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別視点 ある女生徒の出来事

私は子供の頃、ケトロイダのある街に住んでいました。幸い我が家は裕福な商人で子供の頃にお腹が空いたのに何も食べられないとか、欲しい物が手に入らないということはありませんでした。


しかし私以外の、周りにいた子どもたちはそうではない子も多かった記憶があります。


私は子供の頃から魔力が強いと鑑定されていたので魔法に強く憧れていました。しかしさすがにケトロイダでは、裕福な商人の子といえど、魔法を子弟入りせず独学で存分に学ぶのは厳しかったようです。一家がブロテア帝国に居を移した理由は、そう父さんから聞いています。ブロテア帝国であれば、魔力が多いのなら学園にいけるかもしれない、と。学園に入れる年に近くなった時、私達一家はブロテア帝国に移住しました。


私達は移住者でブロテア帝国に血縁はいませんでしたので、来た時は少し苦労したと思います。お金はありましたので私が直接街にあった孤児院を訪ねて寄付金を渡したりとかしていました。

ケトロイダでは他者に見返りなく何かを与えるのはダメだとされていたので出来ませんでしたが、ブロテア帝国ではそんな慣習はありませんでしたので、お腹をすかせた子がいたら屋台で食べ物を買ってあげたり、ぼろぼろの服を着ている子がいたら服を買ってあげたりしていました。私がもらっているお小遣いはそれぐらいでは減った気がしない額でしたし。みんな私を褒めてくれるんですもの。良いことをしているのですよね。


学園に入れると決まる前までは、それが嬉しくて孤児院で炊き出しをしたりするようになっていました。私は少しのお小遣いを失うけど、皆に褒められて、皆はお腹いっぱいになれるんですから、良いことですよね。


その間にも入学テストなどで魔力を測ったりしていました。周りはブロテア帝国の貴族様の子ばかりですので、なるべく目立たないようにしておりました。しかし私の魔力は、その貴族様の子よりもだいぶと大きかったらしく、それを褒められて特待生になれました。


学園で貴族ではない生徒は私ぐらいでした。幸い我が家にはお金はありましたので制服など貴族様に劣らないものを準備できましたが、やはり気負いはしてしまいます。クラスでも貴族様との接点がなく会話が続きませんので友人は出来ませんでした。ただ私は魔法を学ぶためにこの学園に入ったので、魔法の授業は大変楽しいものでした。私の魔力もそれに答えてくれて、優秀な成績を出せていたと思います。


そんな時ある女生徒に声をかけられました。


「そこのあなた、何をなされているの?」

目付きの鋭い、ふわふわの金髪で縦ロールの方でした。


「は、はい。この本を返してくるようにと、先生に」


「まったく、わたくしたちはまだ新入生だというのに、もうそんな扱いが荒い先生がおられるのですか。あなた、そっちは私達生徒が入ってはならないとされている場所ですわ。どこに向かわれていたのかしら」


どうも同級生だったようです。堂々とされておられるので上級生だと思ってしまいました。


目的地を話しますと、案内するから付いてくるように言われました。さらに荷物の本も半分持ってくださりました。


「あなた、名前は? わたくしはアクレシア・ノイラートよ」


「私はラウラ・ロッシュと言います」


「あら、あなたがあの有名な特待生? 噂はいろいろと聞いていますわよ。聖女かもとか」


目的地に案内されながらお互いに自己紹介します。私はまだ不勉強でノイラートさんがどういった方がご存知ありませんでしたが、私はどうもすでに知られていたようです。炊き出しなどで聖女と言われたことはありますが、一種の冗談みたいなものと思っていましたが、どうやら噂でそう呼ばれたりしているようです。通りで皆さん私を遠巻きにするだけで関わってこようとしてくれないなと思っていました。私は相手が貴族様なので気が引けてしまっていましたが。


「わたくし、まだ友達いないの。ラウラ友達になってくれる?」


「え? はい、けど私は平民でノイラート様は貴族様ですよね。よろしいのですか?」


「何を言ってるのよ。同じ学園の同級生でしょう? そんなの関係ないわ」


友達ってなろうとしてなるものなのかな? 今までそんなことはなかったので狼狽えました。が私も今は友達がいないのも事実ですので嬉しいです。


「ありがとうございます、嬉しいです。ノイラート様」


「ラウラ、あなたとわたくしはもう友達ですわ。ですからせめてアクレシアと、親しいものはシアと呼んでくれていますわ」


「わかったわ、じゃあシアで」


「ええ、ラウラ、そう呼んでください」


こうして私はシアと知り合い、友人となりました。それからよく一緒に行動していました。シアは私の体験談とかを好んでくれました。けど皆が褒めてくれるところはシアは褒めてくれません。逆によくわからないところで褒められたりしました。


