捕虜との対話
「はい、私は先程申しましたように、魔法研究員にならされましたが、元々個人の趣味として魔道具を開発していたのです。そこでいろいろと開発、採用されたのですが、採用の代わりに国家に研究員として尽くせ、と言われまして。断る術もなくまたその時の私は様々な機材を使って遠慮なく開発できると喜んだのですが、どうも国は私の技術が欲しかっただけだったようで、私が死ねば開発物を我が物に出来るとでも考えたのでしょう」
言っていることの意味が分かりませんわ。
「いったいどういうことなのですか? 何故国があなたを殺してまで開発物を得ようとするのですか? 普通に評価して取り立てればいいのではないのですか?」
「アクレシア殿、我が帝国ならそうでしょうが、ケトロイダは事情が違います故、あり得る話です」
アッケンベルテさんがわたくしの問いに答えてくれました。
「かの国に身分はありません。全員平民なのです。ですから差は財力しかありませんので、少しでも得ようと、そして他人から取り上げようと動くことになってしまうのです」
「え? それが事実だととんでもないところでは?」
「そうだと思いますよ。かの国にも役割や取り決めもありますが、役割を利用して自分には利益を、取り決めも儲けるためなら破ってもいいという非常に身勝手な考えが横行しているところですからね、儲ければ正義と」
「それで、国としてまとまるものなのですか?」
「儂にも分からないことですが、何故かまとまっておりますね。あー先程のは上の方の話で、一般的な暮らしをしているような村人などは純朴な人柄な場所でしたよ。この魔法使いはうっかり上にある意味認められてしまったのでしょうね」
「上とは、先程聞いた政府というものに属している方などのことですか?」
「そうですな。我が帝国では貴族が務めている事柄や、一部の大商人、宗教での上位の者、などですな。ただ上がそれだから都市部ではそれでよしとする者も多い印象でしたな。ケトロイダの都市部にいたときはかなり警戒しておりましたからね」
「そうなのですか?」
うなだれて座らされている魔法使いに訪ねました。
「残念ながらその魔法使い殿のおっしゃるとおりかと。私もですが、我が隊の人員も多かれ少なかれ事情持ちであります。私はもう絶望的ですが、皆にはなんとかお慈悲を賜れないでしょうか?」
「あなたはもう諦めているのですか?」
「と言われましても。私は国の命令とはいえ、あなた方を攻撃したのは間違いありませんし、ここのトップらしき方を何故か怒らせてしまいました。鈍い私でももうだめだと分かりますよ」
「わたくしがあなたをかばいます。あなたが怒らせたという方はわたくしの叔父です。本当に酷いことは言っていないのですね? さすがにそういうことをおっしゃっていたらかばえるものもかばえませんが?」
「は、はい、魔法摂理に誓って、そのようなことは言った覚えがありません。もちろん態度や振る舞いも。あなた方と敵対したことそのものがダメでしたら事実ですので、もうどうしようもありません」
「アッケンベルテさんはどう思われますか?」
「儂かい? 魔法使いとして、魔法摂理に誓うならその者にとっては真実だと思うがね。怒った方も怒られた方もよく知らないから、儂には判断つかないとしかいいようがないさね」
「そうですか。わかりましたわ。ではわたくしの判断として、この方の助命嘆願させていただくことにしますわ。その代わり、といってはなんですが、あなた、わたくしについてきてくださる?」
「は? は、はい。私はベルクト・エファードと申します。国にも切り捨てられた身、ここで助かるならお嬢様についていきます」
「ではベルクトさん、今はまだ拘束を解くことは出来ませんので、しばらくお待ち下さい。今すぐ嘆願してきますわ。アッケンベルテさんもついてきてください。では」
そういってあとは兵士にまかせてアッケンベルテさんと共に戻ります。わたくしが知っている叔父は優しい人ですから、なにか行き違いがあっただけに違いありませんし、ベルクトさんが嘘をおっしゃっているようには見えませんでしたわ。




