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助命嘆願

「叔父さん、お話があります!」


先程の天幕に勢いよく入ります。門番みたいな兵士も止めません。


「やあおかえり、アクレシア。どうだった?」


叔父さんはのんきにミルトさんや他の方と話をされていたようです。さきほどの怒りはどうなったのでしょう?


「どうだったもこうだったもありませんわ。なぜ先程の方を斬ろうとされたのですか?! わたくしは彼と彼の部下たちの助命を嘆願しますわ」


フェルデナンド叔父が座ったまま手を組んでこちらを見てから、言いました。


「助命嘆願ね。彼らは我らが土地に無断で上がり込み、こちらを襲ったのだぞ? 幸いオークたちのおかげで怪我人程度で済んだが、一歩間違えれば我が領民や兵士たちの命が失われていたのかもしれないのだぞ? そうでなくてもこの防衛にかかった戦費は安くはない。それでも、彼らを生かす、というのかね?」


「う、それはですね……」


「まあよい。かわいい姪のいうことだ。話は聞こう。ただし、彼らを捕虜にする気は私にはない。よって、お前が彼らの面倒を見るんだ」


「え? わたくしが?」


「命を助けるということは、そういうことだぞ。まあまだ学生だったお前に全てを押し付ける気はない。土地と金はある程度出そう。しかし彼らの扱いに関して私は口を出さない。全てアクレシア、お前が決めるんだ。それでいいならその嘆願を飲もうじゃないか」


「わ、わかりましたわ。わたくしが責任を持ちますわ。ですので彼らを助けてあげてください……」


「姉上のサポートは認めよう。たった今から彼らの処遇はアクレシアに一任する。今この陣地内でなら兵士たちを使うことも許そう。……それでよいな?」

うつむいてしまったわたくしに叔父は優しい瞳で軽く笑いかけてくれました。


「フェルデナンド殿。ワシやアッケンベルテ殿、他のオークたちもアクレシア殿を手伝っても構わないですよな?」


「ええ、ミルト殿。あなた方こそ体を張って彼らを止めてくれたのですし、そもそも私の指揮下にあなた方はいません。それにもう彼らを放棄した私にあれこれいう資格もありませんからね。むしろ是非ともご指導していただきたいものです」


「なるほど。大きな荷物を抱えてしまったアクレシア殿に付き合いたいと思うのですが、もう国境の方は大丈夫ですかね?」


「はい、ありがたいことに皆様のおかげで完勝することができましたし、こちらから攻め込むつもりもありませんので、アクレシアに預けた魔法使いたちがいなければ、交渉でなんとでもなると思っています。もちろん補償はいただくつもりですけどね」


「なるほど。その様子ですとオーク兵を残す必要もなさそうですな。では馬車を一台と食料を少しばかりいただけますかな? こちらには走ってきたので彼らを運ぶ手段がありませんし、急なことでしたので輜重隊も連れてきておりませんから」


「ええ、もちろんです。皆様はいったん我が屋敷で休まれるといいでしょう。私はまだしばらくここにいないといけませんから。姉上もアクレシアのアドバイザーとして付き添ってやってください」

そういうと叔父さんは立ち上がって、わたくしの肩に手を添えました。


「アクレシア……、私は姉上の味方だ。その姉上の子供であるお前も私の味方だし、お前の父上の味方でもある。今後も私を良いように使うがいい」


「フェルデナンド叔父さん……」


そうしてわたくしたちはいったん叔父の屋敷で食事を頂いたのち、すぐにラメルキ砦へ戻りました。ケトロイダ共和国出身の魔法使いたちを連れて。


帰る時にミルトさんに種明かしされましたわ。


叔父はわたくしに捕虜を押し付けるために一芝居を打ったのだと。それによってわたくしの困難の足しになると思われたようです。叔父はわざと怒って見せ、捕虜たちのわたくしへの求心力を高め、また今後敵対したらただではおかないという脅しも兼ねて。

わたくしは必死でしたが、叔父にとっては茶番だったようです。


……でも意外と腹が立ちません。


実際あのまま彼らが叔父の捕虜のままだとろくでもないことにしかなりませんし、逆にわたくしの元でなら雲隠れもできます。

事情は個々違うでしょうから詳しく聞かないと分からないでしょうし、攻められた叔父にそれを考慮することはできません。舐められてしまいますからね。

それにわたくしの直下の部下は元ニンジアの三人だけでそれもニンジアの好意でできただけですからね。他の皆様もわたくしに良くしてくれますが、わたくしが独自に動けませんでした。

そこで叔父の思惑通り、魔法小隊がわたくしの部下になった算段です。でもわたくしには資産がありませんから、叔父の言う通りしばらくの資金は叔父に頼らなければなりません。


幸い皆様、わたくしを助けてくれる様子ですがいつまでも助けてもらってばかりで良いわけではないでしょう。それは彼らもそう感じているようです。

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