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急報

その商人さんは砦長であるスヴェンさんやプラウドアルターの面々、ミルト王、そして私の前でおっしゃいました。


テレーンド公国が戦争の準備を行っており、すぐにでも攻めてくるレベルだと。


「私は商人として貴国には大変お世話になっております。我が公国は関税が非常に優遇されておりますので貴国が生み出す生産物を他国に売る、もしくは加工して売ることで栄えてきました。そんな我が国が貴国に攻め入るのは不利益しか産まないと思うのですが、国はそうと決めてしまったようです。我が国を売るつもりはありませんが、私は帝国が今のままであり続けたほうがよいと考えております。ですので貴国の大臣様の要請を受けてなるべく安く物資を持ってこさせてもらったのですよ」


「それは……貴国の者は全員知っているレベルの話なのですか?」


「いえ、私が商人として個人的につかんだ話です。国境付近に公国の兵士が集まっていますし、虎の子であるはずのハウンド隊がいるとの情報も掴んでいます。ハウンド隊が維持できているのも貴国から安くて質のいい家畜を輸入できているからですのにね」


帝国の南、帝都が中央よりやや北にあるのですが、南は大穀倉地帯となっていて、食料の自給率は三00%を超えていると聞いていましたし、北側は畜産向きの土地で、特に繁殖が得意らしく、多くの優秀な畜産を輸出しています。これが周辺諸国への強みでもありましたからね。帝国が荒れると困る国も多いはずなのです。テレーンド公国のハウンド隊も元々帝国のハウンドの血統のはずですし。


元々そのような関係の国ですので、帝国としてはあまり警戒している国ではありませんし、正直公国は他国への緩衝国だと帝国は認知していたと思います。しかし大穀倉地帯へすぐになだれ込める位置関係ですので、万一攻められるとかなり危ないですわね。


「公国の意図が分からんな。我が帝国にある意味依存している国だぞ。それに国力が違いすぎる。公国は小国だ。単独で動くとも思えんし、他国と連動しているのか? でないといくら帝国が弱体化しているとはいえ、総力で反撃すれば速攻で落とせるはずだぞ」


スヴェンさんがもっともな感想を述べました。


「ありがとう商人殿。たいへん助かった。今後は個人的にも贔屓にさせていただきたい」


「我が商会はテレーンド公国出身ですが、こたびの話がお役に立てたのなら、今後もなんなりとご用命いただけるとありがたいものです」


「分かっている。私自身は平民だが、ここにいらっしゃる方々はどなたも力を持ったお方たちだ。きっと貴殿の商会にも利益があることだろう」


何度も頭を下げながら酒保商人の商会主が部屋から出ていきました。


「たいへんなことになっておるのう」

ミルト王が静寂を破ってのんきなことをおっしゃいました。……あるいはわざと、でしょうか?


「ええ、帝国としてはたいへんなことです。が軍務大臣は先手を打っておられました。当方が方面軍となっているため、こちらの判断だけで即応が可能です。そしてこれも軍務大臣の読みなら恐ろしい限りなのですが、今はあなた方オークがいます。テレーンド程度の小勢であればオークの力であれば十分対応可能で、我らに恩を着せることが出来ますし、我らは正規軍を他の大国の呼応に対処させることが出来ます。オークがいなければテレーンドへの対処に精一杯だったことでしょう」


扉がノックされマリーさんが誰かを引き連れてやってきました。

「失礼します。秘書官のマルガ様がたった今お戻りになられ、緊急の報告がある、と」


そう言ってマリーさんと明らかに身なりが良いマルガさんという方が入ってこられました。マルガさん、おそらく貴族ですね、どうして平民である砦長の下で秘書官として動いているのか分かりませんが、身なりといい物腰といい貴族のものです。


マルガさんがスヴェンさんに目配せしましたね。

「構わん、ここにいる方々は我らの味方だ」


「はっ、帝都へ出張中私の元へも発令書が届きました。たいへん驚きましたが、まずはおめでとうございます。スヴェン様も貴族の仲間入りの資格を得ました」


「私へのあれこれはいい。緊急の報告とは何だ?」


「はい、皇城はすでに何者かに占拠、いえ、これは言い過ぎですね。手綱を握られている状況と判断しました。しかしながら帝都はまだ機能しております。各種ギルドは一部握られているようですが、まだ一部です。幸い帝都防衛の軍は独立しておりますので、しばらくは大丈夫かと思われますが、内部から崩されていっております。新しく軍務大臣になった元宰相がなんとか食い止めてはおりますが、予断は許しません」


「それが緊急の報告か?」


スヴェンさんが私には見せたこともないようないらだちの顔をされております。マリーさんが言っていたスヴェンさんはこちらの方ですね。


「いえ、これは前提です、初見の方も居られましたので、前提の話をしないと理解できないかと思いました」


「いらぬ気遣いはいい。私は緊急の報告とは何だ? と聞いたのだ」


マルガさんが顔を青くしています。貴族のようですのにスヴェンさんに完全に飲まれていますわね。……むしろマルガさんが貴族平民を問わない方であると分かって、私の緊張も少し和らぎました。


「はっ! 申し訳ありません。ケトロイダ共和国が軍をこちらに向けております。またアウムレッチ王国もそれに呼応しているような動きを見せております」


「やはりか。こっちの動きはどうなんだ?」


「皇城に動きはありません。ケトロイダの動きに対応しているのは軍務大臣殿と帝都防衛の軍将、ケトロイダに隣接する領土を管理しているランダイオ家だけかと。ランダイオ家はまだこちら側です」


「やはり呼応していたか。よくやった、ご苦労。貴様のことだから準備はできておるのだろう? 帰還も早かったし」


「はい、我が家の力を使って、準備しております。もちろん我が家もこちら側です。最近の皇帝の言動はおかしすぎます」


「滅多なことは言うな。そんなことだから軍務大臣殿に反乱分子と見なされかけるのだ」


「え?!!」


「それはもういい。片付いたことだ。今軍務大臣殿は全面的にこちらの味方だ」


スヴェンさんが立ち上がって、頭を下げた。


「皆様、もうしばらくの時間よろしいでしょうか? 引き続きご相談したいのですが」


そのタイミングでまたノックがありました。


「会議中失礼します。ニンジアのホンゾ様が至急砦長とお会いしたいとこちらに来られております」


この声はヘルムの兵士コルノーさんですね。


「さすがニンジア、耳も良いし足も早い。どうせそこに居られるのであろう? 今すぐ入ってもらえ」

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