白とクルル。それからイリュス……
クルル様の声が聞こえる。大好きな人の悲しい声が――。
釣られるようにドアに近づいた。するとオリジンやニマ君たちの声が一斉に聞こえた。
皆が、あたしを心配していた。それと同時に黙っていたことを謝ってる。
辛そうな皆ん声があたしの心を後押しするように、あたしは鍵を開けて隙間から部屋を覗き込んだ。
見える視界にはあたしの契約精霊たちがいて、大好きなクルル様がいる。見るからにホッとした笑みを浮かべたクルル様が両手を広げてくれた。
普段なら絶対にしてくれないその行動を見たあたしはこらえきれず、クルル様の名前を呼びながらその腕に飛びむ。
そして、クルル様の唇が……キャー!!!! やべぇ、萌える~。あたし息荒くなかったよね? 食べかすとかついて無かったよね? あぁ、もうなんでキスしてくれるなら前もって言ってくれないの。って、そうじゃない。そういう事じゃない。クルル様からのキス……はぁ、堪らない。唯一の心残りは、あたしにキスするクルル様のスチルが見れなかったこと。
「白様? 聞いていますか?」
「あ、はいはい。聞いてるます」
そう言えば、なんであそこに居たのかの説明をうけていたところだった。いきなり呼ぶから噛んだじゃん……。そんな眉間に皺寄せないでイリュス様。
「イリュス、睨むな」
クルル様の助け舟が出て、イリュス様の険しい顔が少しだけ緩む。
リーンを捕まえて、これ以上被害がでないようにしたいのは分った。新しく国の研究機関がラブリィポーションの効果を打ち消すらしいことも。
「と言う訳で、彼女が今この屋敷に――」
は? 今なんて言ったの? あの教会で見たでしょ? クリシュアがあぁなったのは全部リーンの中途半端な命令のせいだよ! クリシュアの、気持ちを考えてあげてよ。やっと悲しみが癒えて彼本来の笑顔が見れるようになったのに、また同じ目にあわせたくないよ。
「……あり、えない。どうして、ここにリーンを連れて来たの?! ここにはクリシュアがいんだよ? クリシュアの傷を抉るようなことしないで!」
クリシュアの事を考えていたらリーンに対する怒りが湧いてきて叫んでしまった。
微妙な空気が流れ、居た堪れなくなったあたしはチラっとクルル様とイリュス様に視線を向けた。
あぁ、二人とも固まってる。どうしよう……せっかく和やかな雰囲気だったのに!!
どうしようかと悩んでいる内に、クルル様とイリュス様が頭を下げてクリシュアに謝った。穏やかな声で答えるクリシュアに不安を覚えたあたしは、本当に大丈夫なのかと聞く。するとクリシュアは優しい顔で微笑みながら、大丈夫だと答えた。
「クリシュア様のお許しがいただけましたので話を戻しますが、現在リーンと名乗る少女をこの屋敷の地下に留めています。それで、先ほど彼女に会いに行ったのですが、どうも様子がおかしいのです」
「おかしい? リーンが?」
「あぁ、私も一緒に話をしたのだが、口調も受ける印象がまるで違う。あれでは別人と言って差しさわりないだろう」
クルル様がそこまで断言するってことは違うんだろうなー。そう言えば、リーンの印象が違うってやつ前に同じことを思ったような……?
「うーん。どう違うのかわからないなぁ。それよりリーンと話したんだよね? 彼女は何か言ってた?」
考えてもわからないからいいやと思考を放り投げ、クルル様たちに続きを促す。
「それが……」と言いかけたイリュス様が、微妙な顔をする。
この顔なんて言うんだっけ、嫌そう? 胡散くさ――違う。あぁ、そう! 面倒そうな顔だ!
「実はな、彼女からこれまでの事を全て話すから教会から守って欲しいと言う要請を受けた」
「……は? 教会から?」
ゲームの時は、そんなストーリー無かった。
あたしが居る事で、オリジナルのストーリーが出来上がったと言う事かな? でも、このまま受け入れたらクルル様とリーンがハッピーエンドになるんじゃ? いやいや、それはない……と思いたい。だってクルル様はあたしのこと好きって言ってくれたもん。
「白様が嫌がるのは十分承知しております。ですが、このまま彼女を外に放逐するのはまずいと直感が言っています」
イリュス様の直感ねー。腹黒メンが何を考えているかは知らないけど、彼が澄ました顔をしているときは裏で何か余計なことをしてくるから注意が必要って掲示板に書いてあったなー。クルル様攻略中に、すっごいいいとこで何度も邪魔されたからよく覚えてる。
って、あたし今ヒロインじゃない! いい。凄くいいかも!
「……イリュス様がそう言うなら、あたしは別にいいよー。クリシュアも良いって言ってくれたし」
「じゃ、さっそく会いに行くか」
「え? あたしも?」
『不安にゃらば、我らも共に魔女に会えばよいにょではにゃいか?』
「オリジンたちも一緒……」
『それいいじゃねーか! 精霊は嘘なんか直ぐに見抜けるからな。あの女が嘘ついたらすぐにわかる』
「それはいいですね……是非ご一緒しましょう」
くっ、やっぱりこいつは腹黒メンだ! あたしは別にリーンに会いたくないしクルル様も会わせたくない。イリュス様一人で行けばいいのに……なんて考えていたらイリュス様の唇が弧を描いた。
そして、彼はとてもいい笑顔を浮かべると「えぇ、白様が不安にならないよう助言させて頂きましたとも」と、教えてくれた。




