語学
「と、いうわけみたいです」
ルファに聞いた予測を、さもクァルから聞いた事実のように答えました。でもこころなしかクァルもそうだ、と言っている感じがしますわ。
「スピリットドラゴンにはそんな能力が備わっているのですね! ああ、素晴らしい……!」
クレイタさんが何故か興奮しておられ、ヴァルター様に落ち着くようたしなめられていますが、落ち着かれる気配はなくじりじりとわたくしとクァルの方に近づいてきています。
クレイタさんがこちらまで近づいてきた、と思ったらすごい音がしてクレイタさんの頭をイプゾーシンさんがぶん殴りましたわ。
「お前は、そういうキモい動きするな、と言っただろう?」
そしてそのままクレイタさんの首をイプゾーシンさんの太い右腕で前から締め上げつつ、引きずって引き離してくれました。それまではクレイタさんもなにか言っていましたが、そうなってからは首を絞められているせいか、何もおっしゃらなくなりました。同時に顔も青くなっておられていましたが、大丈夫なんでしょうか?
わたくしもクァルもびっくりして、じっとことの成り行きを見つめてしまいました。
「ま、まあ、そういうことでしたら、防衛に穴が空いているというわけでもなさそうですし、一安心しました。そしてドラゴンの底の深さを思い知りましたよ。私どもでどうにかなる相手ではない、ということですね。そのスピリットドラゴンとの友情を築かれたアクレシア様には改めて感服します」
「そうさね、彼? 彼女? どちらかは知らないが、儂ら五人がたばになってかかっても、こちらに数人の犠牲が出そうなぐらいには強いみたいだしね。アクレシア様の護衛はお譲りしますよ。ああ、だからといって護衛から外れるつもりはないですが。あとコボルド語なら儂は多少話せるので、その子たちに人間の言葉を教えましょう。アクレシア様にこれからも付き従うつもりでしたら今後は必須になるでしょう?」
アッケンベルテさんがありがたい申し出をしてくださいました。フリーダとエルノにこそっとそうなることを伝えました。
「さて、こちらからは以上です。アクレシア様の処遇も含めてクァル殿とコボルドの二人への対応もそれなりに時間がかかると思いますので、その間の生活は私が保証しましょう。ああ、もちろんこの場にはおられませんが、オーク王ミルト殿も同様です。ではこれで解散とします。また進捗がありましたらご報告申し上げます」
これで解散となりましたのでクァルとフリーダ、エルノを引き連れて、わたくしにあてがわれた部屋に戻ります。帰る際、クァルに爪を立てないで歩くようにいいましたが、今にして思えばクァルはコボルドの集落のときからそうしてくれていた気がします。
部屋に戻ってから、クァルは部屋の真ん中でくるまったので、フリーダとエルノはクァルを背もたれにして座って、わたくしはちょうどよかったのでベッドに腰掛けて、今後のことを話しました。
今までの生活のように、生きるためにやらなければならないことがないので、これからの生活は変えていかなければなりません。狩りに行く必要がないのです。それは楽なのですが、たぶん特にエルノには退屈な生活になってしまいそうです。ですので皆のやりたいことを聞いて、エルノの希望を護衛として部屋に入っていたイブゾーシンさんに伝えました。
とりあえずエルノは、語学の勉強の合間に戦士としての修行をすることになりました。イブゾーシンさんもですがヴァルター様も教えてくださることになりそうです。フリーダの希望は裁縫を学ぶことでしたので、エルノと同じく語学の勉強の合間に裁縫が得意な兵士に教えてもらえるように、マリーさんに頼むつもりです。今はマリーさんおられないので。
わたくしは、空いている時間は二人のどちらかに付き合うことにしました。森の中でいろいろと戦いはしましたが、学校で学んだだけのレベルでしたので、凄腕の冒険者の方から教えを受けられる機会など今後はなさそうですし、裁縫もその技術を知っておいてもいいと思いましたので。
クァルだけは勝手に動かれても困るので、時々運動のために外に出ることを許されただけで、基本常に私の部屋で待機となりました。なのでわたくしを含めた三人で一緒にクァルと遊ぶ時間を作ろうと思っています。
お昼はわたくしとフリーダの分だけ部屋に届けてもらいました。エルノは一日一食ですし、クァルは多く食べる時でも一日二食でしたので朝と晩にしてもらいました。
護衛のお二人は交代で食べにいかれるようです。先にイブゾーシンさんが行かれました。
言葉を教えてくれるというアッケンベルテさんがすぐに授業、というか教えをフリーダとエルノにしていただけました。
「いいかい、二人共。人間の言葉をよく聞くんだよ。そして行動もよく見るんだ。そうしたらその言葉と行動がつながっているものが見えてくるはずだ。それを覚えるんだよ。よく聞いて、よく見るんだ」
わたくしはどちらの言葉もルファのおかげでちゃんと全部解るので、勉強時はできるだけ付き合うつもりです。実際、アッケンベルテさんの教えはすごくためになると思いました。アッケンベルテさんによると、言葉を持たない犬や猫でも、それである程度人間の言葉を覚えるらしいです。
しばらくしたらマリーさんが来られたので、早速先程の、裁縫がうまい方でできればコボルド語が話せる方」というちょっと厳しい条件の要望をお願いしました。すると最適な人物がいると太鼓判を押してくれました。ので、その方にそういうのがお願い出来るか、念の為、本人とスヴェンさんの許可を求めるため、またマリーさんは去っていきました。




