後始末と展望
ラメルキ砦に戻ってから、まずわたくしの配下となった魔法小隊を正式に方面軍へ編入しました。
そしてフェルデナンド叔父さんの治めるウァーリス領の砦よりの端っこ、誰の管理も受けていない土地を借り受け、そこに駐屯地を設置しました。設置はオークの軍将テグモスさんが率いるオークたちが凄まじい速さでしてくれました。資材はラメルキ砦からですが、一部ウァーリス領から融通していただけました。
この駐屯地は実質研究所となっており、隊長のベルクト・エファードをはじめとして部隊員それぞれが魔法に関する研究を行っています。フェルデナンド叔父さんはそれを知って、さらなる援助を先行投資だと言ってしてくれました。
この研究所の管理は、テグモスさんがミルトさんの指令で行ってくださっています。オークも何人も使ってくれています。実際初期の頃はわたくしが一人で馬に乗れませんでしたので、オークの魔法使いのスタムさんがわたくしをみこしで送り迎えまでしてくれていましたから。今ではさすがに馬で移動していますけどね。
訓練や習い事がないときはエルノもいただいたポニーで、フリーダはドラゴンライダーみたいにクァルに乗ってわたくしについてきます。これらは皆にとって鍛錬にもなりますし、遊びにもなっています。
元ニンジアの三人の内、トゥーモとティユは交代で研究所に務めて管理をしてくれています。メアリはずっとわたくしの近くでお世話と護衛をしてくれていますけどね。
アッケンベルテさんは頻繁に、ミルトさんは時々、一緒に研究所へ行きます。皆様も彼らがしていることが気になるようです。たまにスヴェンさんの秘書であるマルガさんも来られます。管轄はスヴェンさんの方面軍なので当然ではあります。
そういった慌ただしい生活をしているうちに攻めてきたテレーンド公国との手打ちがされたようです。
帝国自体は一切介入せず、ウォーリス領と手打ちにしたようですね。他国との争い事、戦争ということになるのを恐れた帝国、というか皇家が我関せずを決め込んだようです。フェルデナンド叔父さんがそうさせたっぽいですが。
そのおかげかウァーリス領には見返りも大きくなり、十分に戦費以上の益を貰い受けることに成功したようです。さらに公国を治める公爵が引退し、新たにその息子が公爵として国を治めることになったらしいですが、その方はフェルデナンド叔父さんと仲が非常に良い方らしいです。
なおケトロイダ共和国の横やりは、公式ではなかったことになっているようですが、周辺にはすでに知れ渡っており、ケトロイダ共和国はずいぶんと評価を落としたようです。……公式ではなかったことになっているので、研究所の魔法小隊に関しても完全に不問となっていて、吸収得になっています。まあ彼らも本国に愛想がつきているようですので、お互い得ですわ。
そんな彼らもすでに成果を上げています。範囲に癒やし効果がある蝋燭の開発です。これは実はケトロイダで問題になった魔法具らしいのです。
かの国ではすでにそう称している商品が出回っているらしいのですが、こちらで作ったものより効果が低い上に軽い毒性があるらしいのです。それで安く作れるらしいのですが。
これはベルクトさんが研究していたもので、まだ研究中のものを勝手に商品化されて売り始めたものなのらしいです。
その研究を完成させたのが、こちらのリカバリーキャンドルです。香りがするアロマキャンドルのようなもので、香りが強く届く範囲での傷の治癒、疲労回復、精神を休める効果もあるらしく、現在はそれぞれの特化型が作れないかの試行錯誤中だそうです。ケトロイダのものより高いといっても、ヒールポーション二本分もしないので、軍や治療院、鉱山などの過酷な仕事場などでの需要が大きいようで、帝国内で新たなトレンドになっているようですわ。
またケトロイダでのみ普及していた炎の粉も製法や保存方法が彼らによって公開されたので帝国内でも使用されるようになってきました。主に使っているのはまだ帝国に残っている高レベルの冒険者たちですね。彼らレベルになると武器の手入れはもちろんとして作成すら自分たちでできてしまったりしますし、冒険者が減ったせいで危険度が低い依頼でも値上がっていますから、武器さえなんとか出来れば今の帝国はお手軽にそれなりに儲かる、という認識のようです。実際冒険者は足りていないのですから、残ってくれた高レベルの彼らは優遇してでもこのままい続けてほしいものです。
魔法小隊が作った品はテレーンドから来てくれたあの酒保商人によって堅実に普及させてもらっています。こちらも、自分たちも儲けすぎないように、しっかりと必要な分の割合を考えて売ってくれているようです。
