パジャマパーティー
オークたちは荷物をまとめて北へと進軍していきました。時間の頃はもう夕方近くでどこに行くにも時間が足りませんね。手に入れたものの見分を皆でしましょう。
宝石は、綺麗ですが今は何の役にも立ちませんね。もらった箱に入れたままにしましょう。
『宝石は大魔法の触媒にも使えるから一個は持ち歩いてもいいかもしれんぞ』
そうなのですが。では持ち歩こうかしら、と思いましたが、こんな小さなものを持ち歩く術がありませんわ。巾着が余っていたらいいのですが。
裁縫道具には良い針や高級ではないけど丈夫な糸、サイズを図るための紐、目印をつけるためのロウ、そしてハサミが複数入っていましたわ。皮を加工するためのセットもありますわね。このへんは趣味の道具として使ったことはありますわ。替えのボタンなどもあります。
武器はさすがにいいものが多いですね。剣はわたくしの国でよく使われているようなものではなく少し曲がっていますわ。それに刃も鋭そうです。オークの鍛冶技術は高いようですわね。素材も鉄のようですが、帝国とそんなに差はないようです。ただ剣を使えるのはわたくし一人だけでしかもわたくしもそれほど使うかといえば……でしたので一本だけいただきました。
短剣の類は便利そうです。刃が鋭いですし、大きさも短剣ならばエルノやフリーダでも使えるはずです。予備も含めていくつかいただきました。
槍は、オークにとっては投槍らしいのですが、それをたくさんいただきましたわ。もちろん投げて使えるでしょうし、エルノでも使える重さと長さですし。刃はもちろん鉄製ですので今エルノが使っているものよりいいはずです。
弓矢は手入れの仕方がいまいち分かりませんので多めにもらいました。オークにとっては短弓らしいですが、わたくしたちには立派な弓ですわ。そもそも短弓しか引ける弓がありませんでしたし。まあそもそもわたくしもフリーダも弓の練習からなんですけどね。
矢は多めにもらいました。
武器に入ってるのが不思議でしたが、斧や鎌、槌もありましたのでいただきました。
靴はさすがにブーツのようなものはサイズが合わせられないので手を付けず、サンダルをいくつかいただきました。これらなら多少大きくても加工でなんとかなるかもですし、大きいものを強引に使っても問題は出にくいでしょう。
服はいろいろありましたのでいろいろいただきました。マントの類はそのままでもなんとか使えそうですし。下着なども庶民のものとそんなに変わらないものを使っているようですし、サイズはともかく使えそうです。ただの布と太い紐状にした布の組み合わせですしね。
問題は普通の服です。下着でも上着でもない服ですわ。
「フリーダ、この服のサイズ直しって出来そうかしら?」
「やってみないと、わからない、けどすごく大きいから、出来ると思う」
「そうね、不格好でも服の機能があればいいからね。わたくしも手伝えるところは手伝うわ」
こう見えても趣味の手芸はしたことがありますからなにか出来ると思いますわ。破れたところを自分で縫うという発想は出ませんでしたが。
「おいらも出来ることがあるなら手伝うぜ」
「クァ」
「それじゃエルノにも手伝ってもらおうかしら。クァルは悪いけどさすがに無理そうだわ。集落の周辺警戒をお願いできるかしら?」
「クァー」
今のクァルは感覚がすごく優れていますし、スピードも早く、単独でも強いので、警戒には最適ですの。わたくしの警戒の魔法は周辺に侵入してきたものにしか反応しませんしね。できるだけ遠くで発見できたほうがいいですもの。それをクァルも分かっているので素直に言うことを聞いてくれました。さすがに裁縫まで出来るようには見えませんしね。
わたくしの分は小柄な者のための服が何も調整しなくても着れそうでしたのでそれで行きます。けどさすがに子どもサイズの服はなかったので大きくカットして小さくしていけば庶民が着る服ぐらいにはなりそうです。
