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ニンジア

ホンゾさんとは研究所の一室でお会いしました。双方が自由に動ける場所ですしね。わたくしの護衛はメアリとトゥーモ、ティユです。


ホンゾさんも三人の方とともに参られました。うち一人は女性ですが三人は護衛というわけでもなさそうで、二人がかりで一人を抱えて連れてきた、という感じでした。不穏ですわ。抱えられてきた方目がうつろというか意思を感じません。


「呼びつけて申し訳ありませんでした。アクレシア嬢。こちらの三人も大丈夫ですので遠慮なく発言してください。私もそうするつもりです」


「分かりました、ホンゾさん。では早速ですが、提案とは一体何でしょうか?」


「そこまで悪いものではないと思いますが。まずぶしつけながら確認をさせていただいてよろしいでしょうか?」


「何をですか?」


「そうですねぇ、まずはあなたの中にいる方の名前を伺ってもいいでしょうか?」


ホンゾさんの表情は変わっていません。わたくしもなんとか動揺を抑えたつもりです。何故ホンゾさんはわたくしの中にいる精神寄生体ゲルンズファを知っているのでしょうか?


『あいつはかなりのやり手だ、何故かは分からないが、へたに誤魔化した方が面倒なことになりそうだ』

わかりましたわ。


「ホンゾさんは何でもご存知かと思っていましたわ。彼はゲルンズファ、わたくしはルファと呼んでいます」


「すぐに教えていただき、ありがとうございます。出来ましたら私もゲルンズファ様とお話がしたいのです。もし私が知っている異世界の精神寄生体であるなら、彼に取り憑けると思います。彼に取り憑いてはくれないでしょうか?」


どうする? ルファ。あなたが異世界の精神寄生体だってことすら知ってるわよ。

『そこまで知られていたら抵抗しても無意味だから従おうと思う。けど一つ聞いてくれ』

わかったわ。


「その前に、彼はどうしたのですか? それを聞かないことには……」


「ああ、それなら問題ありません。彼はこちらのいいところのボンボンでしたが、自ら服用し続けた薬により心を壊してしまっています。ですから彼には快不快などの感情はありますが、自らの意思は残っておりません。体は治せたのですが自ら砕いてしまった心までは、いかんともしがたく。ですからそのゲルンズファ様にのっとって頂いた方が彼にとっても幸せなのではないかと考えます」

だ、そうよ。どうする?


『あの体に移動してみようと思う。シアもいつまでも俺が中にいるのは嫌だろうし、俺も心苦しい。俺の体質上リンクは残るのでそこまで今までと比べて不便になることもないと思うし』

ルファ、いなくなるの?


『以前シアも経験しただろ。俺はクァルからシアに移動してきたんだ。けどクァルとはずっと友達だっただろ。だから俺があっちにいっても、俺は俺だし、あの男もシアの役に立てるかも知れない。それにあいつが何故俺のことを知っているのか気になる。俺は移動しようと思う』

ルファを邪魔に感じたことはなかったから、いなくなるのは寂しいわね。


『ああ、俺も居心地が良かったよ。まあ今生の別れということもない。リンクは残るしな。じゃあ、またすぐあとで』

ええ、すぐに会えると分かっていても、別れは悲しいわ。でも一瞬さようなら。


「お手をお借りしますね」

そういって虚ろな目つきの男の手を取ります。数瞬後、その男の目の焦点があって、表情も引き締まりました。


「なるほど、こいつはいい体だ。それにホンゾ殿の言う通り、こいつは自分の欲で薬を服用し続けて心を壊したようだ。俺はこの部屋から出たらこの男の名前を名乗ることになるかもだが、今はゲルンズファ、いや、ルファでいい」

そういってルファが手を出してきましたので握手しました。知らない方ですが、確かにルファですわ。


「私もルファ殿と呼んでも? ありがとうルファ殿。あなたの存在はニンジアの統領から聞いたものでした。私は違いますが頭領の元にはルファ殿のような方が何名か居られます。その男の体は頭領からのプレゼントとして受け取ってください。もちろん合法ですから問題はありませんし、そのものの元の名を名乗っても構いませんし、まったくの別人となられても構いませんが、一度私とともに頭領の元に行ってくれませんか?」


「どういうことだ?」


「申し訳ありませんが、私にも分かりません。頭領の命令ですので。でも悪いことにはならないと思いますし、これは提案ですので乗ってくださるならアクレシア嬢への利益をもたらすつもりです」


「どんな利益だ?」


「まずアクレシア嬢が被った冤罪の悪評判をなくすような噂をニンジアの力でまきましょう。それに伴ってヴァルター殿の地固めの援護も行います。アクレシア嬢が望むなら元通りぐらいには出来るかと思いますし、ヴァルター殿は周辺国からの支持も集まることでしょう。あーもちろんケトロイダ共和国とアウムレッチ王国は除きますが。これらが支持すれば逆効果ですしね」


「なかなかいいな。そのために俺が支払うものは?」


「私が受けた命令は、ルファ殿をニンジア本部へ連れてくること、です。それ以外は受けておりませんので、ニンジア本部への往復移動期間のルファ殿の時間的拘束、ということになりますね。だいたい逗留期間を除けば二ヶ月もあれば戻ってこられると思いますが」


「俺はいいと思う。シアはどう思う?」


「わたくしは、もう一個体となったルファ次第だと思うけど、頭領さんの周りにルファみたいな人達がいる、という話ですから、もしかするとお仲間かもしれませんよね。会ってくるのがルファにもいいと思いますわ」


ルファとなった男が苦笑しました。


「俺のことばっかりじゃないか。シアが受け取るものはさっきのでいいのかい?」


「ええ、やっていただけるというのであればヴァルター様への支援をニンジアが行ってくれるのはありがたいわ。けどわたくしのことはわたくしがちゃんとやっていけばいつか解決するだろうことですから、そっちはどうでもいいわね」


「ははは、誤ってあなたを殺してしまう事にならなくて本当に良かったと今では思っていますよ。あの時はなんだこいつは、って思いましたけどね。正直な話」

ホンゾさんが笑ってそんなことをおっしゃいます。今ようやくホンゾさんとも打ち解けた気がしますわ。

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