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泣いていない

「……シア、大丈夫だったか?」


ヴァルター様?


今ランダイオ領でケトロイダと戦っているはずのヴァルター様? 何故、今ここに?


「え、あ、はい。別に何もありませんわ」


「ハインツのやつが砦に向かうと聞いたので、急いで戻ってきたのだが、早すぎたかな?」

両肩に手をかけられます。


「あの、いえ、つい先程ハインツ殿下はお帰りになられましたが……」


顔を覗き込まれました。

「……そうか、良かった。目も赤くなってないな。あいつは無神経なところがあるからな、焦った」


「無神経、というなら今のヴァルター様もでは?」


すごく良い笑顔をしていたのが一転、文字通りうわぁと叫んで、ヴァルター様がわたくしから離れます。


「も、申し訳ない。本当に気が気でなかったので、思わず遠慮もなしに確認してしまった」


ヴァルター様はそう弁解した時の姿勢のまま固まってしまいました。


ミルトさんやゾーグさんの視線が痛いです。フリーダとクァルはよく分かってないみたいで気にしていないようですが。なんですかミルトさん、そのぐっとかいう指サインは?! 孫を見るおじいさんみたいな目をしないでください。


わたくしもいろいろと気を取られている間に、いつの間にかアッケンベルテさんまで帰ってきていました。そして硬直していたヴァルター様の頭をこつんと杖で叩きました。


「まったくわしに無理させておいて、なにやってんだい。混乱して動けないとか情けないねぇ」


「アッケンベルテ、すまない、ありがとう。助かったよ、いろいろと」

まるで魔法が解けたようにヴァルター様が動き出しました。


「プラウドアルター、とりあえずこの二人が先行して戻ってきたよ。じきに皆も戻ってくる」


「と、いうことは」


「ああ、こちらの完全防衛さね。敵は大きな打撃を負った。けどこっちは軽微なものですんだ。誰がどう見ても大勝利だ」



その後はハインツ殿下を近くまで送ってきたスヴェンさんたちを迎えて、お二人から報告を受けました。もう身内しかいないのでわたくしはエルノをだっこしてもふもふします。いろいろと限界だったんです。


ランダイオ領に攻め込んだのは、ケトロイダ共和国と、アウムレッチ王国の連合軍だったらしいです。さすがのランダイオも防衛に手一杯だったようです。ですがプラウトアルターの働きによって、近接する仲が悪いはずのドーマーヌ家も防衛に参加し、また彼ら自身の活躍や砦からの援軍の働きもあって、大きく打ち破ったようです。


ヴァルター様とアッケンベルテさんが先に戻ってこれたのは、アッケンベルテさんのテレポートの魔法の力だということです。これはアッケンベルテさんがとても優れた風魔法使いであるとともに、多額の資金を消費し、さらにテレポート先に設置物が必要とか様々な条件を満たした時のみ使えるものだそうです。

報告を受けたスヴェンさんは納得されていました。ニンジアがその設置物を砦に置かせてほしいと言ってきたらしいです。害のあるものではないとのことで、ニンジアなので見張り付きで受けたらしいです。見張りがびっくりしたらしいですのであとでヴァルター様が謝っていたとのこと。


ともかく、皆さん無事に帰ってくるとのことで安心いたしました。砦の兵士とは知り合い、仲良くなったものもいますし、もう仲間といっていい相手ですしね。


報告が終わったあと、ヴァルター様に声をかけられました。


「明日、出来たら時間をもらえないか」

と。今はプラウドアルターの部屋になっている部屋で待っている、とのこと。中ではヴァルター様が用事があり、またアッケンベルテさんが付き従うとのこと。こちらはエルノかフリーダ、もしくは両方を連れて、だそうです。わたくしたちが二人だけで個室で会うわけにはいきませんし、個室でないとだめなお話なのでしょう。エルノ、フリーダはお付きの代わりね。


次の日、二人に聞くと、エルノはクァルと一緒に扉を見張ってると言ってくれました、ですので三人と一匹でプラウドアルターの部屋へ向かいます。すでにお二人共部屋でお待ちだそうです。


「それじゃよろしくね、エルノ」

「もちろん任せておけ。クァルも頑張るものな」

「くぁ」

「じゃあ私は一緒に入るね。エルノ、クァル、頑張ってね」


わたくしは最近ちょっとした商談で使うドレスを、フリーダはエクセンドーラさんが作ってくれてフリーダ自身が手を加えたドレスを着ています。フリーダはとくにせっかく作ったのに着る機会がなかったからね。

わたくしのも商談用ですが、ヴァルター様もアッケンベルテさんも見たことはないはずのものですので。こちらにも前にもらったクァルの鱗飾りをつけました。わたくしのトレードマークにしようかしら。


「おまたせしました」

ヴァルター様も普段は見ない、鎧ではない姿ですね、当たり前ですね。別に戦おうというのではないのですから。アッケンベルテさんは普段どおりで中央の席から少し離れたところにあるソファに座って居られます。

そしてメアリがお茶を用意してくれました。……って何故、さっきわたくしとフリーダの着付けを手伝ってくれたメアリがここでお茶係をされているのかしら?


「なんか面白そうでしたので」


などとしれっと言いのけます。そもそもどうやってわたくしたちの先回りをしていたのか謎なんですが、元ニンジアだから、でしょうね……。まあ聞かれて困るようなことはおっしゃらないでしょうし、メアリなら信用しますわ。

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