表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/72

冒険者

「シア殿の魔法は派手ですな。ワシのは地味でのう」

え? ミルト王、魔法を使っていらしたの? 全く分かりませんでしたわ。

そんなことを思いながら、震えるフリーダに「大丈夫ですよ」といいながら頭をなでます。


『範囲強化魔法を複数発動しているようだ。俺のシアへの身体強化、あるだろ? あれを王を中心とした範囲全員のオークに使っているみたいな感じだ。俺の身体強化を上回る力のようだがな』

えー、あれを上回る力をこの場のオーク全員に? 何十人、もしかすると百人を上回る数ですわよ。

『ああ、恐ろしい力だ。オークたちを統一した力とはこの力のことじゃないかな?』


「よし、終わったな。各自美味いところだけ、手早く切り取れ。早くしないと奴らが集まってくるぞ」

各自倒した死骸にオークがとりついて、美味しいとされる部分だけ剥ぎ取っていっているようです。


「もったいないが、仕方ない。進むぞ」

そう言って数分もせずうちに進軍を再開しました。


「クァー!」

空高く飛んで新たな敵襲がないか監視していてくれたクァルが大きく鳴きました。クァルが向いている方向を見ると土煙が見えますね。

「バージャストラの団体さんだ。なるべく離れるぞ。頑張れ」

ゾーグさんが後方に来て、鼓舞しています。

神輿が止まり、ミルト王が何やらポーズを決めています。これが魔法、なのかしら? 確かに後続の魔法使いたちの進軍速度が目に見えて上がりました。


「休憩時に筋肉痛で苦しむことになるやもしれんが、仕方ないのう」

そんなことをおっしゃっています。わたくしとフリーダ、乗ったままなのですがよろしいのでしょうか?


「二人は乗ったままでいいぞ。今加速したから並の体力じゃ追いつけないはずじゃからな」

そんなわたくしの思考を察知したかのようにミルト王が振り返って言います。エルノは、テグモスさんの肩に座らされていますね。


新たに現れたバージャストラの一団は先程倒したテリジノンとエアロムの死骸に取り付いたようです。互いに食い合ってるとは聞いていましたが、文字通りでしたか。さすがに共食いはしていないように見えますが。


「ああやってバージャストラどもが集まっておれば、じきに付近のテリジノンやエアロムなんかもあそこに集まるじゃろ。今のうちにできるだけ先に進んでおくのがいいじゃろうて」

「シア様のおかげで助かりました。エアロムはタフで私でも手こずる相手ですのにシア様のおかげで早期決着をつけることが出来ました」

軽く駆け足しながらオークヒーローのゾーグさんが話しかけてきます。あんな重そうな鎧をつけて駆け足でよく話せますわね。


「あれはいったいなんだったのですか? クァルにも見つけられなかったようですが」

「ああ、エアロムはどうやってか地中を自由に移動し、真下から襲ってくる魔物なのです。やつが近寄ってきているのを感知するのはなかなか難しいです。戦闘中でなければ私はだいたい気付けるのですが」

戦闘中でなければ、との注釈がついていますが、すごいですわね。地中に潜むものにどうやって気づくのでしょうか? 想像も付きませんわ。警戒の魔法は地中にも有効なのかしら?


「そういえば、さっき怪我をした方は大丈夫ですの?」

思いっきり足を刺されたオークがいたはずですが。


「あの程度なら大丈夫じゃよ。もともとオークの回復能力は高い、その上にそのもの自身の魔法と、わしの魔法が上乗せされておるからな。即死や体力枯渇でもなければ死にはせんどころかもう回復してるはずじゃよ」


えぇ?!、即死でなければ死なないのですか。無敵に近いじゃないですか。帝国、わたくしの祖国とオークたちと戦争になってしまったら、このミルト王がいる限り、勝てそうにありませんわ。絶対に戦争にならないようにしなきゃ……。


