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侵入者

それから、数日は平穏なまま過ぎていきました。



エルノとわたくしはイプゾーシンさんからは基礎訓練を、武器の扱いについてはヴァルター様からご指導を受けていました。イプゾーシンさんは基本的に斧や槌などの重量武器の扱いに長けておられて、重量武器に比べれば軽い、剣などの刃で斬るタイプや突く武器はヴァルター様の方が扱いを分かっているから、だそうです。



わたくしにとっては、基礎訓練がとても厳しかったですわ。もちろん学園でも似たような訓練はやりましたが、もう強度もかける時間も全く違いました。学園当時のわたくしでは耐えられなかったのではないでしょうか。しかし長い期間の森での生活のおかげでだいぶと力も耐久力もついていたようです。筋肉がついたようには見えないのですが、見えない部分についていたようです。



フリーダは、エクセンドーラさんというわたくしより少し年齢が上程度ですのに貫禄があるというかすごくお姉さまっぽい方から裁縫を教えてもらっています。


わたくしは趣味でやっていただけ、フリーダは独学でしたので、エクセンドーラさんに基礎から教えていただいております。


エクセンドーラさんは今は魔法治療隊という部署の隊員をされているらしいのですが、村の針子であった母親の元で育ったので、針仕事は一通り仕込まれている、とおっしゃっていました。近所にコボルドの集落があって取引があったため、コボルド語を多少話せるらしいです。



帝国国内にコボルドがいること自体知りませんでしたが、エクセンドーラさんがおっしゃるには、地方の村には付近にコボルドが住んでいることがあり、その際にはお互いに共生関係ができるとおっしゃっていました。帝国内にいるコボルド族は比較的人間に友好的でもあるらしいです。



子供のころにコボルドの子供と一緒に遊んだことがあるとおっしゃるエクセンドーラさんは、フリーダはもちろんとしてエルノもとても可愛がってくれています。


回復術師でもあるエクセンドーラさんは、都合がいいとスヴェンさんに言われて、戦闘訓練にも付き合ってくれます。マリーさんが二人になった感じでわたくしたちの相手専属に近い立場になってくれたようです。



クァルは、ここぞとばかり惰眠をむさぼってくれているようです。今までずっと活躍してもらっていましたし、ここではやることがないのですから、こんなときぐらいゆっくりしても罰は当たらないと思います。出会った時から飢え死にしそうとかひどい目にあってましたしね。よく食べ、よく寝ているせいか、また少し体が大きくなったような気がしますわ。



ルファとは夜に、クァルや一緒のベッドで寝ている、フリーダやエルノを寝かしつけてから、主に新たな魔法を教わっていました。今はクァルがいるので、同じ部屋にイプゾーシンさんやアッケンベルテさんは中の扉でつながっている、貴族付きの側仕えや護衛が休むために用意されている部屋で寝ておられます。



この日は、魔法習得に時間がかかってしまって、だいぶと睡眠時間を削ってしまった日でした。


まだうとうとの状況だったから良かったのでしょう。


森での生活が長かったせいでもありますし、別に困らないので寝る際は警戒の魔法をかけているのですが、この場所に来てから初めて警戒の魔法が発動してしまいました。


何者かがゆっくりと近づいてきます!


しかもありえない方向から! 方向は建物の外を指しています。


かすかに音が聞こえます。三階の外向きの窓からです。わたくしは寝る際にも近くにおいてある伸縮する槍を掌に握ります。魔法発動体の短剣も近くに置いていますが、寝たままそれを取ってベッドに入れることはできませんので、我慢します。



窓がほぼ音を立てずに開いたのが分かりました。かすかに風の音が聞こえて、空気が流れてきたのが分かったので。警戒の魔法はすでに役割を終えたので止めました。五人か六人、人型のものが付近にいます。



気配は消しているのか、そこに誰かがいるはずなのにそうと感じません。ですが、わたくしはそこに誰かがいると確信しています。槍をギュッと握り込み、いつでも伸ばせるようにし、跳ね起きる準備をします。



覚悟を決めて跳ね起きようと思った時、扉が開いて、イプゾーシンさんが吶喊しながら武器を振るったようです。わたくしも慌ててベッドから跳ね起きました。幸いフリーダとエルノは、すぐに目が覚めたようで、ベッドから起きました。



すぐに外の下から何かが落下した音が聞こえました。

悲鳴などは聞こえませんでしたが、入ってきた誰かを入ってきた窓から叩き落としたように見えたのですが。落ちた方は大丈夫なのかしら?


