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小競り合い

すでに戦闘は始まっているようで、母はわたくしを乗せたまま突っ込んでいきます。乱戦になっており、どちらが味方か分かりません……。と思いましたが、味方はどの方もきちんとした鎧をつけておられて、近くの方と連携をとっています。対して、おそらく敵の者は、鎧すらつけていないものも多く、また雑多な武器で相手を囲んで叩こうとしているだけで、実質烏合の衆ですね。そんなに戦闘を学んだわけでもないわたくしでも分かるレベルの酷さです。


こちらは母が馬で近づくだけで護衛の方々が敵を打ち倒していくので、付近の敵は逃げていってしまいました。後ろからオークの重装兵たちが迫っていますしね。


「追い払うだけでいい、追い打ちはいらない」


こちらが優勢になって敵が後方に逃げ出したので、こちらも残心しつつ、引いたようです。オーク軍団緒戦は役に立てなかった? いえたぶんオークの軍勢を見てびびったんだ、ということにしておきましょう。


先程の声はたぶんフェルディナンド叔父さんの声です。叔父さんも前線で戦っているのですか。


後方に陣地があって皆そちらに戻っていきます。天幕などは先程設営されたもののようですけど、陣地は昔からあるもののようです。確かに昔もこんな地形で柵もありました。


「関所の兵はどうなったか知っているか?」

「はい、奴らが突入してくる直前に開放されていたようで、全員戻ってきております。……どういうことでしょうね?」

副官らしき人と話をしているフェルデナンド叔父さんの方へ馬で近づいていきます。


先にハイテさんが接触しました。


「フェルデナンド様、聞いていた援軍を連れてまいりましたが、その、オリビア様も付いてこられています」


陣地内に設置されている天幕に入るところだった叔父さんがこちらを見ました。


「姉さん、どうしてこっちに来たんです? 屋敷で養生されていたのでは?」


母が先に下りて、わたくしを下ろしてくれます。


「だって、アクレシアが援軍として戻ってきてくれたんですもの。早く片付けたいわ」


「アクレシア?! 本当にアクレシアなのか?」


叔父と母は仲がよく、子供の頃母と一緒にこちらへ来たことがあったので、叔父もわたくしと面識があります。わたくしが遊びにこれたのはハインツ殿下の許嫁になるまででしたが。


「ご無沙汰しておりました。フェルデナンド叔父様」


「あ、ああ。美しく、強くなられたようだ。……もしかして援軍を率いているのはアクレシアなのかい?」

表情がコロコロ変わっておられます。わたくしのあれこれも知っていると思いますけど、全て飲み込んでくれたようです。


「ええ、そうです。ウァーリス家ご当主フェルデナンド・ウァーリス様。私は補佐としてついてきたアッケンベルテと申します。そしてこちらの方が、援軍であるオークを率いておられるミルト殿、そしてその配下ゾーグ殿です」

アッケンベルテさんが挨拶します。ミルト王はゾーグさんに肩に担がれています。


「は、話は聞いておりましたが、本当にオークが……。あ、いや、失礼。様子を見る限り素晴らしく統率された兵士たちだということは一目で分かります。ありがたいです。ですが、何を考えているのかテレーンドはまだ本気を出していないようで……。ああ、皆様こちらへどうぞ。軍議を開きたいと思います」


誘われてわたくしとアッケンベルテさん、ミルト王と母が叔父さんが入った天幕へ入ります。ゾーグさんはオークたちの指揮を取るようで、一瞬目配せされました。ミルト王を頼む、ということでしょう。


天幕に入ってから軽くこちらのことを説明してから、軍議というか状況の説明を受けました。


叔父さんによると、テレーンド公国とプロテア帝国の仲は良く、ウァーリス領もテレーンドと交流がよくあり、叔父さんはテレーンドを治める公爵ともお会いしたことがあるらしく、賢明な方だと評価されていたそうです。