夕飯の支度までで一着はなんとかなりました。ご飯を作っていただいてから最低あともう一着は欲しいわね。エルノには大雑把に切ってもらって、わたくしが細かく調整して、フリーダに縫ってもらいます。後半は切る物もなくなったのでフリーダに手本を見せてもらいながらわたくしやエルノも縫い作業をしました。さすがに焚き火の光だけでこんな細かい作業はつらいので、光源の魔法で部屋を照らしました。
無事エルノとフリーダの分も出来ましたわ。フリーダは早くに作業を終わらせたのでわたくしの破れた袖を高級糸と専用の細い針で縫い直してくれました。前のままでも素晴らしかったと思っていたのですが、縫い直しで違和感がほぼなくなりましたわ。それに縫い跡が目立っておりましたので今回の糸は細い上に色があっていたので目立たなくなりました。フリーダは裁縫の才能もあるのかしら。すごいですわ。
エルノはともかくフリーダの今までの服は明らかにみすぼらしかったのでさっそく着替えてもらいました。もともとオークの戦士の着替えの服ですので装飾とかありませんけど、丈夫で通気性の良い布のようです。
「どうかしら?」
「尻尾、出せない」
「あ!」
忘れてましたわ。わたくしもオークも尻尾は生えてませんから。慌てて尻尾穴を作りました。もちろんエルノの分も。
せっかくなので三人とも新しい服に着替えました。エルノもフリーダももともとの服が粗末なものでしたのでかなり良くなったはずですわ。わたくしの服は学園の制服でしたので着心地はさすがに敵いませんが、ずっと着ていて酷使しましたし、もともと薄手の生地でしたので傷みが激しいので、休ませる意味でもこの服は歓迎ですわ。
「皆着心地はどうかしら? 突っ張ってるとかそういうのはないかしら? ない? それじゃ今日はこれで寝てみましょうか」
フリーダやエルノはもともとの服を寝間着にした方が良さそうですが、試しですわ。わたくしの場合は制服の傷みがひどいですし、スカートですしでこっちのほうが良いと思います。
「切って余った布はおいておいて、また何かに使いましょう。下着とかにしてもいいかもしれませんね」
「分かった。おいておく」
「ええ、そうしてちょうだい」
「夜にこんな明るいのは初めてで楽しかったぞ。またおいらも手伝うからまたやろう」
そうね、三人しかいないんだもの。作業がある時は光源の魔法を使ってでも夜に作業してもいいかもしれませんね。
ちょうど警戒から帰ってきたクァルが器用に扉を開けて戻ってきましたわ。
「クァ?!」
光源の魔法にびっくりしていますわ。
「おかえりなさい、クァル。外は寒くなかったかしら?」
スピリットドラゴンとして大きくなったクァルは、わたくしたちと一緒に寝ることが多くなりました。フェアリードラゴンの頃は小さかったので寝返りで潰してしまいかねませんでしたし。
今はむしろクァルが大きく動いたらこちらが危ない感じですが、クァルは動かないようにしてくれているのか、そういったこともありません。わたくしはクァルの尻尾の付け根あたりをまくらにして寝るのが好みですわ。エルノとフリーダはよくクァルに抱きついて寝ていますわね。一度朝目覚めたら丸まったクァルの上に乗って寝ているエルノとか見て、笑ったこともありますわ。どんな寝相をしているのかしら。
それからしばらくは、狩りをしたり採集をしたりしましたが、危険なこともなく、平穏無事に生き残りましたわ。緊張の連続でしたがこの生活にも慣れてきました。貴族の令嬢が森の中で槍を持って狩りをする生活に、慣れるものなのですね。自分のことながら呆れてしまいますわ。
生活が安定してくると、家族のことが心配になったり、美味しいものがもっと食べたいとかの贅沢を求める心が動いてきますわ。今はパンが食べたいです。だって小さい頃から毎日ずっと食べ続けてきていたものなんですもの。あの素朴な味に近いのは、もともと同じ穀物だからか、ブライぐらいですわね。そのブライも保存していた穀物が底をつきそうですので、あと数回しか食べられないようです。
オークの商人、ワナッフィさんへ穀物を持ってくるように頼むのは忘れていましたし、他に穀物を育てている種族とかいないのかしら。もしくは自生していたりしないかしら。そんなことを考える日々でした。
ある日、南から大軍勢がやってきました。