扉の向こうにはアッケンベルテさんがいて、魔法を使う体制になっていました。すぐにわたくしたちに魔法が飛んできました。どうもわたくしたちを守る魔法のようで、小さな魔法障壁がわたくしたちの前に現れました。



イプゾーシンさんの武器は外から押されてイプゾーシンさんが体勢を崩しました。訓練中はいっさいブレることがなかったのに、これが実戦ですか。全身黒ずくめの人型が次から次へと入ってきます。もう静かに入るのはやめたようです。



「戦士は三人が抑えろ、お前は魔法使いのばああを止めろ。私が目標を……? おい、目標はどこだ? 若い女とコボルドしかいないじゃないか?」


言葉や意味は帝国と全く同じではありますが、イントネーションがわずかに違う気がします。



「目標がいない。撤退するぞ、適当にあしらって戻ってこい」


この侵入者の指揮官みたいな人がわたくしたちを一瞥して興味をなくしたようです。けど侵入者です、逃さないほうがいいと思います。のでその場からは動かず、槍をわたくしが持てる程度の長さまで一気に伸ばして攻撃します。


しかしその指揮官はわたくしの不意打ちをなんなく払い除けました。

長くしたままの槍を保持しつづけることは出来ないので、当たらなかった時点で即座に短くひっこめていきます。


「ちょっとその武器には焦ったが、嬢ちゃんの腕では私に当てることは出来ないな。まあ今回は嬢ちゃんたちに用はないから帰らせてもらう」



イプゾーシンさんは三名に取り囲まれていて思うように動けず、アッケンベルテさんも一人と睨み合っています。フリーなのはわたくしたちだけなのでなんとかしたいのですが、実力があまりに及んでいないようです。


それにわたくしが積極的に動いてしまうと、後ろのエルノやフリーダを巻き込みかねません。二方膠着状態でわたくしだけ侵入者を逃しかけています。



クァルが思いも寄らない速度でイプゾーシンさんを囲んでいた侵入者に飛びかかりました。


といっても下から滑り込むように近づいて、尻尾で彼らの足を払ったのですが。……払ったというかぶん殴ったと言ったほうが良さそうで、一人はきれいに転びましたが、他の二人は下手に受け止めたり避けようとして尻尾の衝撃力をもろに受けてしまったため、骨折してしまったようです。


一瞬苦痛の声を出しましたが、それだけでした。訓練されている相手のようです。そんな隙をイプゾーシンさんが逃すはずなく、こけただけのものには、痛烈な追い打ちで気を失わせ、足を砕いてしまったものはそのまま端に移動させるように蹴りを入れ、武装解除させていきました。


アッケンベルテさんを一人で抑えていた侵入者は、その騒動で不利を悟ったのか、その場からアッケンベルテさんの目の前で消え失せたようです。



クァルは私が相手していた指揮官に飛びかかり、そのまま窓から転げ落ちてしまいました。途中でクァルは自らの翼を用いて飛びましたが、指揮官はそのまま落ちたようです。


わたくしはあわてて窓から下を見ます。先に落ちたと思われる黒ずくめが指揮官を受け止めたようで、二人共ピンピンしていました。クァルは飛びながらそんな彼らにブレスを吹きかけました。



クァルの炎のブレスは当たったと思ったら大きく膨らみ爆発しました。やったクァルがびっくりしています。



それよりほんの少し前に異変に気づいた砦の兵士たちが、わたくしの部屋へ何名もきていましたが、鍵をかけていたため入れず仕舞いでした。爆発音を聞きつけて集まってきた兵士もいましたが、彼らは誰ともすれ違わなかったようです。なのにクァルが狙った爆心地に侵入者の死体はなかったようです。


見えたのは全部で六人、三名負傷で取り押さえ、三名は取り逃がしました。取り逃がした三名のうち一人は指揮官らしかったので残念です。

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