軍
オークの王であるミルトさんが会議室に来られました。一緒に護衛を務めていた女戦士のイプゾーシンさんと回復術師のクレイタさん、それにミルトさんと同じところにいたら安全だということで同室していたフリーダとエルノの二人も一緒にきました。
フリーダはわーいといった感じでこちらに飛び込んできましたが、エルノはここにいる面々を見て、少々怖じ気ついたようです。やっぱり賢い子ですね。フリーダが賢くないという意味ではなく、です。
「ここの主たる面々と、お客人、このワシにも関わり合いがあるようですが、なんですかな?」
スヴェンさんに気軽に尋ねながらミルトさんが用意された席に座ります。イプゾーシンさんとクレイタさんもプラウドアルターの皆様と合流しました。
確かにミルト王のおっしゃるとおり、わたくしが知る主な方々が全員集合している感じですわね。
「このラメルキ砦に配属されている兵士はすべて新設される方面軍として再編成されることとなりました。その軍将は私となります。また性別、出身、種族を問わず、方面軍へ編成する許可もいただけました。ですので正式にオークたちを方面軍として編成できます。門の出入りも日に十名まで出入りの許可も頂いております」
「ミルト王に関しても、王として我が方面軍へ参加できる立場と地位が貸し与えられるようです。すなわち方面軍へ参加はしていただきますが、私の命令系統には属しません。独自で行動されても結構です。しかし口は都合上出させていただきますし、帝国の利益を損ねる恐れがあると考えられればあらゆる手段でもってそれを止めることになるでしょう」
「分かっております。ワシに帝国を乱す意思はない」
「ええ、存じておりますので強気で行かせてもらっています。正直オークの軍勢を我ら帝国の兵士のみで止められるとも思えないですしな」
「そんなものを招き入れてよいのですかな?」
「私には判断つきかねます。しかし軍務大臣殿はそうしなければならない理由をお持ちなんでしょう。願わくば仲良くやっていきたいですね」
「それとニンジアは傭兵という形で方面軍へ合流するようです。ただ方面軍に権限はなく、もっと上、軍務大臣様直轄となるようですね。ですので私達から直接ニンジアへ命令はできませんがお願いはできそうです。ああ、そこの三人、トゥーモ、ティユ、ヤザヒェの三名は、ニンジア採用は保留、方面軍へ参加すれば試練続行だそうです」
三名は驚き、ホンゾさんの方を見ました。ホンゾさんは表情一つわからない、平坦な顔をされていて、三名は軽くうなだれていました。そして三名とも方面軍への参加を承諾しました。
捕虜になっていた三名の処遇が決まったところでわたくしには解散が伝えられました。残りは関係のあるもので細かいところ、兵糧とか補給とか配置とかの、を詰めるための会議となるためみたいです。ああ、フリーダとエルノの扱いはヴァルター様のペットで代わりはないようですが、方面軍の人員としても登録するとのことでした。より良くなって事情の知らない方にも説明しやすい肩書がつくようです、良かったですわ。クァルも前の方針で変わりませんが、登録されるようです。ドラゴンが軍に登録されるのは大変珍しく、貴重な戦力になるかもとのことです。クァルの意思次第ですが。
それと軍務大臣がわたくしのお父様で間違っていないようです。さらっと聞いたところ、宰相から軍務大臣に飛ばされてしまったようですわ、……絶対にわたくしのせいですよね。けどお父様は現在、軍務大臣としていろいろとやっておられるようですし、今わたくしが心配し、悔やむのは違う気がしますので、とりあえずおいておきますわ。
兵士に見送られて、与えられている部屋に戻りました。普段でしたら戦闘訓練やなんやかんやと忙しいのですが、今は先程の報を受けてか、砦全体が忙しくしておられるようです。フリーダの裁縫の先生であるエクセンドーラさんも所要で今日は休みとのことでしたので、本当にやることがありません。
「今日はもうやることがなさそうですわ。クァル、こっちにきて」
部屋の隅に座ろうとしたクァルを部屋の中央へ招きます。クァルは、クァと良い返事をして中央でうずくまります。
「森で、雨の日とかこうしてたよね。久々に今日はみんなでゆっくりしましょ?」
森で生活していた時、雨に振られるとエルノやクァル以外は外には出られないし、かといって小屋の中でやることもあまりなかったので、こうしてフリーダと一緒にお話をしていたりしました。今回はエルノとクァルにも参加してもらいましょう。
クァルの大きな体に背中を預けて座ります。そんな私の両隣にフリーダとエルノが座ります。クァルは器用に首を伸ばして頭だけこちらに持ってきます。
「こうやって4人だけってのも久々ね(本当は五人だけどね、ルファ)」
今は人手不足なせいか部屋の中に護衛はいません。ドアの外にはいるみたいですが。
ルファの声はわたくしとクァル以外には聞こえませんし、クァルの声はルファ以外には予測もつきませんが、五人でいろいろと他愛のないことを話ししました。
少し気になったのは将来についてでした。わたしくしも今は将来が一切見えていませんが、フリーダもエルノも将来が見えないようです。エルノ的、というかコボルド的にそんな遠い未来のことなんか分からないから考えても仕方がない、とのことでした。
確かに森で生活していく分にはそんな未来のことは考えても仕方なく、せいぜい一年先程度でしょう。けど人間の領地であればもっと先のことを考えてもいいはずです。
……けどフリーダもエルノも土台がないのですよね。わたくしが土台にならなくては。ですからまずわたくしが安定しないといけませんよね。
わたくしが安定するには……今のところ、ヴァルター様についていって、この帝国を変えていくことに付き合うことでしょうか? けどそれにもまだ一年近くありますし、方面軍とかニンジアとかも気になりますわ。
『結局シアは、どうなればいいと思うんだ?』




