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響くは『ハーメルン』の笛の音  作者: 勇寛


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『ただいまワールドマップの開放率が2パーセントに達したことを確認しました。プレイヤーの皆さま。ワールドクエストの達成、おめでとうございます。つきましてはNPCの居住する街がアンロックされます。アナウンス終了後、マップ上にプレイヤーの居住地が存在していない地点にアンロックされた街が出現しますのでご注意ください。併せてワールドマップに来訪したことのあるプレイヤー、NPCの居住地等の表示機能が実装されました。クエスト達成の特典としましてプレイヤーの直近に存在するNPCの居住地をマップに表示いたします。どうぞご活用ください』


 突如としてそんなアナウンスが鳴り響く。

 時刻は空に太陽が高く上った昼時のこと。

 各々が日常の作業をしていた「アキカンヒロイ」の面々は、即座に自身の仕事を中断する。


「皆さん、落ち着いてください! 皆さん、落ち着いてください!!」


 大声を出してまずは皆の平静を取り戻そうと祥子が大声を上げた。

 想定されたアナウンスに対応するために『アキカンヒロイ』の中心部に常駐していた祥子、そして羽田。

 羽田は近くの拠点警備の人間に指示を出す。


「周辺の異変がなかったか、確認して報告しろ。いいか、些細な変化でも逐一な!」

「はい!」


 伝言を伝えた人間はそのまま周囲にある高い建物に向かって駆けだす。

 警戒用の櫓代わりのそこに詰めている警戒スタッフに声を掛けるために。


「祥子さん、羽田さん。計画通り私、外に出ます!」

「アナウンスが本当なら周辺に何か見たことのない建物や集落が出来ているかもしれないわ。ワールドマップではなく、直接視認して報告をお願いします。でも、気を付けてね、詩音さん」

「はい、大丈夫です。コレで遠くを覗くくらいですから」


 ぽん、と全身フル装備で高性能の未来銃「ダスク」を軽く叩いてみせる詩音。

 コロニー内で確認するのではなく、外の更に高い廃ビルまで移動して確認するのが彼女の任務だ。


「遅れました! いやはや、すみませんねぇ」


 そこにバタバタと駆け込んでくるのは、「旅人の服」にレザーシールドとブロンズナイフを装備した和人である。

 大人しく祥子の指示に従って休んでいたのだろう。

 頭の上で髪の毛が渦を巻くように寝癖となっていた。


「大丈夫、事前連絡の通り皆には動いてもらっている筈だから。一応、漏れがないか確認していきましょう」


 祥子は小脇に抱えていたバインダーの手書きのノートを、近くの机に広げる。

 このクエストクリア時に確認するべき項目が羅列されていて、チェックを入れれるようになっていた。


「食料、水各種の在庫確認、人員の不在、あとは周辺のモンスターの挙動……。確認していくだけで一仕事ですね」


 和人は手元に引き寄せノートを見つつ、自分ができる事を確認する。

 数日間の偵察任務明けという事もあり、今日に関してはフリーハンドの立ち位置なのだ。


「……一応あなたは予備としてここで待機にしているのだけど?」

「短時間ですがベッドで横になれましたから。動くには問題ありませんよ」


 にこり、と人あたりの良い笑顔を見せる。

 とはいえ、営業スマイルという部類のそれを見せられても祥子はすんなり、はいそうですねとは言いにくい。


「とはいえ勤務明けでしょうに。……でしたら私のサポートをお願いします。羽田さんが皆さんの状況確認で出張っていますから」

「はいはい。分かりました」


 そう言いながらてきぱきと机の周りに近くから椅子などを運んでくる和人。

 すでに働き始めているのであった。


(……意を汲んでというか汲む前に動くからね。こういう所、素早いのよねぇ)





 それからはバタバタとコロニー内の異常が無いかの確認や、人員の不在などの点呼に、食料備蓄や生産状況の目視確認、ステータスに新しく出てきたはずのマップシステムの新機能の確認などに追われる時間が流れる。


「……ここから一番近くのアンロックされたNPC街。『笠村砦』ですか……」


 皆がいの一番に確認したのはアンロックされたNPC街がどこにあるか、そしてどのような街なのかという事。

 その種類によって対応が変わってくるからだ。

 このコロニーからマップを信じるなら直線距離で2キロ。道が繋がっているかどうかは怪しいが、十分に徒歩でも到達できる範囲だろう。

 そしてその一番近いNPC街の名称だけはわかった。漢字表記で『笠村砦』という名称だけが情報としてある。


「『砦』ってつくとすりゃあ、一番可能性が高いのは戦国一閃かWE3だろうな。ただ、名前からしてWE3じゃあないだろう。大体はカタカナ表記のはずだ」


 一通りコロニー内を落ち着かせた羽田がそう所感を述べる。

 それに和人が質問する。


「他のゲームの可能性は?」

「少なくともコンビニキングやファママとは違いそうだ。そこらはカタカナ表記だし『~タウン』とか『~シティ』とかがケツにつくことが多い。元々が平和なゲームで『砦』なんて名前をつける必要が無い」

「いくつかある洋風オープンワールドですとそこもファンタジーなカタカナ表記でしょうしね」


 最後の台詞は羽田の後ろについてコロニー内を点検していた健太であった。


「街じゃなく砦、か……。くそ、あまり嬉しくねぇお隣さんだな」


 苦み走った顔でいうのはその戦国一閃のプレイヤーでもあったからである。

 戦国一閃のメインは陣取り合戦で勢力を拡大する、「戦争」だ。

 シミュレーションにハクスラ系ダンジョンゲームを組み込んだコンパチゲーム。

 侵略を基本とするNPCが来た可能性があるということだ。


「まあ、WE3のヒャッハーに人食いカルト、暴走機械とか、ファンタジー系のゴブリンキングとかじゃない分マシなんじゃ?」


 健太が言った“絶対拒否したいクソNPC”の上位リストには該当していない。


「戦国一閃の人類側の砦ならまだ、な。鬼サイドの拠点だったらそういうわけにもいかんぞ。鬼側と人類側が同盟結ぶ場合の難易度、説明したろ?」

「そうっすね……。難しいかなぁ」


 健太がぽつりとつぶやく。

 その時に何か言いたげにちらりと和人を見たのに羽田や祥子は気づいたが敢えて無視することにした。

 場が少しだけしん、とする。

 だが、その静けさは次の瞬間に消えてなくなるのだった。


 どたどたっ!!


 首脳陣が悩むところに駆け込んでくる荒々しい足音が響く。


「大変です! 指示をくださいッ!!」


 駆けこんできた雄一郎が開口一番に告げる。

 彼は周辺の確認に出た詩音のサポートについていたはずだ。


「何がありました?」


 和人は駆けこんできた彼に椅子をすすめ座らせ、荒い息を落ち着かせるのに水を渡す。

 受け取った水をぐいと飲んで雄一郎が怒鳴るように報告する。


「新しいNPC街の『笠村砦』! 今、詩音さんが確認したんですが襲われてます!!」

「……何?」


 雄一郎の報告に羽田が眉を顰める。


「だから、『笠村砦』! そこが今、ゾンビに襲撃されてるんです! どうすればいいか、指示をって、詩音さんが!!」

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