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メイド

「えっと、じゃあメアリでいい?」

何の考えもなくとっさに思いついた名前にしました、けどこれでいいのかしら?


「はい、分かりました。アクレシアお嬢様、私の名前はメアリということで、よろしくお願いします」


頭を軽く下げて挨拶するさまは、本当に女性にしか思えませんでした。


「えっと、女性として扱ってもいいのです、よね?」


「はい、むしろそうしてください。この見た目で男として扱われても困りますので。元々男に変装している時以外は、女性っぽく振る舞っていますので、そっちのほうが私にも自然でありますので」


「そう、なのね。分かったわ、メアリ」


「と、いうことですので皆様も私のことは今後はメアリとお呼びください」


「知ってはいたけど、ほんと化けるよなぁ、ヒェッツ、いや今はメアリか」


トゥーモがそう返します。ややこしいですけど、彼らにとってはヤザヒェはヒェッツだったようですけど、今後はメアリになったようです。本人も望んでいないようですので、メアリだけ覚えておけばいいのでしょう。


「よし、それじゃトゥーモとティユは部屋の外で見張りだ。順番はお前たちで勝手に決めな。メアリは私やイプと同室になって隣の側仕え部屋だ。寝台はまだ二つしかないから、すまないが今日はメアリは毛布だけになるがな」

アッケンベルテさんが今夜の体制を決めました。


「了解」

トゥーモとティユがこちらに挨拶をしてから部屋を出ていきました。


「はい、慣れておりますので問題ありません。それと」


そういってメアリが少し移動しました。


「ベッドメイキングしていいですか? ティユが動かしたせいで乱れておりますので」


「え? 別にいいけど」


「じゃあその腕前を見せてもらおうかね。イプはもう寝てもいいぞ」

アッケンベルテさんもベッド前に来て、そんな事を言います。貴族だった頃は確かに毎日してもらっていましたが、野外で寝ることを覚えたあとではけっこうどうでもよくなっていました。


「そっか、じゃあ私は後番ってことで先に寝かせてもらうわ。メアリ、頼むから裏切るなよ?」

イプゾーシンさんが一瞬メアリさんを強く睨んだあと欠伸しながら隣の部屋に入ってきました。


「この後に及んで裏切る理由がありませんので、うかつなことはしませんよ。こう見えて結構アクレシアお嬢様のことも気に入っていますしね」


「そうかい、そうだったら儂も楽でいいから、その調子で頼みたいね」


メアリがてきぱきとベッドメイキングをしていきます。実際にそれをしているところを見るのは初めてですが、すごいものですね。そうなっているのが当然だったあの頃は恵まれていたのだと、今では本当に痛感できますわ。気にならなくなったといってもやっぱりきれいで整っている方がいいのは確かですもの。


「よし、ちゃんとしたみたいだね。メアリももう寝ていいよ。今日は担当無しで朝まで寝ていいからね」


「それじゃ今日は私達ももう寝ましょうか、エルノ、フリーダ」

エルノは返事できたけど、フリーダはもう半分寝てしまっていたようで、返事はありませんでした。


「クァル、ありがとね」

クァルの背中にもたれて寝ていたフリーダを両手でかかえて、メイクされたばかりのきれいなベッドへ寝かせます。


その間にメアリもアッケンベルテさんも退室されました。着替えは基本自分で行うと、先にメアリには言っていましたから。

フリーダはもう寝てしまったので仕方ありませんが、私とエルノは寝着に着替えます。エルノたちコボルドには寝衣の習慣はなかったみたいですが、二人共気に入ってくれたみたいです。実際のところエルノもフリーダも寝衣に着替えなければならないような衣装ではないので、若干楽になる程度ですが、私の普段の服装で寝てしまうとたいへんなことになってしまうのはずっと体験していましたから、人目があるここでは着替えています。実際に寝衣で寝たほうが楽ですしね。



一週間ほど経つと私も皆もトゥーモ、ティユ、メアリがいる生活が当たり前になってきました。


その間にオークたちは大部分が砦に入ってきて、オークヒーローのゾーグさんや軍団長のテグモスさんがミルト王と合流して、さらにプラウドアルターさんたちの負担が減りました。

大きいのがオークの軍勢が砦の主な任務であった、南の監視をほぼオークたちだけでこなしてくれることでした。まだオークが全員砦に入るには数日かかりますので、まだ外に残っているオークがいて、彼らが警戒してくれていますし、オーク自身の補給も順調に南から受けているみたいですので、オークたちが来る前より物資が集まってきています。


オークたちは砦の外での監視や魔物たちの間引きを続けるとしていますので、ほぼこの一週間で陣容は整っています。砦に入ったのは精鋭中の精鋭で、精鋭たちは順次砦の外に作られたオークの駐留地でその役目を行ってくれています。これもミルト王の、今後帝国がオークたちに協力してもらうための布石だと笑っておられました。スヴェンさんの目は笑っていませんでしたが、オークたちに感謝はしているようです。


この前やってきた酒保商人も砦に変化を与えました。彼らは食料の大量の補充以外にも武具の素材や道具などを持ってきてくれたのです。これらのおかげで砦にあった修理工房を大幅に強化でき、またオークたちもそれらを持ち込み始めているので、砦で武具の生産ができるようになりつつあります。


そしてなりより商人さんは情報も持ってきてくれました。彼らは帝国所属ではなく隣の一国テレーンド公国から来た商人でした。


そのテレーンド公国が対帝国への戦争の準備をしている、と。

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