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利害

ミルト王が詳細にスヴェンさんにオーク側の経緯を話されました。わたくしも聞いていない内容が多いですね。


どうもミルト王が王となって数多くあったオークの部族をまとめ上げてしまったために人口がとても増えてしまったようです。それまでは貧しい狩猟生活と部族同士の抗争でかなりの数のオークたちが死んでいたため、南の狭い土地でなんとかなっていたらしいのです。


ミルト王はオークたちに平和と技術をもたらし、特にミルト王ご自身がもともと鍛冶屋だったため鍛冶技術がたいへん伸びたようです。当時のオークは農耕に力を入れておらず、農村で育ったミルト王以下の技術水準しかなかったようで、ミルト王の指導の元、農耕を推奨し、食糧事情が劇的に改善したのも人口爆発の一員だったようです。


南には海があり、海を渡ることも考えましたが、大型船の技術がオークたちにはなく、ミルト王にとっても専門外だったので解決できず、海流は都合悪く、また海には凶悪なモンスターが多数いたため、断念したようです。実際帝国には大型船の技術はありますが、南にはいかないはずですもの。理由までは知りませんでしたが。


各種鉱山はあったようで、鍛冶技術は上がる一方でしたようです。なので土地と木を求めて北の大森林を切り開いていっていましたが、そこで大型の亀、霧化するヘイドディタスと幾度も遭遇、オークたちの土地を荒らされたらしいです。死の荒野にいたはずのヘイドディタスが森の中にいるということは、このまま森を切り開いていったら、いつか死の荒野と合流してしまいかねず、そうでなくても森を抜けてくる奴らがいるかもしれない。せっかく平和になったオークの地は混乱したそうです。


そこで切り開いていった森を畑にせず、再び植林するようにしていって死の荒野から森を壁にするという方策だったらしいのですが、最近とうとう人口が増えすぎてにっちもさっちもいかなくなり、遠征を決めたらしいです。だから死の荒野を平定したいのですね。今後ヘイドディタスのように森に入ってこられたらオークたちの住む土地が危険にさらされてしまうから。そして移住も人減らしになりますし、移住によって人間の技術が流入すればさらに死の荒野を平定しやすくなり、死の荒野さえ平定できれば、当分は、少なくとも数世代はなんとかなるという考えのようです。


それに人間とまじって生活できるようになれば人間の土地に住めるかもですし、ミルト王個人はそうなれば嬉しいと思います。

問題は本当に、帝国がそれを許すか、にかかっていますわね。


「なるほど、オークの都合は分かりました。皇帝陛下がオークたちがもたらしてくれるであろう利益をどれほどだと考えるか、だと思います。そのへんはどうなのでしょうか?」


「今のオークの技術はワシが帝国にいた頃に習得していた技術の遥か上に行っておる。幸い南の地には優良かつ豊富な地下資源がありましてな。ですのでその資源も売りになるかと。もちろん帝国でも当時と比べれば技術は上がっておるだろうからどの程度優位、あるいは追いつけていないのかは分かりませぬ。ただこちらは一般兵士にも歩きやすいフルプレートアーマーを与えることができるだけの工業力があるのは売りになるかと」


「ほう、それは素晴らしいですな。フルプレートアーマーなど私も持っておりませんし、皇城の一部兵士と騎士様ぐらいにしか普及してしないはずです。それを一般兵士が運用しておるのですか」


「ええ、実際壁に向こうに五十名ほどの重装歩兵が来ておりますよ」


「それほどの重装の歩兵が五十もですか」



「私個人としては即座にオークたちを門の内に入れて、我らの業務の手伝いをしてほしいほどですな」


「何度がオークたちの戦闘を見ましたが、とてもすごいものでしたよ。一人も死んでおりませんし、今怪我で苦しんでいる方もいないはずですわ」


「なんと少数でないのに死傷者なしでここまで渡ってこられたのか。死の荒野平定も夢物語ではない、という証左ですな」


「皇帝陛下とお話が出来るまで、この地でスヴェン殿の指揮下に入って業務をこなすのもありだとは思う。さすがにワシは配下に入ることはできんが、協力することは出来るじゃろう」