そんなことを話しながらどんどん進んでいきます。先程の戦闘場所からだいぶと進んだところで、前方で戦闘が行われているところに遭遇しました。最初に気づいたのはクァルで、その方向を望遠の魔法で見てみましたら、人間の一団が複数のやつらと戦っているように見えましたわ。


「人間ですわ。ミルト王、前方で人間が戦っているようです。加勢できますか?」

「荒野に人間か。……ゾーグ。スタムもついていけ。我らはここでしばらく待つ。警戒せよ」


オークヒーローのゾーグさんと、魔法使いっぽい方が二人で前に行きます。

「ありがとうございます、ミルト王」

エルノもテグモスさんの上からわたくし達のところへ来ました。少し下で支えているオークの皆さんに申し訳なく思いますが。


「なんの、こちらも考えてのことだしな、シア様、彼らをご存知で?」

さすがに望遠の魔法と言えど、まだ顔の判別もつかない距離ですし、こんなところに出てくる人物に知り合いはいないはずです。

「いえ、今のところは分かりませんわ」


「そうですか、まあゾーグとスタムに任せましたので、我らはここで待ちます」

また重装甲のオークたちが王の周りを囲んで全周囲に警戒します。

前方を見てみると、人間の一団は絶え間なく追加されてくるテリジノンやバージャストラ、エアロムなどに阻まれて動きが取れていないようですわ。

あれだけの数を倒したのかしら? それは本当にすごいですが、先ほどのミルト王のお言葉を考えると、死骸から離れたほうがいいのですが、それができないのか、その知識がないのか、そうなされてませんわね。いかに強くてもこのままでしたらすり潰されてしまいそうです。


そこにオークヒーロー、ゾーグさんが乱入しました。人間たちは驚いているようですが、ゾーグさんに攻撃はしてはいないようです。良かったですわ。ゾーグさんは人間をこちらに誘導しているみたいですわね。それをスタムさん、でしたっけ? 彼がなにか手伝っているようです。あ、人間たちは四名、こちら側に走ってきます。


ふと魔法使い風が立ち止まり後ろを向きました。何をするのでしょう? と思っていたら彼らが今までいた地点に巨大な旋風、いえあれはもう竜巻ですわね。テリジノンやバージャストラの死骸が巻き上がっていますわ。ゾーグさんが人間に助言したのでしょうか。一気に死骸を処理してしまいましたわ。凄まじい力ですわね。わたくしの風属性の力ですと無理な魔法ですわ。


「ミルト王、どうもゾーグさんは人間を連れてくるようですわ」

「そうか……、正直申すと非常に緊張している。シア様に補佐をお願いしていいかね?」

そうですわね。ミルト王にとっては何十年ぶりかの人間との遭遇ですものね、もちろんわたくしをのぞいて、の。わたくしは自動翻訳がありますから会話しやすいですものね。

「ええ、もちろんよろしくってよ」


ゾーグさんの案内で人間のパーティーがすぐ近くまで案内されました。重装甲オークがさっと道を開け、取り囲みます。ゾーグさんは前、スタムさんは後ろで人間たちを観察しています。テグモスさんも王の前に出て、ゾーグさんと並びます。


「お初にお目にかかる、オークの王よ。我らは冒険者プラウトアルター。ご助力感謝します」

そうオーク語で言って魔法使い風のお婆さんが代表して挨拶しました。彼女がリーダーなのでしょう。それにしても冒険者! 初めて見ましたわ。いえ、遠目に街で見かけることはありましたが、野外で会うのは初めてですので、完全装備の冒険者は初めてのはずですわ。本当に背負い袋に毛布を載せているのですね。


「よい。こんなところで人間が何をしていたのだ?」

王が人間の言葉で返答したので、若干プラウトアルターを名乗った冒険者達がざわつきました。そしてどうもわたくしの存在に気づいたようです。こちらを見て、何やら小声でしゃべっているのが見えました。


「人間の言葉が分かるのですね。敬服したします。我らはオーク語が話せるのは私だけですので助かります。……その、後ろにおられる人間の女性と思われる方はいったい?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