友人となったシアはシアのお兄様や許嫁(!)、クラスでの優秀者やすごくモテている方を私に紹介してくれたりしました。特に許嫁は皇族の方でしたのでびっくりしました。

その頃、私は皆に聖女扱いされるようになってきました。私が休みの日などに孤児院で炊き出しとかしているのを妙に皆さんに感心された覚えがあります。けどシアだけは否定的だったことも覚えています。


基本的にシアと意見があうことはありませんでした。だからシアと会う回数は減っていって、シアが紹介してくれた方々と会うことが多くなっていきました。皆さん貴族様や皇族様ですのに、平民である私を褒めてくださるので。正直ちょっと思い上がっていたかもしれません。


ある休みの日、実家に帰っている時にお父さんから聞かれました。今までそんなことを聞かれたことはなかったのに。

聞かれたのはシアと仲良くしていること、そのシアを通じてハインツ殿下やいろいろな方々と知り合えたことです。

お父さんは、そうか、と言っただけでした。


私はあまり良くないと思っていたのですが、ハインツ殿下と特に仲良くなって、皇帝陛下に紹介されたりもしました。平民である私が皇帝陛下とプライベートで会えるとか考えられないことでしたのでたいへん嬉しかったです。またシアのお兄様であるアーベルさんとの会話も素晴らしいものでした。どうすれば皆が幸せになれるのか、みたいな話をアーベルさんと、ハインツ殿下と、他の方々ともよくしていたと思います。


けど、逆にシアは炊き出しとか服をあげることなどには、効果が薄いとか、目先だけ過ぎて、長期的には不具合が生じかねない、と難しいことを言ってどちらかと言えば否定的でした。他の皆さんは褒めてくださるのに、シアだけは褒めてくださらないのは、少し辛かったです。


またシアとは普段は楽しく会話できるのですが、本当に趣味はあっていませんでした。爬虫類とか虫とかは私本当にダメなんです。けど魔法のこととかは、シアは火や風でしたが、魔力も強く、会話があいました。


私は魔法が勉強できるなら学園で一人でも仕方ないなと思って入学しました。だって周りは貴族様ばっかりでしたから。けどシアがそんな壁を、何も気にされずに私に楽しい学園を与えてくれました。シアには感謝しているんです。


ですからハインツ殿下にシアが皇室を侮辱した、と聞いた時は驚きました。よくシアとは意見がぶつかりましたが、そんな侮辱みたいなことを言う人ではないと思っていましたから。実際私はシアから誰に対してのものでも侮辱なんか聞いた覚えはありません。

ただ実はハインツ殿下はあまり好みではない、ということは聞いていました。ハインツ殿下の許嫁となったため、子供の頃にいろいろと苦労したし今も苦労しているということも。皇族になるための準備で、とは聞いていましたので、軽く笑って流しましたが。

そういうことがハインツ殿下には侮辱に聞こえたのかもしれません。私はその話が出た時には、そう証言しました。シアは侮辱なんてするような人ではない、と。もしそんな方だったら私と友達になってくれないはずですから。


しかし私の知らないところで、シアは捕縛されて裁判になり、有罪となって国外追放になったそうです。捕縛されたと聞いてから一日ぐらいしか経ってないのに早すぎます。私はなにもできませんでした。もしかすると私の振る舞いや証言などでシアが困難に陥ったのでは、と気が気でありませんでした。


シアがいなくなって、私にとって輝いていた学園は少しくすんでしまいました。シアのお兄様であるアーベルさんも無期停学となってしまい、二人もいなくなってしまいました。けどこの国の病巣や孤児たちは待ってくれません。ハインツ殿下たちは相変わらず私の話を聞いてくれますし、彼らを沈んだ心のままにさせておくわけにもいきません。


私などが出来ることは、私がやります。……その頃は私もハインツ殿下も、シアの国外追放が私の故郷であるケトロイダなどの北の国々ではなく、南の死の荒野だとは知りませんでした。

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