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サイカイ

冒険者の皆様はプラウトアルターとおっしゃるようですね。冒険者のパーティーごとに名前をつけてらっしゃるのは冒険譚で知っていましたが、実際のお名前を聞いたのは初めてでした。


そのプラウトアルターさんたちと、オークの王ミルトさんと一緒に大きな門をくぐります。くぐった先には数人の兵士が待っていました。門の上にも弓を持った兵士がいますね。ここで不審な動きをしたら容赦なく射ってきそうです。そんなことはしませんが。


待っていた兵士と魔法使いのお婆さんがやりとりをしています。

「おや? 人数が多いようですが。確か四名でご出発されましたよね?」


「許可は六名まで出ておるぞ?」

「いや、しかし、出ていった数より減っているのはまだ分かりますが増えているのは……」


「六名までと許可が出ておるのだ。我らの関知することではあるまい?」

マントを翻しながらスヴェンさんがやってきて、とどめていた兵士に声をかけました。


「砦長がそうおっしゃるなら。確かに書面上は問題ありませんので」

そういって兵士の方は引き下がってくれました。


「おお、おお! 本当に再びお会いできるとは!」

スヴェンさんが両手を広げて歓迎する様子で近づいてきました。それをヴァルター様が遮りました。


「ヴァルター様、ご心配には及びませぬ。私はアクレシア・ノイラート様の味方です」

慌ててスヴェンさんが弁解します。


「正直、だいぶ日が経っておりましたので、絶望視しておりました。本当に良かった。……ところで、この方は?」

ちらりとミルト王の方を見て、聞いてきました。わたくしが答えたほうがいいのでしょうか?


「こちらはミルト様とおっしゃる。あちらでアクレシア様を保護されていた方だ。それについてスヴェン殿と早急にお話したいことがあるのだ。場所を用意してくれないだろうか?」

ヴァルター殿下が答えてくれました。


「そうですか。ではお連れの方にお貸ししている部屋にて。おい、お前、案内して差し上げろ」

近くにいた兵士に案内役を命じておりました。マリーさんはいらっしゃらないのかしら? それにヘルムの兵士も。ヘルムの兵士はヘルム脱いでいたら分からないわね。御者さんも何度かちらりと見ただけだから覚えてないわ。


なかなか作りが豪勢な部屋に通されました。ぎりぎり貴族に対応できそうな家具とかですわね。中にはおじさんが一人待っていました。どうも冒険者の一員みたいです。


しばらくするとスヴェンさんがマリーさんとヘルムの兵士をひきつれてやってきました。ヘルムの方、建物の中でもヘルムなのですね、おかげで分かりましたけど。


大きなソファにミルト王、わたくし、ヴァルター様、魔法使いのおばあさんと並んで座って、残りの冒険者の方はその後ろに立つことになりました。その向かいにスヴェンさんとマリーさんが座って、スヴェンさんの警護なのかしら? すぐ近くにヘルムの兵士が武装して立っています。もちろん武器は抜いていませんが。武装しているのは冒険者も同じですしね。わたくしもまだ武装解除されていませんし。


「おまたせしました。お話があるとのことでしたが、まずこの書面にサインを願いたい。提出先は軍務大臣ですので他に報告があれば便乗していただいて構いませんよ」


「ほう、それは助かりますね。吉報はいち早くお知りになりたいでしょうし。クレイタ、書面を書いてもらえるかね? レレットステウも手伝ってやっておくれ」

お婆さんがテキパキと指示を出して、書面を読んだ後サインをしていました。その書面をまずスヴェンさんが受け取り、マリーさんに渡します。


「これを伝書鳩で」

大きな書面だったのですが、鳩で運べるのですか? 疑問が顔に出てしまっていたようで、スヴェンさんが説明してくれました。

「軍の実務をしたことがある方ならばご存知なはずの技術なのですが、書面を縮小し軽くする魔法の小さな筒があるのです。それを伝書鳩に運ばせます。今はこれなしではやっていられませんよ」


なるほど。その魔法技術の応用が伸縮する槍なのかも、と納得しました。

一時マリーさんが書面を運ぶために離席しましたが、話は続くようです。


まず、わたくしが森の前で放置されてからのことをかいつまんで説明します。精神寄生体であるルファのことは説明できませんから、すこしクァルの部分や魔法に関しては不自然になりますが、まあごまかせるでしょう。


