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信頼

ニンジアのホンゾさんがコルノーさんと一緒に入ってきました。コルノーさんもそのまま参加するようです。……参加というより護衛でしょうか? マリーさんはそのまま秘書のようなことをされていますが。本来の秘書官が戻ってきているんですけどね。けど本来の秘書官であるはずのマルガさんはどうも秘書というより副官ですね。


「すでにここに皆さんがいるということはすでに伝わっているようですね。いやぁお耳が早い、さすがですね」


「私どもは必死で情報を集めて今ですのに、外部であるはずのニンジアがすでに掴んでいる、ということこそ、さすがですね、という感想ですがね」


「まあそれは流しましょう。さっそくですが、テレーンド公国が動きます。帝国で対応できるのはあなた方しかいないでしょう。またケトロイダにアウムレッチも動きそうです。ランダイオ家は対応し、善処できるでしょうが、援軍がなければいつか押し切られるでしょう」


「ニンジアはそこまで把握されているのですね。そして帝国自身は動けない、とも……」


「ええ、なにせ皇帝に聖女が軍事行動の邪魔をするのですから、動きようがありませんね」


「私達のような帝都から離れた、独自権限を持つものしか動けない、というわけですか。ニンジアにそれを指摘されるのは悔しいですし、情けない限りですね」


珍しくホンゾさんの表情が動きました。この方、わたしくが対峙し攻撃もしたことのある方ですので、なんだかいつも緊張してしまうんですよね。だからじろじろと見てしまうので軽い表情の動きも見てしまいます。苦笑されたような気がします。


「……私ども赤の部隊は皆様、この皆様は砦長、いえ軍将スヴェン殿、オーク王ミルト様、そしてアクレシア嬢となっております、に陰ながら協力することになっております」


「ま、待ってください。どうしてそこにわたくしが入ってるんですか?」


今度は明らかに笑いしましたわ。


「私も上からそう言われているだけでして。詳しくは分かりませんね。ただ、あなたの動きはニンジア上層部も気にしている感じでしたね」


むー、なんだか面倒なことに巻き込まれている気がしないでもないですが、もうとっくに面倒極まりないことに巻き込まれている最中でしたわ。使ってくれと言うなら使わせてもらいましょう。


「分かりました。ではこういうのはいかがでしょう? 北方のランダイオ家の救援はこの砦の正規軍が向かい、オーク王ミルト様が率いるオークの軍勢はテレーンドへ当たるというのは。ミルト様には私も付き従いますわ」


「ワシは構わんぞ、しかしシア殿は軍務経験がおありで?」


「いえ、まだ通り一遍を学校で学んだだけですわ」


「その割には正しい考えですな。オークの軍勢はテレーンドに向けて進めても、帝都を横切る形になるのでランダイオ領まで行くのは困難でしょうからね」

スヴェンさんが賛同してくれました。


「あと、それとテレーンドに隣する領土はわたくしの母の実家であるウァーリス家の土地ですから、少しは土地勘がありますので」


「そうなのですか。ではアクレシア様にはオーク王ミルトとともにテレーンド撃退のご協力をお願いします。ウァーリス家に大きな戦力があるとは聞いたことがありませんから。アクレシア様がご一緒ならオークたちが誤解されることもないでしょうし、クァル殿もついてくる」


クァルも殿なんだ。そういえばわたくしもクァルが雄なのか雌なのか知りませんわ。まあどっちでも構いませんけどね。クァルはクァルです。


「儂もついていこう」

え? アッケンベルテさんが? プラウドアルターはどうされるのでしょう?


「ランダイオへはヴァルターやレレットステウが必須だろうし、となるとクレイタもそっちになり、ならイプゾーシンもそっちだ。儂しか動けるのがいないからな。そっちのリーダー代役はレレットステウに任せる。いいよな?」


「え? 俺が仕切っていいの?」


「いつも街では仕切ってるじゃないか。それに年齢も儂に次いで一番高いし、一番客観的にものを見られるのはステウだからな。儂さえいなければリーダーに向いていると思うぞ、若干カリスマが足りてないけどな」


「けっ! カリスマがあったら未だに冒険者なんかやってないで奥でふんぞり返ってるさ。まあいい。受けるぜ、良いよな皆?」

そのレレットステウさんの問いかけに真面目に答えたのはヴァルター様だけでした。……逆に、なんだかいい雰囲気ですわ。皆様年代が違うのに、信頼しきっている感じです。


わたくしは学園で、年代も同じでしたのに、こんな信頼できる友人や仲間がいたでしょうか? わたくし自身は聖女ラウラもハインツ殿下も信頼していたつもりでしたが、見事にそれは通じていませんでしたし。


けど今のわたくしはフリーダやエルノ、クァルやルファ、他にここにいる皆様は信頼できると思いますし、皆様もわたくしを信頼してくださっていると感じております。これほど幸せなことはありません。それは追放直後、たった一人になって身に沁みましたわ。わたくし一人では一週間も生きていけたかどうか。


「事態は一刻を争います。準備でき次第、皆出発してください。なおこの砦はマルガと少数兵士を残します。ミルト王、オークの手勢も少数残してもらっていいでしょうか? 毎日外で待機しているオーク十名は砦に入ってくる、という計算でお願いします」


「分かった。テグモスとスタムだけで良いな」

あらー、テグモスさん留守番になりそうですわ。でも確かに任せられそうな方はテグモスさん以外にはオークヒーローゾーグさんしかわたくしも知りませんしね。ゾーグさんはとても強いですから、ついてきてくださるのは助かりますし。


「ああ見えてテグモスも強いんじゃよ」

わたくしが微妙な表情をしていたからか、ミルト王がわたくしの方を見て、そうおっしゃいました。

テグモスさんも精鋭揃いのオーク軍団の軍将ですからね。強さもあると思います。統率力もあるようですし、ミルト王の腹心という感じもされます。


「ではこの場は解散ということで。各自お願いします。ホンゾ殿ありがとうございました」


「私はいったん帰ります。いろいろとしておかないといけないことがありますので。ではまた、アクレシア嬢」



二時間という非常に短い準備時間だけでわたくしたちとオーク部隊は出発しました。

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