しかし突然テレーンドのハウンド隊が国境関所に現れ、帝国側の関所に務める兵士を拘束したそうです。そこからテレーンドの方から通達も動きもなく、仕方なく兵士を取り戻すために兵を組織し、ここに陣を構え、いかにして救出するか、そしてテレーンドと対話できないか、と検討していたところ、テレーンドから先程の兵が現れ攻撃してきてため、やむなく応戦していたところ、だったそうです。


そして関所の兵は直前に開放されていて、大きく迂回して中途にある警戒塔に駆け込んでいたそうで、先程その連絡があったらしいです。

またテレーンドの兵は、おそらく罪人兵で捨て駒だと叔父さんは判断したようです。なので追い打ちをかけず、怪我人も連れて戻るようにさせたらしいです。


「ともかく緒戦はなんとかなりましたが、テレーンドの思惑がさっぱり分かりません。テレーンドは小国。兵力も正規兵は我らの五倍程度しかいないはずです。我らは壊滅するかもしれませんが、弱ったりといっても帝国中央の兵士はテレーンドの二桁倍はいるはずですし、各家も私兵を持っています。反撃されたらひとたまりもないことは公もご理解しているものと思います」


ミルト王はおそらく目立たないようにしているでしょうし、アッケンベルテさんも言う気配がないので、ちらりとアッケンベルテさんの方を見ると、促された気がしたので発言の許可をもらってから、叔父さんと母、叔父さんの副官らしき方に説明します。


「ケトロイダが動いているとの情報がありますので、おそらくテレーンドはケトロイダに弱みを握られたか何かで呼応させられているのでは、と思います。実際オークの軍団がいなければここに来たのは帝国の正規兵となって、ケトロイダと隣接するランダイオ領には援軍を送れなかった可能性もありますから」


「なに?! ケトロイダが動いていると?! そうか、こっちにもテレーンドにケトロイダがちょっかいを出しているのでは?という情報はあった。やつらの狙いは北で、こちらは陽動か、それならテレーンドの動きも分からないでもないな」


「陽動であるとは思いますが、ウァーリスを抜けられると皇帝直轄地である穀倉地帯へ簡単に侵入できるようになってしまいます。それは今の帝国にとって、とてもよろしくないことだとも思います」


「ああ、そうだなアクレシア。立派になったな。良からぬ話も聞いていたが、今こうしているのだし、心配はしなくて良いようだな。……となると、罪人兵を使ったことこそ陽動で、次は本格的な攻撃が来るかもしれん。私は、公が本当は我らを攻撃したくない、という風にとってしまうのだ」


「ありうると思います。やむなく攻撃せざるを得ないのかも。しかしケトロイダが本当に背後にいたなら、このままでは終わらないでしょう。緒戦でウァーリスを叩き潰さないように配慮した、とも考えられます。となると次以降はケトロイダに見せるための攻勢となるかもしれません」


「軍議中失礼いたします。関所で動きがありました。テレーンドのハウンド隊らしき部隊と魔術師若干名が我が領に侵入しました」

兵士が大声で報告しました。


「早いな。しかもハウンド隊に魔術師か。テレーンドに魔法兵力は少ないはずだし、ケトロイダには多い。これはアクレシアがいったとおりかもしれんな」

フェルデナンド叔父さんは落ち着いています。副官がいろいろと命令を出しています。


「アクレシアは確か魔法適正が高かったな。姪に頼るのもどうかとも思うが、アクレシアも一軍を率いてきたのだ。当然手伝ってくれるよな。それとミルト殿とアッケンベルテ殿だったか? お二人共魔術師だとお見受けするが相手に魔術師がいるようなので、お願いしていいだろうか? テレーンドに魔法兵力は少ないがそれは我らも同じことでしてね。姉さんも今更帰れとも言えないからアクレシアの護衛を頼むよ」


陣に戻って一時間ぐらいでしたが、再び出撃することになりました。

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