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門の向こうに残してきたフリーダたちは少し心配だけど、オークの駐屯地のような待遇を受けることができて、かなりの緊張がほぐれましたわ。やっぱり温かいお湯は正義なのですね。よく今まで我慢できていました。お湯のお風呂に入るなんて当然のことだと思っていましたが、本当に貴重で素晴らしいことだったのだと、改めて実感できましたわ。



それに食事も、ここに前に来たときは野性味あふれる食事でしたが、わたくしとミルト王には貴族対応のお食事を振る舞ってくれましたわ。前に来たときは犯罪者扱いだけど貴族でしたのに、もうすでに貴族ではないはずのわたくしを貴族扱いしていただけるのはありがたいです。



さすがに寝室はミルト王とは別で、プラウドアルターの女性陣、女性戦士のイプゾーシン様と、魔法使いのアッケンベルテ様が護衛として私の寝室で一緒におやすみになることになりました。一応ここは軍の砦で兵士が見張っているので、それでいいだろうとのことです。


ミルト王には同様にプラウドアルターの男性陣、戦士で第一皇子であられるヴァルター様と回復術師のクレイタ様が護衛についたようです。ここで留守番されていたおじさんは、他にやることがあるので別行動、だそうです。



この日はオークの駐屯地なみにふわふわなベッドを独り占めしてぐっすりと寝かせてもらいました。


次の日の朝、身だしなみを整えていましたら、スヴェンさん自らがやってきました。



「朝早くに申し訳ございません、アクレシア様。急ぎこちらに来ていただきたいのですが」


「え? どうされました?」


「おそらくですが、先日アクレシア様がおっしゃっていたものと思われるドラゴンが来ておるのです。今はクレイタ殿が対応しておりますが、もしおっしゃっていたクァルというドラゴンであるなら、アクレシア様が来られるのが一番かと思いまして」



え? クァルがこっちに来てるの? わたくしも慌ててスヴェンさんについていきます。私のおつきになっているマリーさんや護衛となっているイプゾーシンさんやアッケンベルテさんもついてきます。



裏庭に案内されました。わたくしが寝ていた部屋のすぐ下ですね。見慣れたドラゴンがそこで兵士たちに囲まれていました。クレイタさんが一歩前に出て話しかけているようです。



「クァル?!」


「クァー!」



少し間延びした感じのこの鳴き声は間違いなくクァルですわ、どうやってここに来たのでしょうか? 国境には空まで結界で覆われていると聞いていましたが。


私が駆け寄っていくと、クァルはもう一度大きく鳴き、大きく翼を広げました。するとそこにはフリーダやエルノまでいるではありませんか。二人はクァルに抱きついたままでしたが、わたくしがいるのに気づくと飛び出してきました。クレイタさんや兵士が二人が近寄ってくるのを阻むために間に入りましたが、大丈夫ですと声をかけてわたくしも前に出ます。


「シアー」


二人がこちらに飛び込んできました。二人共すごく尻尾をふっています。



「もう、まだ一日しか経ってないわよ。待っててって言ったのに」


「クァル、こっち、きて、言ってる、クァルに近づいた。翼、覆い隠されて、気づく、ここにいた」


「すぐにシアの近くだって分かったぜ。クァルすごいな。しゅんかんいどう、っていうんだろ、これ」


「待って、待って待って。そんな一度に言われても分からないわ。それに説明しないといけないところだから。少し待って」


二人に抱きついて、背中をぽんぽんと叩きならが頼み込みました。二人共すぐに落ち着いてくれましたわ、さすがです。



クァルもゆっくりと翼をたたみながらこっちに近づいて首を伸ばしてきたので、頭をなでてから喉をさすってあげます。気持ちよさそうな顔をしてクァルも落ち着いて止まってくれたようです。



「スヴェンさん? どうやってか分かりませんが、入ってきてしまったようです。お目溢しできますか?」


「彼らがアクレシア様がおっしゃっていたドラゴンとコボルドですね。……本当に一人は人間っぽいですね。いやアクレシア様を疑っていたわけじゃないですが」



そう言ってスヴェン様が一歩前に出て、クァルを囲んでいた兵士たちを下がらせてくれました。


「お前たち、……そうだな、一階の広間を片付けてきてくれ。そうだ、このドラゴンが入って我らが話ができるようにだ。あそこなら食事も出しやすいだろうし、床が石のままだったはずだ。ここには二人でいい。残りは急いで準備してこい」


てきぱきと兵士たちを分けていきます。


「マリーは残りのプラウドアルター殿を集めてそこへ。お前はコルノーにミルト氏の護衛をするよう伝えよ」



「さて、積もる話も、一日程度ではそうはないでしょうが。コボルドたちはどうにかなると思いますが、ドラゴンとなると野生であっても管理番号が付けられているぐらいですからな。なんとかしなければなりません」



「管理番号、ですか? しかも野生のドラゴンにまで?」


「ええ、もちろん人間が発見、観察、特徴を捉えることができたものだけですけどね。管理番号がない竜も多くいて、その中から竜害を起こす個体が現れてしまいますので、彼らの動向を知るのにも必要なのです。中には人間に友好的なものもおりますし、動物並みの知能で人間の土地を荒らすものもおります。災害みたいなものですから時には死人も多く出ますから、こっちも必死ですよ。ですからこのドラゴンはなぁなぁにはできないかと思います」



そう話しつつ、クァルと二人のコボルドを引き連れて、指定された一階の広間へ行きます。普段は兵士の食堂みたいです。着いたらすでにドラゴンが入って話し合いがしやすいように片付けられていて、入り口に見張りの兵士が二人いるだけでした。



スヴェンさんがまっさきに入り、ついで私達、クァルにエルノ、フリーダ、護衛の戦士イブゾーシンさんと魔法使いアッケンベルデさん。回復術師クレイタさんが続きます。遅れてプラウドアルターのいずれ皇太子となられるヴァルター様と部屋に残っていた軽戦士のレレットステウ、さんでしたか、彼らとともにマリーさんが部屋に入りました。他にも連れてきたと思う兵士の皆様も見かけましたが、部屋には入らないようです。



「さて、揃ったようですね。朝食を用意させてますので、食べながらで意見をまとめましょう」


スヴェンさんが仕切ってくれます。



「まず、コボルドについてですが、身元が判明、というか保証される方が複数おられるので特別にここに居住してもいいこととします。ただし書類上の扱いはヴァルター様のペット、ということにさせていただきます。それ以外ですといろいろとやっかいですので。よろしいですか? ヴァルター様、それとアクレシア様」



「ペット? コボルドをか? それはあんまりじゃないのか?」


「あくまで書類上は、ということですヴァルター様。人員とするといろいろとややこしくてやっかいですので。それにヴァルター様のペットとすることで、飼い主が、すなわち庇護者がヴァルター様となれば誰も文句は言ってこないだろう、ということです。アクレシア様にしてしまうと、アクレシア様がここにいるという証拠となってしまいますので」



なるほど、筋は通っています。ペットというとなんかアレな感じですが、あくまで書類上と言っておられるので、扱いは大丈夫なのでしょう。

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