マリーさんがお茶を持った女性兵士とともに戻ってきました。各人にお茶を配ってもう一人の女性兵士は部屋から出ました。皆さん普通に飲まれていますが、わたくしには久々のお茶で堪能しましたわ。ミルト王にいたっては感動されているようです。



「プラウトアルターの皆様はどうされるのですか? 任務は達成されたようですが?」


思いがけず休憩となって和んだあと、スヴェンさんがプラウトアルターの皆様に話を振りました。



「確かに任務は成功、かね。貴殿たちの悩みのタネである死の荒野の怪物共もある程度倒したしな。我らはこれで任務達成として帰還してもいいんだが……」


「俺は今の帝都に戻りたくないなぁ。そんなのより、この地でオークたちやアクレシアたちの話を聞きたいんだが」


「確かに、私もアクレシア様のご友人であるスピリットドラゴン殿と接触させてほしいと思っています」



「クレイタのはただの趣味じゃねぇか!」


「それを言ったらヴァルターだってアクレシア様のご関心を得たいだけなのでは?」


「な、何を言ってやがる。本人の前で言っていいことと悪いことがあるだろ、察しろよ」


「ええ、色恋の察しが悪い竜オタクで申し訳ございませんね」


「なっ……?! いい年こいてつまらんことですねるなよ」



「ほんとにお前たちは子供かね。クレイタ、他人を巻き込んでまでちゃかすんじゃないよ。アクレシア嬢が驚いた顔をしてるじゃないか」

アッケンベルテさんが二人の言い争いを止めました。え? 色恋?


ごほん、とアッケンベルテさんが咳払いをしてから、再び喋り始めます。


「こいつらはともかくとして、スヴェン殿、出来ればこのプライトアルターもここにしばらくいてもいいかね? 短期間と思ったが思ったより長くなりそうだしね。待遇は兵士並みで構わないよ」


「兵士並みでよろしいのですか? ヴァルター様も?」


「ああ、特別扱いはしなくていいよ。我らは当分の間アクレシア嬢御一行と、オークが合流するまでの間、ミルト殿の護衛となりたいと思う。このタイミングで反乱とか起こされたら困るからね」



スヴェンさんがすごい表情でアッケンベルテさんを見ました。それがすぐに笑顔に変わりました。


「なるほど、そういうことでしたか。大臣もお人が悪い。何を思い違われたか存じませんが、そんなことはありえませんな。こう見えて私は平和を望む一臣民ですからね」



戻ってきた後はスヴェンさんの後ろで控えていたマリーさんが、今度はすごい顔をしてスヴェンさんを見ています。マリーさんにとってはスヴェンさんはそんな事を言う人には思えなかったのでしょうか。



「さて、これぐらいですかね。アクレシア様もお疲れでしょう。マリー、アクレシア様は特別室へご案内しろ、そのまま世話係に任命する。プラウトアルター殿は兵士並みでよいとのことでしたので、そうさせてもらいます。ああ、安心してください、いくらなんでも雑魚寝などにはさせませんよ、幸いこの砦には空いてる部屋が多いのでね。コルノー、には荷が重いか。プラウトアルター殿はしばらくここでお待ちを。世話係を選出して向かわせますのでそのものに従ってくださると助かります。ミルト王は私がご案内しましょう」



「ミルト王さえよろしければ我らとともにいることを望みますが、いかがでしょうか? ミルト王、スヴェン殿?」


「ワシは構わんよ。主らの話も聞きたいしの」


「さすがに慎重であられるな、プラウトアルター殿。反乱を疑われている私としてはうなずくしかありませんな。兵士並みとはなりませんが、ミルト王とご一緒に案内しましょう」

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