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尋問

そのままの勢いで関所も取れそうでしたが、関所の前でオークたちは止まりました。ミルトさんが止めたようです。

半数ほどのオーク重装兵が関所の前にとどまり、他の皆さんは捕虜を連れて戻ってきました。


魔法使いたちは後ろ手に拘束され、目隠しとさるぐつわを噛ませられています。ハウンド隊で何人か捕らわれた者は武装解除させられて、犬に口の拘束具をつけさせただけですね。治療も受けているようですし明らかに対応が違っていますが、ハウンド隊は実質戦闘に参加していませんからね。


「ウァーリス殿、こんなものでどうですかな?」

ミルト王はみこしの上からの失礼をわびてから、こちらの総大将となるフェルデナンド叔父さんに捕虜を差し出しました。


「完璧です。ありがたいですね。ハウンド隊のものは別棟で丁重に預かれ。ハウンドたちも安全を確保できたら水を出してやれ。魔法使いたちは尋問したいので誰か控えてもらえますか?」


「私が付き合いましょう」

前線でずっと戦っていたはずのゾーグさんが名乗り出ました。疲れは残っていないように見えます。彼の派手な鎧は一切傷ついていないどころか埃一つついていないかのように輝いています。魔法で保護されていたのか、鎧自体が魔法の品ですね、これは。


魔法使いの一人がゾーグさんの返答に恐怖したのか動揺していました。その人の着ているローブは他の魔法使いと違う、やや豪華な仕様のように見えますから、彼がリーダー格かもしれませんね。


「魔法使いの怪しい持ち物は全て取り上げた。あちらに置いてあるから検分して欲しい」


「儂がやっておこう。アクレシア殿も一緒に見ましょうか」


「私も見ておきたいです」


母もついてくることになりました。別の天幕の中にある机に広げて置かれていました。


「これは竜の牙ですな。これはすでに魔法的処理を施しておりますが、先程の竜牙兵(スパルトイ)にするものです。竜の爪もありますね。儂もこれは使ったことがないので一度使ってみたいものですな。竜牙兵(スパルトイ)の魔法と同じで良いのだろうか」


アッケンベルテさんが主に母に説明してくれます。


「この袋はなんでしょう?」


「これは……、なんでしょうな。開けてみます。……珍しいものでした。これは炎の粉です。ケトロイダの魔法使いが使う、炎魔法の触媒ですね。これを撒いて、着火の魔法を使えば、広範囲に炎をばら撒けますし、袋そのものを投げ込んで炎魔法を当てれば、当たった魔法によって様々な炎を作り出すことが出来ます。儂はケトロイダ以外でこれを見たことがありませんね」


「なるほど、ということはやはりあの魔法使いたちはケトロイダの者……」


「の、可能性は高まりました。しかしそう思わせたい何者かが彼らに持たせた、ということも考えられます」


な、なるほど。そういう疑いもあるのですね。母も納得されておられます。


「あとは、一般的なものばかりですな。ケトロイダの国章などがあれば決まりでしたが」


叔父さんがいる天幕から大きな音が聞こえました。何事でしょう? 天幕の門番は中を覗いているだけですので、良からぬことではないようですが。


天幕の中には叔父さんと副官、護衛の方二名、ミルトさんにゾーグさんがおられ、中央に一番目立つローブを着ていた魔法使いが目隠しとさるぐつわは外された状態で両膝をついて後ろ手にくくられて座っていました。叔父さんは自分の前のあった小さな机をけっとばしてひっくり返し、抜剣したところだったようです。


「言うてくれたな。貴様、片腕を切り飛ばしてやるわ」

魔法使いが何かを言って叔父さんを激高させてしまったようです。あの優しい叔父さんが激高するなんて何を言ったのでしょうか?


慌てて天幕に入り、魔法使いの前に立ちます。

「叔父さん、待ってください! 何を言われたか存じませんが、片腕はあまりにも」


叔父さんは剣を振り上げ今にも片腕を落とそうとしようとしていましたが、わたくしの言葉で思いとどまってくれたようです。


「我が姪に感謝しろ。もう話もしたくなくなった。連れて行け」


護衛の人に引き立てられる前に魔法使いに訪ねました。


「あなた、いったい何を言われたのです? あの温厚な叔父をあれほど怒らせるなんて……」

母が念の為わたくしのそばで守ってくれています。それで気づきましたがわたくしはうかつに捕虜に近づきすぎたようでしたわ。護衛の方が魔法使いを立たせて天幕の外へ連れ出しました。


「シア、あの魔法使いから事情を聞いてきて。アッケンベルテさんはどうかシアをご指南ください。私はフェルデナンドにわけを聞きますわ」


魔法使いは小さな天幕に引っ立てられ、椅子に座らされました。そして引っ立てた護衛が後ろ手を椅子に固定して魔法使いを立てなくさせました。その上で隣で見張ってくれるようです。魔法使いには少し同情しますが、仕方ないですね。


そんな状態となっているところにわたくしとアッケンベルテさんが入りました。そしてアッケンベルテさんに促されましたので、わたくしが話を聞くことにしました。


「何をおっしゃったのかは問いません。わたくしも怒ることになってはあなたに味方する者がいなくなりますから。ですからなるべくあなたのためのことも考えますので正直にお答えください」

魔法使い殿はまだ青年のようで若かったです。それでもわたくしより一回りは上でしょうけど。必死で頷かれております。片腕を失うところでしたからね。


「あなたはどこの所属なのですか?」


「まずは、ありがとうございました。何故あれほど激高されたのか……。わ、わたしはケトロイダ政府の魔法研究員でした。突然辞令が降りて魔法防衛隊の隊長として配属になり、命令に従って動いておりました」


「あなたの意思ではない、と? だからといって許されるものではないですよ?」

幾分キツめに言います。わたくしと魔法使いのやり取りをアッケンベルテさんはじっと見つめています。


「はい、それは分かっております。ただ私や部下たちに皆様へ恨みなどがあったわけではない、と……」


なるべく優しく微笑んで、目を見開いて答えます。遠視の魔法をかけていないと睨んでいると思われかねませんから。……学園にいたときはそんな気遣いもした覚えはありませんね。

「ええ、それも分かっております。ではあなた方を送り込んだのはケトロイダの政府?ってことでいいのですね?」


「は、はい。命令の最初の出どころはわたしなどでは分かりませんが、わたしはそう認識しております。わたしを亡き者にしたかったものもいたのでしょう……」


ん? なんか変な話が出てきましたわ。

「どういうことですの?」

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