今のわたくしにとってフリーダやエルノ、クァルはかけがえのない存在であると強くアピールしておきますが、今の本題ではないのでしつこくならないようにしました。


そしてミルト王のお話をします。ミルト王を含めたオークたちから誠心誠意に接してもらったことは強調してスヴェンさんに伝えます。わたくし程度の話術ではスヴェンさんを納得させることは出来ないかもしれませんが、わたくしがオークたちに感謝の意を強く持っていることはわかってくれると思います。


「なるほど。経緯は分かりました。私としてはアクレシア様のおっしゃるとおり、ここをオークに開放するのはありだとは思います。が、私はこの砦を治めるだけの一介の軍人であります。ですので緊急措置としていったんオークを受け入れることは可能ですが、移住となると……皇帝陛下自らに判断していただかないと……」


「皇太子では足りぬか?」


ヴァルター殿下がスヴェンさんに迫ります。


「ヴァルター様は、今は皇太子ではないではないですか……。それに皇太子殿下であっても土地に関することは皇帝陛下のご許可がないと動けないと思います」


「それもそうだな」


あっさりヴァルター様は引き下がりました。


「一年だ、俺が皇太子として復帰するまでの一年、オークの面倒を見てくれまいか? 一年経てば俺は国政に戻る。そしてなんとかする。可能か?」

「ここにおられるミルト殿だけでしたら、なんとでも。しかし門の外にいる軍勢を、あの門をくぐらせる権限を私は持ちませんし、他の誰からもオークたちを隠すのは不可能でしょう」


「今の軍務大臣なら通してくれそうなんじゃないか?」


先程レレットステウと呼ばれた、元からこの部屋にいた方がおっしゃりました。


「むしろ軍務大臣ここで待ってたらすっとんでくるんじゃないかね? 忙しそうだから無理かね?」

続けてレレットステウさんがおどけた感じでわたくしの方を見ておっしゃります、どういうことでしょうか?


「儂らもいいように使ってくれていいしな。おそらく軍務大臣はそれを期待して我らに頼んだんじゃろうし」


皆さんわたくしやオークに対して協力的です。そんなにわたくしの話術は優れていたのかしら? まさかねー。ぎりぎりヴァルター様がわたくしの味方をしていただけるのは分かりますが、冒険者の皆様全員が好意的ですわ。国外追放される前にこんなことあったかしら? 無事に戻れたことといい、とうとうわたくしにも運が向いてきたのかしら。


『運もあると思うがシア自身が変化したからじゃねーかな?』


あらルファ、わたくしなにか変わりましたか? 自分では気づけませんわ。


『まー自分で気づけるやつは少ないと思う。俺から口出しててあれだが、しっかりと話し聞いておいたほうがいいんじゃないか?』


わかっていますわ、本当に貴方が言うことじゃないですわね。


「とりあえず本日は我らがアクレシア様とミルト殿の護衛をしますので、スヴェン殿には砦の者たちに二人の周知をしっかりとしておいてください。お二人の身分は……まあまだ言わなくてもいいですから」


「そうですな。アクレシア様はともかくミルト殿は、混乱を招きそうですしな。なるべく早く、そのフリーダとエルノ、クァルでしたか? そのものたちとオークを何人か砦に入れないか検討します」


「ありがとうございます、なるべく早くでお願いしたいですわ」


「ありがとう、まさかここまで話を聞いてくれるとは思ってなかった。ありがとう、シア様、プラウトアルターの皆様、スヴェン殿」

ずっと発言のなかったミルト王が涙しながら感謝の意を表してくれていますわ。


「ミルト王……」


「頭をお上げください。聞けばミルト王はもともと臣民であったとアクレシア様の話もありましたし、アクレシア様と差をつけるわけにもいかんでしょう。それにこの砦の者たちにとってミルト王、オークの提案は非常に喜ばしいものでもありますからな。しかし繰り返しになるやもしれませんが、ミルト王自らオークの提案を聞かせて欲しい。アクレシア様が取りこぼした話もあるでしょうし、オークとしての思惑もあるでしょうし」


「そうじゃな、ごもっともじゃ、ワシらのことをアクレシア様だけに任せるわけにいかんわな。おっしゃるとおり繰り返しになるところもあるだろうが、ワシからも話しさせてもらおう」

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