これによって、ラメルキ砦もウァーリス領も、わたしくも大きな資金元を得ました。今は酒保商人の手によって、ウァーリス領に量産のための施設を作っているところです。素材も簡単にとはいきませんが、酒保商人さんの手腕によって問題なく確保できており、よりよい素材確保のための取り組みも行っているとのことでした。
研究所でまず生み出されたものはどちらも軍でも使うものなので、方面軍扱いでも問題はありませんでした。ただそれにも税金という名目で今の帝国に一部取られてしまうのは、少々納得がいきませんでしたが、別に問題を起こしたいわけじゃないので、普通に収めました。
それらを収めても十分な収入になったというのが大きいですね。
ウァーリス領には特権があるのでまるまる取得できたようで、叔父さんもほくほくで研究所に投資し続けてくれています。
スヴェンさんはこの思いも寄らない収入をうまく活用し、砦や方面軍の質の上昇、前に送り込んだ部隊への援助を行っています。何分スヴェンさんも一介の平民の軍人ですので、やったことがない事柄ばかりらしくて苦労したようです。しかしそれでも皆の力を借りてなされているようです。
こちらはまあ問題はありつつもたいへん順調なのだけど、気がかりなのがヴァルター様が向かった、ケトロイダ本隊が攻めてきたと思われるランダイオ領での戦いです。ある程度の情報はもちろん手に入れているのですが、時間がかかってしまっているようです。
いくらヴァルター様ひきいるプライドアルターの面々が優秀でも限度がありますしね。彼ら以外はただの正規軍ですし。スヴェンさんも心配したのか、手が空いたアッケンベルテさんとヘルムのコルノーさん率いる追加の兵員を物資つきで送り込みました。戦闘続きで疲れているとしたら、こちらのリカバリーキャンドルはたいへん有能なはずです。
それに魔法使いでないとあまり意味はないですが炎の粉も持っていっています。敵も自分たちと同じものを持っていると分かればそうそう動けなくなるはずです。
わたくしたちも応援に行きたいところですが、クァルやエルノ、フリーダも、そしてオークたちは帝国でおおっぴらに動くことは出来ません。ウァーリス領はわたくしの親戚が治める土地だったので問題は起こりませんでしたが、オークの軍勢やドラゴンが、たとえ味方であったとしても帝都付近を通ろうとするのは問題がありそうです。
方面軍としても人間の正規兵はもうかなり送ってしまっていて、砦の維持で精一杯程度の人数しか残っていないので、再び援軍を出すことも出来ず、むしろ通常業務もオークに手伝ってもらっている有様ですし。人員募集は始めているのですが、資金を得たのがつい最近ですし、有能な人がきても正規兵としての訓練をしないと使えませんし、増員するのはもうしばらくかかるでしょうね。
すなわち、今のわたくしは待ちしか出来ません。
ただ待ってるのもあれですので、いろいろとやってはいますが。
フリーダはここしばらくでどんどん磨きをかけています。言葉もしっかりしてきましたし、裁縫の腕もかなり上がったようです。師匠のエクセンドーラさんも回復術師だということで、フリーダの回復術もレベルが上ったようです。なにより女性兵士に可愛がられているので、どんどん可愛くなっていきますわ。
エルノも言葉を不自由なく使えるようになっていろんな方とコミュニケーションを取れるようになって、元々そうでしたがかなり活発になりましたわ。戦闘訓練のおかげでだいぶと強くなったようですしね。
クァルだけがゆっくりとすごしています。行動制限かけられていますしね。けど時々オークとともに南の死の荒野へいってオークたちとともに魔物たちの数を減らしているようです。
彼らが持ち帰ってくる素材は大変有用ですし、なによりたいへん美味なものもありますし、オークたちの料理文化も入ってきて、砦のメニューはすごいことになっています。
クァルはさらに少し体が大きくなりました。脱皮したのです。プラウドアルターのクレイタさん、でしたっけ? 彼がたいへん喜ぶと思うので出来るだけ形を崩さないようにそのまま保存しています。竜素材として高く売れそうですが。
わたくし自身は忙しく研究所と砦を行ったり来たりばかりしているのでたいしたことはできていません。せいぜいルファから様々な魔法を教えてもらっているぐらいです。あーでも研究所でのやり取りで商人や研究者の真似事は出来るようになった気がします。
たまに研究所で会う母からは剣を教えてもらったり、逆に簡単な魔法を教えたりしています。学生のときにはなかったやり取りですね。母はわたくしが戻ってきてからは急速に回復されたらしいのですが、今は父上の元へ戻らないほうがいいらしく、ずっとウァーリス領に滞在されています。
そんな暮らしをしている中、スヴェンさんに呼ばれました。何事かと思ったら、指定された部屋にニンジアのホンゾさんが居られました。そういえば久々に見かけましたね。どこにおられたのでしょうか?




