? そうだ、メアリーさん服着替えたい~」
「畏まりました。楽な格好にいたしましょう」
「うん~」
他のメイドさんに目配せをしたメアリーさんが、ドレスの縛りを緩めながら「それで、どうでしたか?」そう話しかけてきた。
その声に「何が?」と言わんばかりの表情で、彼女の方へ視線を向ければクスっと笑って「お茶会です」と言う。
「あぁ、なんていうか王妃様とクルル様以外、全員腹黒だった!」
「ハラグロ? ですか?」
「そう、腹黒」
腹黒が通じないとすれば、なんて言えばいい? 胡散臭い? 裏表が激しい? 二重人格? うーん。どれが正解だろ。
あぁ、考えるのも面倒になって来た。
「うーん。裏表激しい感じだった。
表では、ニコニコ笑ってるのに、裏では凄い毒舌だったよ!
オリジンの魔法で、全部筒抜けだったんだけどさ~」
「まぁ、オリジン様の魔法ですか?」
「そうなんだよ~。凄かった……よ。
王妃様の事ロリババァって言ってたり。
後10歳若かったら、自分がクルル様に嫁いでた。
王様の愛は私にだけなのよ!
とか、もうお腹の中が全部見える感じだった」
「それは……ほ、ほんとうですか?」
「そうなんだよ~。もう二度と嫌だ―!」
苦笑いを浮かべながらも、きっちり手を動かしドレスの紐を解いたメアリーさん。出来るメイドさんだよ。
そう言えば、できるメイドで思い出したけど……あのピシっとメイドさんたちもメアリーさんたちの同僚なのかな?
まぁ、いいか……どうでも。
メアリーに着替えを手伝ってもらい、シンプルなワンピースに着替え終えた。そう言えば……とオリジンにふっと思った事を聞いてみる。
「ね~。オリジン……あの魔法って、部屋出た途端聞こえなくなったけど?」
『ん~?』
満腹なのか眠たそうに瞼を擦りながら、オリジンが返事を返してくれた。
『あの魔法は、あの部屋の中に居た者の声が聞こえる魔法にゃにょだ』
「なるほど……だから、部屋を出たら聞こえなくなったってわけね?」
そう聞いたあたしに、オリジンはコクンと頷いた。
両足を投げだしあたしの首によりかかるようにして眠り始めたオリジンを、いつもの定位置であるクッションに寝かしつける。
魔法使ったから眠くなっちゃたかな? ゆっくり寝てね~。
そんなオリジンの寝顔を見つめ、お茶会の最中に王妃様たちが口をそろえて言った ”隣国で、聖女と思われる女性が現れた” と言う言葉を。
その声にあたしは、なんの事を言っているのだろう? そう思ったのも束の間、この世界が【 love with you 】の世界である事を思い出した。
聖女とは即ち……あのゲームで言うところのヒロイン。その容姿を軽く、聞いたところによれば、プラチナの髪に青い瞳をしているらしい……それは、間違いなくヒロインの容姿そのものだった。
「聖女ねぇ~。太刀打ちできそうにないんだけど……でも、クルル様はまだこの国に居るし……ヒロインが来ても大丈夫なはず?
ヒロインが、正規ルートで行けば……まず間違いなく隣国の王太子とハッピエンド迎えるはずだし、きっと大丈夫だよね?」
なんて事を一人で考えていたあたしの耳元で、突然「正規ルート? ヒロイン?」と首を傾げるクルル様の声がした。
それに驚き顔を上げれば、眼前にクルル様の眼がっ!
危うく、キスしそうになりお互いに驚き固まった。
あぁ、キスしそう~! キャァ、あたしの初めて……じゃなかったわ! そう言えばオリジンに奪われてたわ。あぁ、マジ今思い出さなくても良いじゃんあたし!
なんて事を脳内で考えていたあたしの肩を不意に誰かが押した。
チョンと当たる柔らかな感触。
ほんのり暖かくて、最高です!!
「――――っ!!」
「わっ!」
「クルルさっ――! ちょっ! 何やってるんですか! 結婚前の婦女子に手を出すなど、あってはならない事ですよ! 殿下っ!」
慌てたイリュス様の声に、ハッとなったクルル様があたしの両肩を掴み顔をぐいっと離そうとする。それにあたしは抵抗するように顔を寄せた。
こんなチャンス二度とないかもしれない。逃してなるものかっ! 折角キスしたんだもん。もっと、堪能したい!
足を運んで頂きありがとうございます。




