正面衝突
テレーンドのハウンド隊は単にそういう名前の隊というだけでなく、ハウンド、ではないと思いますが、本当に軍用の犬を連れている部隊のようで、大型の犬を何頭も兵士が連れています。まだリードはつけたままですが。
その後ろに明らかに魔法使いです、といった格好をした者が十人近くいるようです。たった一人で戦局を変えられるような魔法使いはごくわずかですが、たった十人足らずといっても警戒はしないといけません。
ミルト王はみこしに乗り、荒野を渡った時のような密集隊形を取りました。
「せっかく来たのですから、活躍させてもらいませんとな。オークだけで行かせてもらいますぞ。いいですかな?」
「よろしいのですか? ミルト殿? ありがたいと言えばありがたいですが」
「我らの戦い方を見てもらってからの方が共闘もしやすいでしょうし、ワシは遠視できませんので。皆様はそちらで見ていてください。何名か伝達兵は残しますのでアクレシア様を通して伝えてくだされば、指示に従いますので」
最初からクァルが見えませんが、ルファによると馬が怖がるかもしれないので遠くで見守っているそうです。見守る対象にオークたちも含んでくれていたらいいのですが。陣地には馬がいるので、今クァルはこちらに近づけませんね。
わたくしの周りにはいつのまにか元ニンジアの三人がいます。三人とも砦の兵士と同じ格好を今はしているので、不審に思われることはありません。
「分かりましたミルト殿、よろしくお願いします。万一苦戦されてそうでしたら、救援を差し向けることをお許し願いたい」
叔父とミルトさんが双方提案を受け入れました。
全身を金属鎧でくまなく防御しているオークの重装兵がゆっくりと侵入してきた敵に近づいていきます。薄く広く広がって、誰も抜けれないようにしています。中央にはゾーグさんがいて、その後方にミルト王がおられます。薄く広がった壁の後ろに弓兵や魔法兵がいます。今回は長槍兵はいないようです。
後方にいたはずの敵魔法使いたちがいつの間にか前に出ていて、何かを地面に投げました。するとそこから武装した骸骨に見えるものが出現しました。その中でもゾーグさんに相対する正面には、骸骨の化け物、といっていい見た目のものも出現しました。
それは他の骸骨よりも倍以上は大きく腕が四本生えており、内二本は体と比べても大きな剣を片手で一本ずつ、二本持っています。それよりは小さい、胴体から生えているような通常の骸骨の腕は短杖とカイトシールドを持っていて胴体を守っているようです。短杖を持っている、ということは魔法も使ってくるということでしょう。
真ん中にいるのが大きくて、目立っていませんでしたがその周囲には腕が三本生えていて、両手持ちで大きな斧を持ち、もう一本の腕でスパイクシールドを持っているやつも複数います。
他の骸骨は普通にロングソードとラウンドシールドのようです。
「なんですか、あれは?」
「竜牙兵だねぇ。あの斧のやつも見たことあるよ。竜爪兵だと思う。真ん中の奴は噂でしか聞いたことなかったね、竜肋兵といったかな?」
「竜牙兵は聞いたことがあります。ドラゴンの牙を素材とした魔法で生み出す兵士、でしたっけ?」
教えてくれたアッケンベルテさんにさらに尋ねました。
「そうだね。同じように竜爪兵はドラゴンの爪を、竜肋兵はドラゴンの肋骨の先っぽの一部を使うらしいよ。竜爪兵を見たのも、竜肋兵の噂を聞いたのもケトロイダでだったから、決まりかもねぇ。あそこにはドラゴンがたくさんいるしねぇ」
アッケンベルテさんによると、ケトロイダでよく普及しているものらしいです。確かにケトロイダでは良く竜害が発生すると聞いたことがあった気がします。素材がよく取れるから発展したのでしょうか。それがテレーンドから来る、ということは、ですね。
魔法使いたちは再び後ろに下がりました。魔法使いたち自身は戦わないようです。もしかすると竜牙兵などの制御をしないといけないのかも。
「竜牙兵は強敵だ。人間の一般兵士じゃ歯が立たないだろう。竜爪兵は相当強い、でもゾーグ殿の敵ではないだろうが。竜肋兵はどうなんだろうね」
ミルトさんが動いています。オーク全体にかかるという魔法を使っているのでしょう。それに合わせてかオークの魔法兵も動いていますね。
ゾーグさんが吠えました。これもおそらく魔法と同様の効果があると言われているおたけびですね。
まず弓兵から骸骨たちに向けて矢が放たれましたが、全て防がれてしまったようです。皆盾を持っていますし、竜肋兵などは盾も使わず二本の大きな剣で防いでしまいましたわ。
それを見たゾーグさんが突撃しました。それとほぼ同時にオークの軍団も突撃を開始しました。




